19話 英夜と幽霊少女3
1
グリーンパールの公園。
そこのベンチでリメインは水晶玉を膝に乗せながら座っていた。
両手を水晶玉の上にかざし、リメインは瞑想する。
「……明日中の飛行機に乗って凱巣島に行け……さすれば探し人に巡り合える……」
リメインは自分の脳裏によぎった言葉を口に出し呟く。
彼女は水晶玉で美森達が今何処にいるか占っていた様だった。
「そんな所にいるんですね……待っていてください、すぐにリメインが後を追って殺す……です。」
そこまで呟くと水晶玉を手に持ち、立ち上がって歩き出す。
道を歩いてる最中で自分と同じ位の年齢の子供たちが楽しそうに遊具で遊んでいるのが目に写る。
リメインはその光景を見て恨めしく思ったのか、シュンと顔を俯けながら歩き続けた。
2
美森達は空港を出てバスに乗り、森への入り口付近の停留所で降りた。
付いた場所にはもうほとんど建物が見当たらず、辺りに木々が広がっていた。
「どう? 懐かしい?」
穂波は英夜の表情が暗く険しいのを見て、それとなく様子を伺う。
「ああ、この場所からよくリリカの家に遊びに行った。」
英夜の脳裏でリリカとの思い出が過る。
☆☆☆
様々な色の花が咲き乱れる美しい花畑。
そこでリリカが可愛らしいドレスを舞い踊っていた。
「英夜ー! こっち来て―!」
リリカは笑顔で遠くにいる英夜を呼び掛ける。
「女って花畑の前だと元気がいいなー。」
まだリリカと同じ7歳の英夜が花畑ではしゃぐリリカに感心しながら駆け寄って来る。
「ねーねー英夜、一緒に花の冠作ろう!」
「冠? 作った事ないからなー。」
花の冠を作ろうと提案するリリカに英夜は困った表情になる。
「簡単だよ、見てて。」
リリカはその場にしゃがみ込み、花を次々と積んで蔦を絡ませていく。
「へー、器用だなお前。」
手馴れた様子で冠を作るリリカに英夜は感心を示す。
「ママがね、私達はお花から恩恵を頂いて生きているって言ってたの。」
リリカは作業の最中、母親から聞かされた事を英夜に話しだす。
「どういう意味?」
「わかんない、でも大人になるにつれてわかるって言ってた、きっと切なくも前向きな気持ちになれるって。」
「それじゃあ俺でもわかんないや。」
リリカも英夜も、リリカの母親が言った事の意味が理解できず困りながら微笑み合う。
「それとね、女の子はお花をプレゼントされると喜ぶって言ってたんだぁ、はい出来た。」
リリカは無垢な笑顔で完成した花の冠を英夜に渡す。
それを受け取った英夜は少し考え込んだように沈黙した後、冠をリリカの頭に乗せる。
冠を被せられたリリカはキョトンとした表情になる。
「女の子にあげると喜ぶんだろ? だったらリリカが被っていた方がいいよ。」
英夜は花の冠がリリカに似合っていて可愛らしく感じながら、彼女に笑いかける。
「私がプレゼントした冠を英夜がプレゼントしてくれる、なんか変なの。」
リリカは自分の頭に被せられた花の冠をそっと両手で触りながら自分を褒めてくれた英夜に嬉しさを感じる。
☆☆☆
(屋敷の近くに会ったの花畑は今も咲いてるだろうか……3年前はそれすら怖くて調べられなかった……)
英夜はリリカと花園で遊んだ思い出を頭に甦らせながら、あの頃の花畑は現在どうなっているのか気になり始める。
「天城君、大丈夫?」
美森は頭の中で思い出に浸っている英夜を見て心配で声をかける。
「俺はお前とは違う。」
英夜は右手を腰に当てながら美森が思う程動揺してないと強がっている様な姿勢をとる。
「どういう意味?」
美森はニュームーンの時に続き、また自分が下手に見られている様な気がして苦言を溢す。
「兎に角行くぞ……」
英夜はここで話し合いをするより先に進んだ方が先決だと思い歩き出す。
美森はまた話を反らしたなと思いつつも、英夜に続いて歩き出した。
「あんた、3年前に帰った時もここを訪れたの?」
