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11話 胡桃とリコ5

美森装甲態と英夜装甲態対光龍装甲態の戦いは続く。

光龍装甲態の剣が地面を突き、そこから電流が流れて英夜装甲態を襲い続ける。


(電流をかわすので手一杯で中々近づけねぇ、だがあいつのオーラも無限じゃねぇ筈だ! いつか力尽きる!)


英夜装甲態は心の中で光龍装甲態が疲れるのを待っていた。

彼のスタミナは今までトレーニングを積んできた自分よりは劣っているだろうと英夜装甲態は考えていたのだ。


「さて、これ位でいいか。」


すると突然光龍装甲態は攻撃を中断した。


「攻撃をやめただと!?」


英夜装甲態はまだそれ程体力を消耗している様子がないのに攻撃をやめた光龍装甲態に驚く。


「気づかなかったか? 自分の薙刀を見てみろよ。」


光龍装甲態は余裕に満ちた表情で英夜装甲態に薙刀を見るよう忠告する。


「なっ!?」


光龍装甲態に言われるまま薙刀を見た英夜装甲態は、自分の薙刀の刃がドロドロに溶けていた事に驚いた。


「お前自身には当たらなくても薙刀の方は十分喰らってたよ、俺の電流は物を溶かす事だって出来るんだぜマヌケ!」


光龍装甲態は自分の武器に攻撃が当たっている事に気づかなかった英夜装甲態に侮辱の言葉をかける。


「野郎、これが狙いか!」

「さて、丸腰になったしこれで十分近づけるな!」


光龍装甲態は丸腰になった英夜装甲態はもう薙刀で自分の身を守る事が出来ないと判断し、剣を振りかざし襲い掛かる。

英夜装甲態は自分に迫って来る剣を間一髪白刃取りで受け止める。


「バーカ、さっき言った事忘れたか?」


光龍装甲態は咄嗟の判断とはいえ自分の剣に触れた英夜装甲態を見て、先程電流の性質の説明をしたのを忘れたのかと嘲笑う。

そして光龍装甲態は自身の剣に再度オーラを流し込み電流を発生させる。

英夜装甲態は手のひらが溶け始めてるのを感じて白刃取りをしていた剣を放してバックステップをする。


「ちょっと見ねぇ間に器用なオーラ使いやがって!」

「お前らにコケにされたままじゃこっちも溜まったもんじゃないからな!」


光龍装甲態は先程英夜装甲態に卑怯者と言われた事を根に持っており、徹底的に仕返しして彼を苦しめるつもりでいた。

一方の美森装甲態も蟷螂の悪魔2体と奮闘中で英夜装甲態の手助けを出来ずにいた。

美森装甲態は何度か蟷螂の悪魔に攻撃するも、鎌でガードされるか再生するかで限がないという所だった。


「くっ……しぶとい奴らだ!」


美森装甲態は中々蟷螂の悪魔を倒せないこの状況に毒づき、戦い方を変えて見ようと考える。

美森装甲態はまず攻撃を後方へ身体をターンさせてかわし、そして剣の先を地面に突きつけジャンプする。

そして剣の柄の部分を踏み台にしてジャンプ力を上げ、蟷螂の悪魔1体に踵落としを食らわせる。

美森装甲態は倒れた蟷螂の悪魔の尻尾を持ち上げ、もう片方にめがけて振り投げた。

蟷螂の悪魔は2体とも地面に転がり、二段重ねに倒れる。

その後美森装甲態は急いで地面に突きさせいていた剣を拾い上げ、それを蟷螂の悪魔達に投げつけた。

蟷螂の悪魔は2対とも剣の串刺しになり悲鳴を上げる。


