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18話 英夜と幽霊少女2


飛行機が離陸し、凱巣島の空港についた美森達はホールの辺りを見渡していた。


「着いたはいいけど、グリーンパールの空港と変わらないわね。」


雪木は空港内の雰囲気がグリーンパールの者と然程変わり無い事を残念に思った。


「空港なんてそんなモンだろ。」


英夜は空港内の景色を見て何が楽しいんだと思い、雪木に口を挟む。


「それで、長良さんは僕達の事見つけられるの?」


一方の美森は穂波が数百人はいるであろう人ごみの中から自分達を探し出せるかどうかが心配だった。

ましてや穂波は自分と雪木の顔を知らないのだから結果的に英夜1人を探し出す事になるので見つけるのは大変だと思った。


「心配ねーよ、手紙じゃ喫茶やまぐちって所で待ってるらしい、この空港内にある喫茶店だ。」


英夜は美森の方に首を向けながら穂波とは喫茶店で待ち合わせをしている事を伝える。


「成程、案内図によれば……近くにありそうだね。」


穂波がいる場所を知らされた美森は自分の傍に立っている看板の地図を見て喫茶やまぐちの場所を確かめる。

喫茶やまぐちは商店街がある通路に入って右側3番目にある様だった。


「それじゃあとっとと行って話をつけましょう。」


同じく地図を確認した雪木は2人を先導する様に歩き始める。

商店街の通路に入ると、そこには洋服屋やステーキ屋、さらにおもちゃ屋等様々な店が並んでいた。


「あー! 見て見て、この服凄く可愛い!」


雪木は喫茶やまぐちの真向かいにある洋服屋のガラスケースに飾られてる赤いフリフリのドレスの様なロングスカートのツーピースを見て興奮する。


「おい、今はお前の買い物に付き合ってる暇はねーんだよ。」


英夜は目的を忘れてる雪木に呆れながら注意をする。


「分かってるわよ! ただちょっと釘付けになっただけ!」


雪木は不貞腐れた表情で自分達が喫茶やまぐちに行こうとしてる事を思い出す。

そして3人は気を取り直して喫茶やまぐちの扉を開けて中に入る。


「長良さんは何処に座ってるの?」


美森はこの中で唯一穂波の容姿を知っている英夜に居場所を問いかける。


「ちょっと待て、えーと……あいつかな?」


英夜は店内を見渡し、そして店の奥の席に座っている紫のトレンチコートに青のミニスカート、脚の関節部分まである長い黒のソックスに茶色のショートブーツを履いた読書中の少女を指さす。

少女の髪は紫色でドリルの様にグルグルとうねったツインテールをしていて、右目には白い眼帯をしていた。

少女のいるテーブルには紫のポーチとコーヒーが置かれていた。

少女は英夜達の視線に気づき、彼らに小さく手を振った。

どうやらその少女が長良穂波だった。

3人は穂波の席まで向かう。


「座って。」


穂波は本にしおりを挟んでポーチに閉まい、自分の目の前まで来た英夜達にまず席に座る様指示する。

3人は言われるまま席に座り、そしてやって来たウェイトレスにコーヒーを注文した。


「お久しぶりね、天城英夜。」


穂波は担当直入に英夜に挨拶をする。


「お前が俺に依頼をよこすなんて無いかと思ったぜ。」


英夜は過去に穂波の友達を助けられなかった悔いから少し複雑な表情で彼女に返事をする。


「酷い言い方ね。」


穂波はコーヒーを啜りながら皮肉めいた言葉を英夜に返す。


「ああ、お前は俺には会いたがらないかと思ってな。」

「確かに最初はあんたの事を恨んだわ、助けるならもっと早く駆けつけて来て欲しかった、そうすれば夏鈴は……でも元はと言えば私が家出なんかしなきゃ良かったのよ、だから今ではあんたを一方的に恨むのはフェアじゃないと思ってる。」


