10話 胡桃とリコ4/美森&英夜VS光龍
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美森と英夜はそれぞれ装甲態に変身して迫って来る蝿の悪魔達を迎え撃つ。
美森装甲態と英夜装甲態はステップやターンを繰り返し、蝿の悪魔達を剣や薙刀で払い除ける。
「あの2人、無事かな!?」
英夜装甲態は戦闘中、胡桃とリコは敵と遭遇しても無事に戦えているかが気になってしまう。
「今はあの2人を信じよう! 従兄妹の君が胡桃ちゃんを信じれなくてどうする!?」
美森装甲態は胡桃も非力ではないのだから、そして胡桃の家族であるのなら彼女が無事である事を信じようと英夜装甲態に言い聞かせる。
「えっ! お前が説教するの!?」
しかし英夜装甲態は普段内気で頼りなさそうな雰囲気を漂わせる美森装甲態から説教を受けて不満気な態度をみせた。
「どういう意味!?」
美森装甲態は自身に反感を持った発言をする英夜装甲態に対してムキになってしまう。
「それにしてもこいつらウジャウジャとしぶといな! もう無視して先行くか!」
英夜装甲態はムキになる美森装甲態を見てこれ以上彼に何か言うのは面倒だと感じ、蝿の悪魔達を無視して先に進もうと話題を切り替える。
「こら! 話を反らすな!!」
自身の抗議から逃げる様にその場を走って行く英夜装甲態を見た美森装甲態は怒りながら彼の後を追いかける。
蝿の悪魔達を無視して走り出す2人であったが、行く先々で地面が割れたり盛り上がったりして逃走を妨害する。
2人は装甲態に変身した補正で付いた身体能力でジャンプしながらなんとか変形した進路を飛び越えてゆく。
「この間は雪木を連れていたせいで中々こんな身軽な事出来なかっただろ?」
通路を飛び跳ねしている最中、英夜装甲態は前回ディセントから逃げ回っていたであろう美森装甲態に雪木を連れていたときは気掛かりになって今の様に軽々しい身のこなしは出来なかったのではと伺った。
「確かに。」
美森装甲態も雪木の手を取りながら走り回った前回は行動が制限されている様で辛かったと述べた。
そんな話をしていた時、2人はジャンプでは飛び越えられなさそうな数十メートル程の長さの割れ目に遭遇して立ち止る。
「さーて、ここはどうする!?」
「こうするよ!」
美森装甲態は山奥で光龍装甲態と戦った時の様に身体を液状化させ、英夜装甲態の薙刀の先に纏わりついた。
「お前がやりたい事は何となく解ったが、上手くいくのか?」
英夜装甲態は自身の薙刀に巻き付いた美森装甲態を見て、彼がどの様な事を考えたのかを察するが、上手く彼の思い通りに事が進むか不安になる。
「いいから飛んで!!」
美森装甲態は自分を信じて長い割れ目に飛んでほしいと願い出る。
英夜装甲態は少し戸惑ってしまうが、背後から追って来る蝿の悪魔達の羽音を聞いて彼の言う通りにするしかなさそうだと考えを改める。
「仕方ねぇか……お―――りゃ!!」
英夜装甲態は美森装甲態の考えが上手く行ってくれる事を願いながら、半場やけくそになりながら割れ目にジャンプし、薙刀を振るい始める。
薙刀に纏わりついた液状化した美森装甲態は、その勢いで身体を伸ばし、英夜装甲態が飛び越えきれなかった向かいの崖に突き進んでいく。
液状化した美森装甲態の身体は無事向かいの崖の端にしがみ付き、そして猛スピードで身体を縮めて行った。
英夜装甲態は液状化した美森装甲態に身体を引っ張られ、向かいの通路までたどり着いた。
美森装甲態も身体を元の原型に戻し、英夜装甲態の薙刀から離れる。
「ふー、ひやひやしたぜ。」
英夜装甲態は無事に長い割れ目を飛び越えられて一安心する。
「どう? 僕も頼りになるでしょう?」
美森装甲態は先程蝿の悪魔達と戦っている時に不満の発言を撤回して欲しいという気持ちも込めて英夜装甲態に自分の頼もしさを強くアピールする。
「まぁ認めざるをえないか……先へ進むぞ!」
英夜装甲態は取りあえず美森装甲態のおかげで長い割れ目を飛び越えられたため、彼を認める事にした。
しばらく道なりに進んだ後、2人は第二の大広間へと着地する。
そこは何もなかった先程の場所とは違い、ダンボールが何箱も山済みされて左右の端に配置されていた。
「この中に入っているのって……」
美森装甲態は電話で胡桃からハンバーガーショップに呼び出される際、ニュームーンが偽札を製造してる事も聞かされておりもしやと思い、剣でダンボール箱を切り裂き中身を確認する。
切り裂かれた箱の中からは大量の紙幣が散らばった。
美森装甲態は斬られていない紙幣の1枚を拾ってじっくりと観察する。
紙幣の中央の円形からは透かしの絵が浮かび上がらず、偽札である事を確信づけた。
