15話 胡桃とリコ9
左目を潰されたストロングは英夜達に息吹を吐いて攻撃し、接近されるのを防ぐ。
「そっちへ近づけなくたって、攻撃位は出来るわ!!」
胡桃は息吹の攻撃を避けつつ、ショットガンを連射して反撃する。
ストロングは左腕で弾丸をガードする。
「隙あり!!」
英夜装甲態はその隙を付いてストロングの足元を薙刀で切り裂く。
「うおっ!!」
ストロングは体制を崩してよろめき、そしてリコが追い打ちをかける様に彼に飛びかかり、刀で頭部を切り裂く。
「こいつ、大した事なさそうだな!」
英夜装甲態はこちらが戦況を有利に進めているこの状況を見て、天使であるリコの父親を殺したストロングも3対1なら何とか倒せそうだと思い込む。
「えーい、まだだ!!」
ストロングは英夜装甲態に甘く見られカッとなり、ジャンプして身体を丸めて地面に落下する。
3人は間一髪でストロングの落下攻撃をかわす。
しかしストロングは落下してすぐに身体を回転させてフィールドのあちこちを転がり回る。
回転しているストロングは周りの木々をなぎ倒しながら3人に襲い掛かる。
「こいつ滅茶苦茶だね!」
リコはストロングから逃げ回りながら、彼の野蛮な戦い方に毒づく。
「こんな物、俺が止めてやる!!」
英夜装甲態は迫って来るストロングの前に立ち、薙刀に強いオーラを込めて彼の回転を止めようとする。
ストロングの巨体と薙刀が大きな音を響かせてぶつかり合う。
英夜装甲態はストロングの力に負けそうになり後ろへ押される。
「この怪力野郎……!」
後ろへ押され、足元から土を巻き上げる英夜装甲態は諦めずにストロングを押さえ込もうとする。
そし薙刀の刃は次第にストロングの身体に入り込み、彼の血が回転から溢れ出る。
ダメージが入り回転の速度が弱まったのを感じた英夜装甲態はそのままストロングに押しきり、彼をバットでスイングをする様に投げ飛ばそうとする。
「うおおおおおおおりゃ!!」
そして英夜装甲態は大きな掛け声と共に力いっぱい薙刀を振りかぶり、ストロングを左の方へ投げ飛ばした。
「ぐうう……」
投げ飛ばされたストロングは呻き声を上げながら身体を起こして起き上がる。
そこに胡桃が再びショットガンで攻撃を仕掛ける。
「一々ちまちまと豆を飛ばすな!!」
拳銃やショットガンの弾を当て続けられているストロングは胡桃が一番小賢しいと思いながら、息吹で攻撃する。
「ああ!!」
攻撃を受けた胡桃は弾き飛ばされる。
「よくも胡桃ちゃんをやったな!!」
次に友達を攻撃されて怒ったリコが香水から放たれる火の玉でストロングを攻撃する。
火の玉を顔面に喰らったストロングは怯み、そして英夜装甲態が彼に飛び蹴りを入れた。
「ぐはっ……!! やってくれるなぁ、だが俺も丁度左目の再生が終わった所だ!!」
攻撃を立て続けに受けたストロングは怯みながらも先程胡桃に潰された左目が再生された事に気づきチャンスを感じる。
「これで本領発揮だ!!」
ストロングは再びジャンプして身体を丸め乍ら地面に落下し、そして再び回転を始める。
「うわぁ!! さっきよりも回転の速度が速い!!」
リコはストロングのスピードが先程より上がっているのを感じて焦りながら攻撃をかわす。
胡桃も身体を起き上がらせながら、オーラでジャンプ力を上げて何とかストロングの回転攻撃から身を避ける。
「何のこれしき!!」
一方の英夜装甲態は先程と同じ様に薙刀を構え、ストロングの動きを止めようとする。
「ぐあっ!!」
しかし回転速度の上がった先程の様に受け止める事は出来ず、英夜装甲態は弾き飛ばされてしまう。
「えーマジ!?」
弾き飛ばされた英夜装甲態を見たリコはこれでは自分もストロングを到底受け止められないと追いつめられた気持ちになってしまう。
「みんな、耳を塞いで!!」
すると胡桃は野球ボール位のサイズの銀色の球体を取り出し、2人に耳を塞ぐよう指示した後、オーラを込めて上空に投げる。
そして胡桃は銀色の球体にショットガンを発砲した。
その直後、辺りにキーンという大きな音が響き渡り、リコと英夜装甲態は耳を塞いで苦しみだす。
「うぐっ……これは超音波、そういやあいつはこういう技も極めてたっけな……」
