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14話 胡桃とリコ8/最深部潜入

リコは香水から放たれる火の玉で次々と蟷螂の悪魔を焼き払い、他の4人も蝿の悪魔を倒しながら無事に崖の下まで辿り着く事が出来た。

そこは幅の大きい廊下となっており、奥には白い扉が確認できた。


「何とか無事に着地できたみたいね。」

「で、あの扉の向こうに行けばボスとご対面という訳か。」


胡桃と英夜は奥にある扉を見て、あそこにニュームーンの親玉が潜んでいるのだろうと推察する。


「これ、ありがとね。」


一方のリコは香水を貸してくれたロンリネスに礼を言って、返却しようと差し出す。


「あげるわ、まだ中身も残ってるし、この先の戦いに備えてとっとくといいわ。」


ロンリネスは香水の中身がまだ三分の二程残っているのを確認し、この先のボス戦での戦利品としてリコに譲る事にした。


「そう、じゃあお言葉に甘えて。」


リコはロンリネスの言葉通り香水をポケットにしまい、彼女にウィンクを投げる。

ロンリネスの事はまだ半信半疑だった物の、今回の目的であるニュームーンの悪魔退治で彼女が自分達を利用して裏切るメリットは思いつかず、リコは一先ず彼女に警戒心を抱くのはやめる事にした。


「所で貴女。」


そんな時、胡桃が会話に入りロンリネスに話しかける。


「あら、今度はあんたが質問?」

「貴女はその……半分悪魔になって後悔してないの?」


胡桃は人間と別の生き物になったロンリネスにはそれに対する疎外感や葛藤があるのではないかと思った様だ。


「する訳ないでしょ、何でそんな事聞くの?」


しかしロンリネスはあっけらかんとした表情で返答し、半魔になった事に後悔している様子は微塵も感じられなかった。


「だって……人間じゃなくなったんだから、それに悪魔の細胞を取り込むって相当リスクがあった筈でしょ?」

「確かにリスクはあったわ、素質が無ければ死んでたしね……でもだからこそいいのよ、運良く超人になれたんだし滅茶苦茶ラッキーじゃない、逆に超人になれて落ち込むって考えの方が理解できないわ。」


胡桃から続けざまに訴えかけられるも、ロンリネスは半魔になった事で私生活に支障が出る訳は無く、逆に超人になった自分を幸運に感じるというポジティブ思考を彼女に伝えた。


「そういう考え方も出来るんだ……」


ロンリネスのポジティブ思考を知った胡桃は以前は自分も人間の身体にはオーラが宿っているという周りの友達が知らない事実を知っている事を誇らしく思いポジティブな考え方をしていた事を思い出す。

しかし月日が流れると共に周囲にその事を口外できない事に葛藤し、勉強やスポーツで自分よりも優れて周りから褒められる同級生を見る度に負い目を感じる様になり、自分の存在意義を疑う様になってしまったのだ。

ロンリネスの言葉を聞いて、自分は周りを気にするあまりネガティブな思考になってしまった、だったら周りからの評価は気にせず自分の身体にはオーラが発現していて人より優れている事を誇らしく思おうと胡桃は決意した。