しばらく無言で森の中を歩いていて寂しいなと感じた雪木は思わず英夜に話しかける。
「いや、ここには行きたくなかった、昔のトラウマを思い出すのが怖くて避けていたのかもしれねーけど。」
英夜はリリカを救えなかったトラウマから、屋敷にだけは近づきたくなかった様だった。
「まー、これから会いに行くのも幽霊だしね、奇妙な話よ。」
穂波は自分から誘ったものの、幼馴染の幽霊に会いに行くこの状況を改めて奇妙だと感じた。
「所で君は随分と天城君の事を心配するけど彼に信頼感があるのかい?」
美森は喫茶店に居た頃から穂波はやけに英夜の事を気にかけているなと思い、その理由を尋ねる。
「信頼ってゆーか何とゆーか……もう知ってると思うけど3年前私は英夜にあらぬ恨みを抱いた、それでも英夜は私を気遣ってくれた……そして何より私に演技の才能があるんだから親に夢を反対された位で諦めるなとも言ってくれた。」
穂波は右手の人差指を顎で触れながら自分が英夜を気にかける理由を模索し、自分の女優になりたい夢を応援してくれたからかなと結論する。
「お世辞とかではなく純粋に自分を気遣ってくれてるって思ったの?」
美森は質問を続ける。
「夏鈴、ああ私の友達の名前ね、夏鈴にも同じ事を言われて勇気づけられたし私の演劇部の公演も英夜は見に来てくれた。」
そして穂波は死んだ友達の夏鈴と英夜の双方に同じ事を言われて不思議な感覚を味わった事や自分の舞台を見に来てくれた事に感謝を覚えたのも理由の一つだと美森に告げる。
「俺も関わっちまった以上とことん穂波に付き合うってのが筋だと思った、胡桃と同い年だしそれも放っておけなかった理由だ。」
英夜本人も胡桃と同年代の少女でかつ、人生に行き詰まりを感じていた穂波を放っておく事が出来なかったと打ち明ける。
「あんたの従兄妹ね、来れなかったのは残念ね、ちょっと会ってみたい気もしたけど。」
穂波は英夜から胡桃と言う従兄妹がいる事も教えられたのを思い出し、今回の件で出会えなかったのを残念に思った。
「友達と一緒にバイト中だからな。」
英夜は申し訳なさそうな表情で胡桃が来れなかった理由を穂波に教える。
「まぁ仕方ないか、また今度会える日を楽しみにしとくわ。」
穂波は今回は仕方がなかったとして、後日胡桃と出会える日が来るのを願う事にした。
「それが死亡フラグにならなかったら会えるかもな。」
英夜は今の穂波の発言が漫画等でよくある死亡フラグに感じたのか、彼女に皮肉を返す。
「言ってくれるわね、意地でも生き抜いて死亡フラグへし折ってやるわ。」
穂波は顔を引きつらせながら強気な意志でフラグを打開すると主張する。
「ねぇ、屋敷ってアレの事?」
雑談の最中、雪木は森の奥に大きな建物が見える事に気づき、あれが浅井家の屋敷なのかと英夜に尋ねる。
「ああ、あの屋敷だ。」
英夜はあれが浅井家の屋敷で間違いないと断言し、思わず駆け足で屋敷に向かう。
「ちょっと待ってよ!」
雪木は突然走り出した英夜に文句を言いながら後を追い、美森と穂波も続けて走り出す。
4人は森を走り抜け、屋敷の前まで到着する。
その屋敷はホラー映画に出てきそうな古びた洋館で自分達の目的の場所だという事は初めて訪れる美森達3人にも見て取れた。
「心の準備は……出来てるわよね?」
穂波は英夜に屋敷に入る覚悟は決まっているかどうか尋ねる。
「ああ、迷いはねーぜ。」
英夜は最初に穂波から屋敷の事を聞かされた時には訪れるのをためらった。
しかし今となってはウジウジ引き下がるのは男じゃないと考えを改めており、屋敷に入る決意を強く示す。
「じゃあ行くわよ。」
穂波は英夜の覚悟を聞いた後、屋敷に入ると3人に呼び掛ける。
美森達は緊迫した態度で屋敷に一歩、また一歩近づき、扉の前までたどり着くと英夜がそーっと扉を開き始める。