英夜から自分に会いたくないのではと指摘された穂波は今では友人が死んだ事を彼一人の責任にするのはあまりにも理不尽だと悟っている様だった。


「そう思ってくれると有りがてーな。」


穂波の今の心境を聞いた英夜は少し気が晴れた。


「無駄話はこれ位にして早速本題に入るわよ、あんた達にやって欲しい依頼は正確には悪魔退治とはちょっと違う。」


穂波は自分達の身の上話を一旦中断させて、依頼内容について語り出す。


「どういう事だ?」

「廃墟となった屋敷で幽霊が出るかどうか調べて欲しいのよ。」


穂波の依頼内容、それは幽霊屋敷の調査だった。


「幽霊だと? 悪魔退治の専門家である俺達がそんな事して何の意味があるんだ?」


英夜は何故幽霊屋敷の調査というオーラナイトの専門外の仕事に自分達を呼んだのか疑問に感じる。


「これはあんたのためでもあるのよ、その屋敷は浅井家なんだから。」


穂波は困惑する英夜を納得させる様に屋敷の名前を口にする。


「浅井だと!?」


それを聞いた英夜は凍り付いた表情になって驚く。


「何? あんたその浅井家ってのと何か関係があるの?」


横で話を聞いていた雪木が浅井家とは何か英夜に尋ねる。


「こいつは昔浅井家の……」


穂波は英夜と浅井家の関係について説明しようとする。


「自分の過去位自分で説明する、俺は昔浅井家の1人娘とよく遊んでいた、あいつのお袋と俺のお袋が元々仲が良くてだから俺達も必然的に幼馴染だった。」


しかし英夜は自分の過去を他人に話されるのが忍びないと感じ、穂波の説明を中断させ自分の口で身の上を語り出す。


「幼馴染?」


美森はキョトンとした表情で英夜が口にした単語を復唱する。


「ああ、名前は浅井リリカ、俺と同い年ですぐに打ち解けた。」


英夜は少し動揺した表情で浅井リリカという人物の名前を語り出す。


この名前を口にしたのは数年ぶり、そんな感じを漂わせる同様だった。


「なんか話が読めたわ、そのリリカって娘はもう亡くなってるんでしょ?」


雪木は幽霊屋敷の調査と英夜の幼馴染の接点を推理し、リリカはもうすでにこの世にいないのではという結論にたどり着く。


「15年前の事だ、金目当てで入った強盗に一家全員が殺された、犯人は悪魔で親父がブチ殺して仇を討ってくれた。」


英夜は言いづらい過去を必死で吐き出そうとする様に話し出す。


「そんな過去があったなんて……」


美森は英夜も過去に大切な人を失っていた事を知り、動揺してシンパシーを感じる。


「話を戻すわよ、最近浅井家の屋敷に女の子の幽霊が出るって噂があるの、もしかしたらその幽霊があんたの幼馴染かもしれないっつーわけ。」


穂波は自分なりに英夜に死んだ幼馴染と再会できるチャンスを与えたつもりでいた。


「俺のためとはそう言う事か、俺をあいつに会わせようってか?」


英夜は強張った表情で穂波の意図を尋ねる。


「そういう事。」


穂波は軽く返答しながらも内心では彼の表情から自分のした事は余計なお世話だったのかと思い込んだ。


「……とんだ無駄足だった、帰るぞ2人共。」


やはり英夜はお節介をかけられたと感じたらしく、席を立ってその場から立ち去ろうとする。


「待ちなさいよ。」


穂波も席から立ち上がり、真剣な眼差しで英夜を呼び止める。

英夜は思わず立ち止り、彼女を見つめる。


「あんたは大切な人にまた会いたくないの?」

「俺はあいつの事を思い出したくない、過去に縛られて生きていくのは御免だ。」


穂波は英夜に説得を試みるが、当の英夜はリリカの事は考えても辛くなるだけだから思い出したくないという心境だった。


「私が夏鈴を亡くして悲しんでいた時、あんたはリリカって娘の事を話した、自分も似た境遇だって言ってね。」


穂波は英夜が自分を助けてくれた時、何故もっと早く来てくれなかったんだ、そうすれば友達も助かったかもしれないのにと彼を責めたが、そんな自分にリリカの話を聞かせてくれた事を思い出させようとする。