英夜装甲態は以前胡桃からオーラで超音波を放つ練習をしていた事を思い出し呟く。
「うう……これは強烈、でも胡桃ちゃん凄い!」
リコも響き渡る音を身体で感じながら胡桃にこの様な特技があったのかと驚く。
超音波は効いているのか、ストロングの回転速度も徐々に遅くなっていく。
「今だ!!」
胡桃はストロングの回転が丁度いい具合に遅くなったのを確認するとオーラを右足に一点集中させて彼に飛び蹴りを喰らわせる。
ストロングは胡桃の蹴りに押されて体制を崩しその場に倒れ込む。
「よっしゃー! どう、小娘の蹴りの味は!?」
胡桃は先程ストロングがリコに同じように蹴りを入れられて反撃した際の台詞を思い出し、再度少女の蹴りを喰らって倒れた彼に皮肉の言葉を浴びせる。
「ぐっ……まだ俺の力はこんな物ではないぞ!!」
ストロングは超音波が鳴りやんだのを確認すると起き上がり、両目を青く光らせて氷の球体を吐き出す。
胡桃は宙返りをしながら後ろへ後退して攻撃をかわした。
「しつこ~い……」
胡桃はまだ立ち上がり新たな技を繰り出すストロングをしぶとく感じる。
ストロングは氷の球体を吐き出し3人に攻撃する。
英夜装甲態達は次々と襲い掛かる氷の攻撃を軽い身のこなしでかわしていく。
ストロングはそれに対抗する様にジャンプして宙返りからの飛び蹴りを繰り出して3人を苦戦させる。
「全く、見た目通りのタフな野郎だぜ!」
英夜装甲態は薙刀でストロングの飛び蹴りをガードしながら彼の体力の高さに毒づく。
「きっとお父さんもこいつのタフさに苦戦したんだろうなぁ、流石に私も疲れて来たよ!」
リコもストロングの攻撃を避け続けて体力の消耗を感じ、自身の父親も体力の差で敗北したのだろうと推察する。
ストロングは攻撃の最中で偶然にも胡桃を捕らえる事に成功する。
「し……しまった!!」
ストロングに掴まれた胡桃は焦った。
先程小柄な体でストロングを蹴り飛ばした彼女が3人の中で一番体力を消耗していて捕らわれやすかったのだ。
ストロングは胡桃を空に投げ飛ばし、氷の球体を彼女目掛けて放つ。
「ぎゃあっ!!」
攻撃を受けた胡桃は大きなダメージを受けて地面に落下する。
「胡桃ちゃん!!」
「胡桃!!」
リコと英夜装甲態は血相を変えて落下する胡桃を受け止める。
2人は胡桃の名を呼びながら彼女の身体を揺するが、反応は無かった。
リコは一瞬自分の脳裏に手を差し伸べる中学生位だった胡桃の姿を想い浮かべる。
「よくも……よくもよくもよくも!!」
リコは今まで以上に強い怒りを露わにし、ストロングに立ち向かって行く。
「待て、滝内!!」
英夜装甲態は感情を爆発させるリコを制止しようと後を追う。
リコは高くジャンプし、空中でターンをしながらストロングに斬りかかる。
ストロングは右腕で攻撃をガードしてリコを弾き飛ばす。
リコはすぐに体制を立て直し、刀に香水を有りっ丈降りかける。
刀の刃には火が灯され、リコは燃える刀を振りかざして再度立ち向かう。
リコは素早い連続斬りでストロングに攻撃する。
「小娘如きにやられてたまるか!!」
ストロングは氷の球体を吐き出してリコに反撃する。
しかしリコの炎の刀は次々と降りかかる氷の球体を斬り裂き溶かしていく。
そしてリコは次に迫って来た氷の球体にジャンプして、それを踏み台にして高く飛び上がり、ストロングの身体を一直線に斬りつけた。
「ぐおおおお!!」
ストロングは頭と腹を押さえて苦しみだす。
そこに英夜装甲態が追い打ちをかける様に加勢し、薙刀でストロングの斬られた箇所にさらに攻撃を加えた。
「ああああああ!!」
ストロングは悲痛の叫びと共に後退りをする。
「おい滝内!」
ストロングが怯んでいるのを確認した英夜装甲態は滝内に声をかけ、彼女に薙刀を投げる。
リコは投げられた薙刀を左手で受け取った。
「私にフィニッシュを決めさせてくれるの?」
薙刀を受け取ったリコは英夜装甲態はとどめを自分に任せてくれるのだと悟った。
「怒りたいのは従兄妹を傷付けられた俺も同じだ、だがここは親友のお前に任せるぜ、それにあいつはお前の親父さんの仇でもあるしな! ダメージが再生する前にとどめをさせ!!」