「そ・れ・と、無駄話をしている余裕もないわよ。」


胡桃が自分の中で考えを張り巡らせてる最中、ロンリネスは彼女に扉の方を見るよう注意する。

扉の前に黒い霧が徐々に集まって行き、やがて3m程の高さになると蟷螂の悪魔へと姿を変えた。

それはこれまで見て来た個体より一回り大きく、両腕の鎌はチェーンソーになっていた。


「あいつ、ここの番人か?」

「誰がどう見てもそうだよね。」


英夜と美森はあの蟷螂の悪魔が親玉の所へ近づけまいとする番人だと判断する。


「4人共、私にちょっと考えがあるんだけど。」


そんな時、ロンリネスは何かを閃いた様で美森達に自分の前に集まる様指示する。

4人は彼女に言われるまま1個所に集まり、話を聞く。


「……というのが手っ取り早くない?」


ロンリネスはヒソヒソ声で自身の策を話した後、4人に提案に乗ってくれるかどうか伺う。


「確かに一理あるけど、なんで僕を指名したの?」


美森はロンリネスが出した提案に賛成した様だが、一つだけ疑問に思う事があった。


「あんたとはちょっと色々話がしたいと思ってね、詳しくは後、番人さんもこちらに迫って来てるし。」


ロンリネスは美森の事が気に入り話をしたいと告げた後、皆にチェーンソーの音を鳴らして近づいて来る番人に警戒する様呼びかける。


「取りあえずあの面倒な奴を切り抜けられればそれでいいか。」


英夜もロンリネスの提案に賛成して身体にオーラを滾らせて戦闘に備える。

胡桃とリコも互いにアイコンタクトを取った後、同じくオーラを滾らせた。


「みんな準備は良い? じゃあ行くわよ!!」


ロンリネスの掛け声とともに一同が番人に立ち向かう。

まず美森と英夜が自身のオーラを右手の拳に一点集中させて番人に殴りかかる。

番人はチェーンソーで2人の攻撃をガードする。

本来ならチェーンソーにより2人の腕は切り裂かれる所だが、オーラを一カ所に集めて攻撃力、防御力共に強化された拳であれば何とか防ぐ事は出来た。

続いてロンリネスは両腕の塞がった番人に同じくオーラを一点集中させた腕の右肘でタックルを仕掛けた。

番人はロンリネスのタックルで弾き飛ばされ、そして素早く背後に回っていたリコによって後頭部に踵落としを喰らわされてしまう。

とどめに胡桃が倒れた番人に銃を連射する。


「これで起き上がるのに時間が掛かるわ、この隙に行って!」


ロンリネスはダメージを受けてダウン状態になっている番人を見て、英夜、胡桃、リコの3人に扉の方へ向かう様命令した。

番人を一時的にダウン状態にして動けなくした後、英夜達3人を先に向かわせ、後はロンリネスと美森で足止めをする。

これがロンリネスが閃いた提案だった。

指示を受けた3人は一心不乱で扉へと向かって行く。

起き上がろうとする番人は美森とロンリネスが抑え込む。





扉の向こうへやって来た英夜、胡桃、リコの3人は辺りの風景に驚いた。

先程までの建物の中という雰囲気から一遍、大きな木々や池のある自然溢れる空間がそこにあった。

天井には青い照明が複数照らされており。先程までの赤みがかった空間から一気にイメージが変わった。


「ここに親玉がいるのか?」

「いるよ確実に、殺気がじわじわと感じて来る……」


天使であるリコには悪魔の気配がすぐに感知出来た。

英夜と胡桃も微かだが木々がカサカサと揺れる音に気が付いて警戒心を高める。

音は徐々に大きくなっていき、やがて奥の方から巨大な塊が回転しながらリコ達の方へ落下して来た。

地面の音が大きく響いて地鳴りが起き、3人は体制を崩しかける。

黒い塊の正体は金色の瞳に黒い体毛の4メートルはあろう巨体のオラウータンの悪魔だった。


「お前ら! ここに何しに来た!?」


オラウータンの悪魔はドスの効いた大きな声で英夜達に話しかける。


「あんたがニュームーンで偽札を作っていたのね!?」


胡桃はオラウータンの悪魔の威圧的な巨体を見て、彼がニュームーンの親玉であると推察した。