中に入ると、奥には2回へ続く大きな階段がある大広間があり、1階の左右にはドアがあった。
そして階段を上った先に奥へ通じる真っ暗な廊下が目に見えた。
「雪木さん、幽霊の気配は?」
美森は喫茶店で自分は霊感持ちだと宣言した雪木に、ここから幽霊の気配を感じるかどうか尋ねる。
「微かに感じる、でも奥へ進んでみないとよく分からないわ。」
雪木は屋敷の中を探索しないと幽霊のいる具体的な位置が分からない状況だと皆に告げる。
「やっぱそうなるよな、それにしても……本当懐かしいぜ。」
英夜は屋敷の風景を見て、古びてはいるものの昔の面影があり懐かしさを感じるが、同時にもう自分の知ってる浅井家の屋敷は廃墟である事に不気味さを感じてしまう。
「どうする? 二手に分かれる?」
穂波はこの先4人で固まって行動するか、二組に分かれて探索をするかどちらが最適か美森達に伺う。
「いや、固まって行った方がいいと思う、雪木さんが霊感強いし、所で君はオーラでどんな事をするのが得意なの?」
美森はニュームーンの時とは違って今回は霊感の強い雪木に従った方がいいだろうと思い、4人で行動すると提案する。
そして美森は穂波のオーラの特技が気になり、今度はこちらから質問する。
「両手に貯めたオーラを火薬の性質に変えて、触れた物を爆発させる事よ、幽霊に効くかどうかは分からないけど。」
穂波は爆発系の技が得意だと打ち明けた後、それでも幽霊相手にその技が効くかは分からないから過度な期待はしない方がいいと念を押す。
「OK、十分頼もしいよ。」
美森は取りあえず何もないよりはマシだと思い、右手でサムズアップをする。
「それじゃあ階段を上るぜ。」
英夜は美森達の会話が済んだのを見て階段を上ると3人に呼びかけた。
3
ロンリネスは病院内の廊下にポツンと立っていた。
彼女の背中にはハルカの病室の扉があり、何らかの事情で待たされているという感じだった。
ロンリネスはそれとなく腕時計を確認しようとすると扉からコンコンとノックの音が聞こえ、彼女は待ってましたと言わんばかりに扉を開ける。
するとそこにいたのはピンク色のひらひらとしたミニスカート状のビキニを着たハルカの姿だった。
「どうかな?」
ハルカは頬を赤らめながら今の自分の姿がどう思うかロンリネスに尋ねる。
「いい! 凄くいいわ!」
ロンリネスは目を星の様に輝かせながら興奮してスマホを取り出し、早速写真を撮る。
「あんまり大声出すと看護師さんに見つかっちゃうよ、それに扉も閉めないと。」
ハルカは興奮してるロンリネスにやんわりとした表情で注意する。
「あはは、ごめんごめん。」
ロンリネスは照れ笑いしながらそっと扉を閉めた。
「あーあ、早く退院してこんな水着を着てロンリネスと一緒にプールで泳ぎたいなぁ……」
ハルカは身体をクルりと回しながら退院して様々な格好をしたいという感情を溢す。
「それは私も同じ、でももうしばらくは辛抱しなくちゃ。」
ロンリネスは毎日病室のベッドにいて退屈そうなハルカを可哀想に思いながらも、退院できる日が来るのを待つしかないと告げる。
「でもありがとね、突然水着が着たいってゆう私の我儘を聞いて買ってきてくれて。」
ハルカはそれでも自分のわざわざ洋服店に行ってまで自分の望みを叶えてくれたロンリネスに感謝する。
「いいって事よ、それにしてもハルカの肌ってツルツルでスベスベ、気持ちいい……」
ロンリネスはハルカに礼を返した後、彼女の左腕を手に取り頬ずりをしてトロケタ表情になる。
「えへへ、でもこの格好で長くは入れないし今の内に写真撮れるだけ撮っておいてよ。」
ハルカは看護師にバレる前に写真を撮っておいた方がいいとロンリネスに忠告する。
「あーそうだった、よーし撮るぞー!」
ロンリネスは気を取り直して再び写真撮影に入り、ハルカもそれに応じて色々なポーズを取りながら撮られるのを楽しんだ。