英夜装甲態は事情は知らずとも自身の従兄妹を大切に思ってくれているリコに全てを委ねるつもりだった。
「ありがとね!」
リコは英夜装甲態に礼を言った後、ストロングの方に駆け出し、彼の腹部を刀と薙刀の刃で突き刺した。
「があああああああ!!」
ストロングは大きな口を開けて苦痛の声を上げる。
そしてリコは刃を抜いてストロングの身体を駆け上がり、ストロングの開いた口に入り身体を横に回転させる。
刀に灯った炎がリコのターンと共にストロングの口内に飛び散り、やがて彼の口から炎の渦が飛び上がる。
ストロングは声も出せずに苦しみ、身体をじたばたさせて暴れ出す。
「身体から氷を吐き出すって事はどう考えたって火に弱いって事だ、タフな奴だったが内側から熱を与えれば大した事ねぇ。」
英夜装甲態はストロングが氷の球体を吐き出した事から彼が熱に弱い体質ではないかと読み取り、香水の力で炎を操れるリコなら難なく倒せるだろうと思ったのだった。
やがて暴れまわったストロングはその場に倒れ動かなくなった。
ストロングの口から出て来たリコは彼の首筋に触り脈を確かめる。
「死んだよ!」
リコはストロングの死を英夜装甲態に伝える。
「よし、早く胡桃を病院へ運ぶぞ!」
英夜装甲態は胡桃の方に首を向けながら彼女の方へ走り出し、リコに自分について来る様呼びかける。
「分かってる!」
リコも急いでストロングの亡骸から降りて胡桃の方へ駆け寄った。
2
一方の美森とロンリネスも番人の悪魔を倒し終えていた。
そして2人は無言で見つめ合う。
「……君、僕に気があるの?」
先に話したのは美森だった。
「うーん、何ていえばいいのかな……あんた、私といて何か懐かしい感じとかしない?」
ロンリネスは自分達が従兄妹である事を隠しつつ、それとなく自分を見て何かを感じないか美森に尋ねる。
「? 別に。」
美森はロンリネスの質問の意味を読めず困惑する。
「あら残念、所であんた、さっき知り合いの看護師の仇を探してるっていったわよね、探せる自信あるの? ひょっとしたら犯人は知性を持たない下級悪魔かもしれないじゃない。」
ロンリネスは対面しただけじゃ自分達が身内だと気づくわけもないかと思い、話題を変えて美森の恋人の仇討ちについて指摘を入れる。
「占い師をしている母さんはグリーンパールに行けば犯人に会えると言った、そして病院内が派手に荒らされた形跡は無く、他の人が襲われたという事実も無かった、そして今はグリーンパールへ身を潜めているとなると犯人は知性を持った上級悪魔の可能性が高い、僕はその可能性に懸ける。」
美森は高井の死体を見た時の状況から犯人は上級悪魔で間違いないだろと睨んでいた。
「気が弱そうに見えてそれなりに自信を持ってる所があるのね。」
ロンリネスは美森が敵討ちについて語る際にその瞳から強い意志を感じて意外と度胸はあるのだなと感じた。
「愛した人の仇は討ちたい、この感情は不思議と強気でいられる。」
美森は普段気の弱い自分だからこそ逆に強く揺るがない意志を持ちたいのだろうと自分の思考を推察していた。
「ご立派な事で、それじゃあ私はこれで消えるわ、奥の悪魔も今頃お仲間さん達が片付けた頃だと思うし。」
ロンリネスは美森の意志を認めた後、自分はもうここにいる必要は無いと感じてその場から立ち去ろうとする。
「待って、君は結局何者なの?」
「あんたと縁のある者……」
「え?」
「なーんてね、知りたければ自分で解き明かしてみなさい、それじゃあね!」
ロンリネスは美森に呼び止められ素性を聞かれるが、自分から直接伝えるより美森の方から真実にたどり着いた方が面白いと感じて曖昧な返答をする。
そしてロンリネスは高くジャンプして壁から壁を伝って去って行った。
「ロンリネス……」
美森は思わずロンリネスの名前を呟き唖然とした。
「水前寺ー!!」
すると扉の方から英夜の声が聞こえ、美森は咄嗟に反応して振り向く。
そこにはぐったりした胡桃をお姫様抱っこしている英夜とその隣で心配そうな顔で胡桃を見つめるリコが走っている姿があり、美森はロンリネスの事を考えるのは一旦保留して彼らの元に駆け寄って行った。