「まだまだだ!」


美森装甲態はまだ攻撃は止めないと宣言して蟷螂の悪魔の悪魔達に駆け寄り、剣を抜く。

そして蟷螂の悪魔の切り傷が再生する前に身体を液状化させ、上に倒れている方の体内に入り込む。

液状化した美森装甲態が体内に入り込んだ蟷螂の悪魔はもがき苦しみながら立ち上がる。


「グェェェェェェェギョェェェェェェ!!」


蟷螂の悪魔の身体は次第に膨らんでいき、身体の数カ所に割れ目が発生して赤く淀んだ血がどくどくと流れ始める。


「ギャアアアアアアアア!!」


そして蟷螂の悪魔の身体は破裂して粉みじんに飛び散り、その中から原型を元に戻した美森装甲態が出て来る。


「外からいくら斬っても再生する、ならば内側から心臓や脳を斬り刻んで破壊すればいいんじゃないかと考えた、まぁ知性の無い相手にこんな事を言っても無駄だけど。」


美森装甲態は蟷螂の悪魔を外からではなく、身体の中から急所を破壊すれば再生できないのではと考えた。

彼はもう片方の蟷螂の悪魔にその事を説明するも、すぐに人間並みの知性を持たない下級悪魔相手に意味のない事を言ってしまったという空しい気持ちになった。

もう片方の蟷螂の悪魔は当然の如く美森装甲態の言葉には反応せず、身体を起こして襲い掛かって来る。

その頃英夜装甲態は素手の状態で剣を持った光龍装甲態に対抗しなければならない状態だったため悪戦していた。

剣を掴もうとすれば物質を溶かす電流を浴びてしまうために、英夜装甲態はただ攻撃を避けるのが手一杯だったのだ。


「クソ、油断してたぜ!」


英夜装甲態は相手が元々戦闘とは無縁の一般人だったが故に倒すのは苦にならないと考えていた、だがその油断のせいで先程から攻撃を避けてばかりだと思うと自分が情けなく感じてしまう。


「へっ、オーラナイト様も大した事ねぇな!」


光龍装甲態は剣を四方八方に振り続けながら自分に触れる事も出来ない英夜装甲態を嘲笑う。

先程は自分が英夜装甲態の薙刀によって接近するのが難しかったが今は立場が逆になっているこの状況を面白く感じた。

英夜装甲態は攻撃をかわしながら後退りを続けた結果、とうとう壁際に追いつめられてしまう。


「貰った!!」


光龍装甲態は勝負あったと言わんばかりに最後の一振りを英夜装甲態に振りかざす。

しかしその時、英夜装甲態はあろう事かまた白刃取りで光龍装甲態の剣を掴んだ。


「!?」


光龍装甲態は自分の剣を掴んでも手が溶かされるのはもう十分知っている筈なのに同じ行動をする英夜装甲態を不審に思う。

しかし取りあえず剣に電流を流し、英夜装甲態を溶かそうとする。


「ぐうう……!」


英夜装甲態は電流の痺れる感覚と自分の手が熱で溶けている感触に呻き声を上げるが、自分のオーラの出力を上げて必死に溶かされるのを防ぐ。

やがて英夜装甲態は右手を放して左手だけで剣を止める様になる。


「何考えてやがる!?」


光龍装甲態は突然片手で剣を受け止めるようになった英夜装甲態を増々疑問に思う。

ただ自分の攻撃を止める位片手だけで十分だと挑発しているだけなのか、それとも何か別の目的があるのか、光龍装甲態は英夜装甲態の行動の理由を考えている内に足の踏ん張りが弱くなってしまう。