「如何にも、俺がこの店の裏で偽札を作っているストロングだ! お前らここに入って来たって事はどうなるか分かってるんだろうな!?」


ストロングと名乗ったオラウータンの悪魔は英夜達の身体からオーラが滾っているのを感じて、彼等が自分を始末しにここにやって来た退治屋だと読み取る。


「それはこっちの台詞だよ! 父さんの仇、取らせてもらうよ!!」


対するリコは刀を構えながら戦闘態勢に入り、ストロングに反論の言葉を浴びせる。

父の仇を目にしたリコの表情は強張っており、余裕な態度が感じられなくなっていた。

同じく英夜と胡桃も彼女の復讐心に同調する様に懐中時計と拳銃を構えてストロングに敵意を示す。


「小娘、お前天使か? 天使だろうと人間だろうと殺した奴の事なんか一々覚えていない。」

「黙れ!!」


リコはストロングの返答は大方予想していた物の、やはり直接耳にするのは気持ちのいい物ではなく激昂して斬りかかって行く。

寮で暮らし、親友である胡桃と過ごす時間を優先したあまりに父親とのコミュニケーションを怠って行き、そのまま死別してしまった事への虚しさと悔しさが彼女の頭を駆け回ったのだ。

ストロングは右手のパンチで刀に対抗し、リコを殴り飛ばす。


「ぐはっ!!」


リコは刀によるガードがありダメージは軽減できたが、胡桃の前まで弾き飛ばされてしまった。


「リコさん!!」


胡桃は急いでリコの身体を起こし、彼女の安否を気遣う。


「平気だよ、こんなもんじゃやられないよ!」


リコは胡桃の肩を持ちながら強がった笑顔を浮かべて立ち上がる。


「とんだ怪力ゴリラだな!」


今度は英夜が懐中時計を構えて装甲態に変身し、ストロングに立ち向かう。

英夜装甲態は高くジャンプし、上空から薙刀の突きで攻撃を仕掛ける。

ストロングは先程と同じ様にパンチで薙刀に対抗する。

英夜装甲態は負けじと自身のオーラを高め、そして身体をドリルの様に回転させて押しきる。

ストロングは力に押されて後ろへ後退りをする。

そこへ胡桃が追い打ちをかける様に二兆拳銃でストロングへ発砲する。


「小賢しい!!」


ストロングは左手で回転している英夜装甲態を掴む。

回転によって発生する比熱で左手に煙が出来るも、ストロングは何とか英夜装甲態の動きを止める事に成功する。

そしてストロングは英夜装甲態を胡桃の方へ投げつけた。

胡桃は瞬時にオーラを右腕に一点集中させて英夜装甲態を受け止める。

リコも再びストロングに斬りかかって行く。

ストロングはリコを拳で叩き潰そうとするが、リコは間一髪でかわしてジャンプし、オーラを一点集中させた右足で彼の腹部にキックを入れる。


「小娘風情の蹴りなど効くか!!」


ストロングはすぐにリコを右手で掴み、彼女を握り潰そうとする。


「うぐぐ……」


リコはオーラを全身に戻す事に遅れてしまい、ストロングの圧倒的な握力に苦しむ。


「リコさんを殺させない!!」


胡桃はショットガンを取り出してストロングに発砲し、リコを救出しようとする。


「馬鹿めが、ハァ!!」


ストロングは口から強烈な息吹の球体を吐いて胡桃に反撃する。


「ぐっ!!」


胡桃は弾き飛ばされながらも、負けじとショットガンを発砲してストロングの目を狙う。


「がああ!!」


左目に弾丸が命中したストロングはその反動で右手の拳の力を緩めてしまう。

リコはその隙を付いて何とかストロングの拳から脱出した。

そしてリコと入れ替わる形で英夜装甲態が飛びかかり、ストロングの手のひらにに薙刀の刃を突き刺す。

ストロングは急いで右腕を左右へ振り回し、英夜装甲態を払おうとする。

英夜装甲態は右足で踏ん張りながら薙刀を抜いてストロングから離れる。


「チッ、左目の再生には少し時間がいるな……一時的とはいえ片目を潰した程度で俺に勝てると思うな!!」


ストロングは片目を封じて戦況が有利になっていると思い込んでるであろう3人に自分を追いつめた気になるなと言い放った。

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