「……」


英夜は穂波から目を反らし沈黙する。


「あの時あんたは私に自分を重ねたんじゃない?」


穂波は自分が非力故に大切な人を守れなかった悔しさを味わっているのは一緒だと英夜が伝えた事を心に刻んでいた。

例え自分と英夜の立場が逆でも、英夜は自分に死んだ友人に会わせようとしたのではとも考えていたのだ。


「俺は……ただ、あいつを救えなかった事が……」


英夜は脳裏にピンクのフリフリのドレスに黒く長い髪を靡かせた少女を思い浮かべる。

その少女がリリカだった。

拳をギュッと握り締め、顔を俯かせる。


「その時あんたはまだ7歳の子供だったんだから仕方ないでしょ、それにあの娘を成仏させてやるのが幼馴染としての務めなんじゃないの?」

「くっ……」


穂波はさらに英夜に説得の言葉をかけ、英夜は一言唸る。


「口では強がってるけど結局あんたは過去に縛られている、人間過去に縛られないなら誰も苦労はしないわ、どうする? この仕事受ける?」


穂波はある程度説得の言葉をかけた後、最終的に自分の依頼を受けるかどうかを英夜に決断させる。


「……はぁ、ある意味お前より会いづらいぜ、リリカとは……」


英夜は少しため息をついた後、抵抗はあったがリリカの幽霊を調べる事にした。

しかしもしリリカの幽霊と出会ったら自分は何をしたらいいのかまだ分からずにいた。


「決まりね、勿論屋敷周辺に悪魔がいたなら退治してもらうわよ。」


英夜のイエスという返事を聞いた穂波は一応オーラナイトのアイデンティティを断線しない様万が一の時は悪魔退治をしてもらうとフォローする。


「ああ、そっちの方が気が楽だ。」


英夜はリリカの事を考えてもキリがないと思い、悪魔と遭遇する事を願った。


「所で自然な流れで話が進んでいるけど僕と雪木さんはまだ自己紹介していなかったよね。」

「ああ、そう言えばそうね。」


一方の美森と雪木はまだ自分達が自己紹介をしていなかった事に気づく。


「御免なさい、天城との思い出話で私も気が付かなかったわ、じゃあ改めて2人の名前を教えて。」


穂波も自分と英夜の事ばかり考えていて美森達の事が眼中に無かった事を謝罪し、2人の名前を尋ねる。


「僕は水前寺美森、天城君と同じオーラナイトだよ。」

「私は雪木蛍、まぁただの付き添いだと思っていいわ。」


美森は素直な態度で、雪木は自分の素性を最低限隠した状態でそれぞれ自己紹介をする。


「よろしく、後ついでに言っておくけど私の身体にもオーラが発現しているわ、オーラナイトになるかどうかはまだ考え中だけど。」


2人の名前を聞いた穂波は次に自分の事をもっと知ってもらおうと自分もオーラ使いである事を告白する。


「え!? そうなの?」


美森は穂波の唐突の告白に驚く。


「ああ、悪魔に襲われた時悪魔に強いオーラをぶつけられた衝撃でオーラが宿ったんだ。」


英夜はその事を飛行機の中で説明し忘れていたのを思い出し、改めて穂波がオーラ使いになった事情を説明する。


「確かに他人からオーラをぶつけられた弾みで自身の身体にもオーラが宿る事があるけど、命のリスクは高い筈。」


美森は強引でリスクの高い手段でオーラを身に着けた穂波を見て、ロンリネスと似たタイプの人間なのかと思い込む。


「仰る通りね、確かに私は悪魔からオーラを浴びせられて死にかけた、でも天城が必死に私の中のオーラを緩和させて大事には至らなかった、あれから修行して自分の中のオーラをコントロール出来るようになったわ。」


穂波は間一髪で助かって特殊な力を身に着けた自分が運がいい様でおぞましい気もするという心境だった。


「一般人に無暗にオーラの存在を教えちゃけないっつーのは分かってたが状況が状況だけに仕方なかった、取りあえずオーラの存在を人に口外するなとこいつに釘を刺した。」

「あれはウザかったなー、別に口を酸っぱくして言わなくても、私はそれ程尻軽女じゃないのに。」


その後英夜がオーラの存在を秘密にする様穂波に呼び掛けたそうだが、当の穂波は口うるさく注意されたのが快く思わなかったそうだ。


「はいはい。」


英夜は自分がしつこく注意したのが嫌だったと言われて呆れた表情で後頭部をかく。


「所でその屋敷へはどうやって行く気なの?」


雪木は屋敷までの道のりが気になり、穂波に問いかける。


「そうねぇ……屋敷は森の奥にあるからバスで森の付近まで行って後は歩くしかないわ。」


穂波は自分は高校2年生で車を運転できる筈もなく、かと言ってタクシーを使えば金がかかるため手軽に行く手段はバスと徒歩位だと雪木に伝える。


「それで、次に来るバスは?」

「大体30分後。」


英夜からバスの時間を聞かれた穂波は左腕に付けている腕時計を見て大体の時間を割り出す。


「結構あるな、しばらくコーヒーでも飲んで寛ぐか。」


英夜はリリカを失った悲しみやこれからリリカの幽霊に会おうとしている緊張感を誤魔化す様に再び席に座りコーヒーを啜る。


「ねぇ水前寺、私はどうすればいい?」


雪木は自分も同行するべきか、ホテル等で待機するべきかどうすればいいかを美森に尋ねる。


「……僕の傍を離れないで下さい。」


美森は最初雪木を留守番させようと考えていたが、彼女を一人にさせておくのもどうかと思い、最終的に男なら傍にいて女性を護衛しようと決断した。


「了解、それに私は役に立つと思うわ、霊感持ってるし。」


自分も同行できると知った雪木は嬉しそうに自分の特技を打ち明ける。


「初耳だ。」

「僕も。」


英夜と美森は口を揃えてそんな事は聞いた事がなかったと雪木に返答する。


「初耳で悪かったわね。」


雪木は表情が少し曇り、開き直ったかの様に2人にそう返すとスマートフォンを取り出して親指を動かす。

その直後美森は自分のスマートフォンから音が鳴ったのに気づき取り出すと、そこには『天使は生まれつき霊感が強いの、半分悪魔の血が混じってる私も例外じゃない。』と書かれた雪木からのラインがあった。

それを見た美森は少し納得した表情になる。


「何だお前ら、筆談でもしたのか?」


英夜は2人のやり取りを見て何を筆談したのか尋ねる。


「え? いやぁ……」


美森は苦笑いしながら話を誤魔化そうとする。


「何か俺に知られたら困る事でもあんのか?」


英夜は隠し事をしている2人に不服そうな言葉をかける。


「あはは、僕らにも僕らの事情があって……」


美森は取りあえず咄嗟に思いついた言い訳を英夜に返した。


「その2人、大丈夫?」


穂波の方も隠し事をしている美森と雪木を見てこのメンバーで屋敷に行くのは大丈夫なのかと少し不安になった。

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