その時だった。


「ぶえっ!!」


光龍装甲態は突然腹部に激痛を感じて苦痛の声を上げ、剣を落とす。

光龍装甲態は顔を下に向けてみると、先程溶かした筈の英夜装甲態の薙刀がいつの間にか自身の腹部を貫通していたのが目に見えた。


「やっぱりちょっと勉強不足だったみてーだな、オーラで具現化した武器は再度具現化可能なんだよ、時間は少し掛かるがな。」


英夜装甲態は光龍装甲態の腹部を蹴りながら薙刀を抜きつつ、彼にまだまだ爪が甘いと吐き捨てる。

光龍装甲態は意識不明の重体となり、身体のオーラが途切れて変身が解ける。

そして英夜装甲態はすぐに美森装甲態の加勢に入り、蟷螂の悪魔に薙刀を振りかざす。

蟷螂の悪魔はリーチの長い薙刀の攻撃はガードしきれなかったのか、攻撃を喰らって後退りをする。


「こっちは片付いたぜ。」

「みたいだね。」


美森装甲態は地面に横たわっている光龍を見ながら状況確認をする。


「こいつもとっとと片付けるぞ!」

「了解」


そして2人の装甲態は同時に走り出し、蟷螂の悪魔に攻撃する。

蟷螂の悪魔は2人の刃で十字に斬られ、その場に残骸が転がり落ちる。

美森装甲態は蟷螂の悪魔が再生する前にまた身体を液状化し、蟷螂の悪魔の右半身に入る。

英夜装甲態も蟷螂の悪魔の左半身内部を薙刀でぐりぐりとえぐりだす。

2人に内部から重要器官を破壊された蟷螂の悪魔は完全に息絶えた。

美森装甲態は蟷螂の悪魔の残骸から出てきて変身を解き、続けて英夜装甲態も変身を解く。


「彼、死んだの?」


美森は倒れている光龍の方に顔を向けながら彼の生死を問う。


「さあな、もしあいつ自身の身体も悪魔からなんらかの改造を受けていたとすれば生きてるかもしれねぇが。」


英夜は光龍が疑似オーラナイトの鎧を渡されただけでなく、彼自身の身体もなんらかの処置が施されているのではと予想する。


「念のため脈を調べて来る。」


美森は光龍の生死を調べるため彼に近づこうとする。

その時、突然自分達が来た道から黒い霧がやって来て光龍を包み込み、そして猛スピードで帰っていた。

突然の出来事に2人は驚き後を追おうと走り出すが、車並のスピードで移動する霧に追いつけづ追跡を断念する。


「今のって光龍の仲間の悪魔?」


美森は今の霧は光龍の仲間である悪魔が化けた存在なのではと英夜に問う。


「多分そうだろう、あいつとはまた戦う事になりそうだな……」


英夜も美森の予想している通りだろうと思い、そして仲間の悪魔が光龍を回収しに来たという事は彼はまだ生きていると察してまた再戦する時が来るだろうと感じる。


「……先へ進もう。」


美森は今は光龍の事よりも先へ進んでここの親玉である悪魔を倒す事を先決しようと英夜によびかける。


「ああ。」


英夜は一言軽い返事をし、そして2人は次の道へと歩き出す。





胡桃とリコは洞窟を出て蟷螂の悪魔を倒した後、そのすぐ真向かいにあった大きな家の中に入り込んでいた。

玄関を入ると花の絵が描かれた絵画がいくつも廊下に飾られており、奥に進むと右側には2階へ続くであろう怪談、左側には食卓があった。

辺りは暗闇で電気のスイッチも入らず2人は家の中が不気味に感じる。


「ここって誰の家なんだろう?」


リコに連れられるままこの家にやって来た胡桃は、無人である結界の中とはいえ見知らぬ人間の家に入る事に抵抗感があった、そしてここには誰が住んでいるのかが気になり彼女に尋ねる。


「さぁね、私はそんな事興味無いよ、ただ結界の中だから元の世界と部屋の構造は違ったりするかもね。」


リコは家の主には興味なさげだったが、その代わりに現実世界と結界とでは建物の構造が違っている時がある事を胡桃に教える。


「ふーん、でも本当にこの家の中が正しい道なの?」


胡桃はリコから豆知識を聞いた後、数ある民家の中でこの場所が正しい道筋なのかを疑問に思う。


「多分ね、結界の中は一見複雑な様で道筋は単純だって昔お父さんは言ってたし今はそれにかけてみるよ。」


リコは自身の父から結界は複数の道があり複雑な迷路になっている様ですぐ近くに正しい道が存在していると教えられた事があり、父の言葉を信じて行動していると胡桃に伝える。


「お父さんか……亡くなったお父さんとは仲が良かったの?」


胡桃はリコが父の話をした事で、彼女の父がニュームーンに潜伏している悪魔に殺された事を思い出し、親子関係はどうだったかを質問してみる。


「うーん、どうだろう……年頃になって来るとやっぱり口を交わさなくなってくるし、殺される前日だってほとんど会話してなかったよ、酷い言い方になるけどいてもいなくてもどうでもいいって思っていた時もある。」

「そう……」


リコから父との関係を聞かされた胡桃は、彼女が父と距離を置いたまま死別したのかと思うと、切ない気持ちになってしまう。


「だからお父さんが殺された時は家族に対してドライになりがちだった自分に罰が下ったのかなぁって思った。」


リコは父と死別したのは家族でありながら距離を置いた人間関係をしていた自分に与えられた罰なのだと思い罪悪感を感じている様だった。


「そんな事ないよ、リコさんはお父さんの仇を討つためにここにいるんだから! らしくないよ、いつものリコさんは明るくて楽しい人なんだから。」


胡桃は父が死んだのは自分の責任だと責めるリコを慰めるべく、勇気づける。


「励ましてくれてありがとう、ちょっと下がってたテンションが元に戻ったよ。」


胡桃から励ましの言葉を貰ったリコはいつもは明るい自分が暗くなってどうすると心を入れ替え、彼女に礼の言葉を送る。


「さてと、これからどうする?」


リコの明るさが戻って安心した胡桃はこれからこの家の中で何をすればいいのかを尋ねる。


「取りあえず1階から順に探索してこう、結界の中だけにある奥行きとか役立つ物がもあるかもしれないし男達とも合流出来るかもしれない。」


リコは家の中を細目に探索して先に進む道や何かの役に立つ道具等を探そうと提案する。


「了解。」


胡桃は結界の中とはいえ人の家を探索するのがまるで泥棒みたいで若干の抵抗はあったものの、それは仕方がないと判断し、右手でサムズアップをしながら彼女の意見に同意する。

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