「透かしが浮かび上がらない、やっぱり偽札だ。」
「最優先はここの親玉を倒す事だが、一応処分しとくか。」
英夜装甲態は敵である悪魔を倒す事に執着していたが、偽札を世に出回せる訳にもいかず、処分しておこうと考えを改める。
「待てお前ら!!」
その時、頭上から男の声が聞こえ、2人の装甲態はそれに反応して上を見上げる。
天井が暗闇に隠れて見えない程高い上空から金色の影が降って来て、2人は咄嗟に身をかわす。
大きな音と共に地面に着地したその影は光龍装甲態だった。
「光龍!」
「ああ、そう言えばこんなの居たっけ。」
美森装甲態は再び自分達の前に現れた光龍装甲態に驚くが、一方の英夜装甲態は彼の存在を忘れていたらしく、薄い反応を見せた。
「俺は色々あってここの見張りを任された、侵入者は生きては返さねぇぜ!」
光龍装甲態は剣を2人に指しながら自身がニュームーンの結界内の警備を務めている事を高らかに宣言する。
「分からないな。」
「何?」
光龍装甲態は剣を下し、突然妙な事を聞く美森装甲態に首をかしげる。
「人間としての道を踏み外したお前がこの先何を望んで生きていくのかが分からない、ただ悪魔の言いなりになって動く人形として生きる気か?」
美森装甲態は無差別殺人を起こして社会的に自滅した光龍装甲態が今何を思って生きているのかが分からなかった。
美森装甲態は人見知りな性格故に今まで人と関わる事を避けていたため、同じく人との関わりを避けて来た光龍装甲態には少しシンパシーを感じる所があったからこそ疑問を感じたのだ。
しかし同時にどれだけシンパシーを感じようと自分より弱い人間を狙って殺す彼に同情する気はないとも思っていた。
「さあな、ただ言えるのは自分の人生にもう未練がないから人を殺したというだけだ! 学生の時からあんまり冴えた人生じゃなかったしな!」
光龍装甲態は子供の頃から自分の殻に篭りがちで人とあまりいい関係が築けず、自分は輝いた人生を送れそうにないと諦めを感じていたため殺人に手を染めたという心境だった。
「水前寺、こんな奴と話をするのは時間の無駄だ。」
英夜装甲態は話に割り込み、人の道を踏み外した光龍装甲態とは決して相容れないと注意をする。
「そうだね、じゃあ行くよ!」
美森装甲態は英夜装甲態の言う事は正論だと感じて剣を構え、光龍装甲態に突撃して行く。
光龍装甲態は出来が悪かったが故に道徳心が欠けていたのかもしれない、ここで彼を終わらせてあげようと美森装甲態は思った。
美森装甲態は光龍装甲態に剣を振りかざすが、光龍装甲態は宙返りをしてそれをかわす。
そして光龍装甲態は英夜装甲態に突き攻撃を行う。
英夜装甲態は薙刀でガードを行い、そして薙刀を振り回して反撃する。
光龍装甲態はバックステップで攻撃を回避した後、背後から再び自分に迫って来る美森装甲態に回し蹴りを食らわせる。
美森装甲態は右腰に打撃を受けてよろめくが、ダメージは軽くすぐに体制を立て直す。
「やっぱ2対1は分が悪いか……」
光龍装甲態は1人に攻撃しつつ、死角から来るもう一人の奇襲に気を配らなければいけないこの戦況は自分には不慣れだと感じながら、左手の指を鳴らす。
すると大広間の左右にあるダンボールの山が同時に崩れて邪気の様な黒い煙が飛び出して来る。
黒い煙は光龍装甲態の周りまで飛んできて、やがて蟷螂の様な形を作り緑色へと変色する。
緑色になった煙は質量を持って具現化し、別行動の胡桃達が戦った蟷螂の悪魔へと姿を変えた。
戦況は美森装甲態と英夜装甲態の2人と光龍装甲態と蟷螂の悪魔が2体の3対2になった。
「これで少しはマシになったか。」
光龍装甲態は戦闘が少し楽になったと思い余裕に満ちた言葉を呟く。
「増援が欲しければいくらでもでも呼びな、臆病者。」
しかし英夜装甲態は自分1人の力では手に負えず、しもべとなる下級悪魔に助太刀をしてもらおうとする光龍装甲態が臆病だと感じて挑発の言葉を浴びせる。
「ぐっ!!」
今の英夜装甲態の一言で光龍装甲態は図星を刺された気持ちになり頭に血が上ってしまった。
周りに上手く馴染めず拒絶し引きこもりになり、それでも孤独で何かが満たされない人生を送って来た彼は周りの人間から取り残されてる感じがして劣等感が溜まっていた。
故に自分を少しでも小馬鹿にする者に殺意を感じてしまうのだった。
光龍装甲態は無言の怒りをぶつける様に英夜装甲態に突撃して行く。
英夜装甲態は身体をターンさせ、薙刀で反撃をする。
光龍装甲態は自身の剣を迫って来る薙刀にぶつけ、そこにオーラを注ぎ込む。
「!?」
光龍装甲態のオーラが自身に注がれてる事を察知した英夜装甲態は身体に痺れを感じ始める。
「オラァ!!」
光龍装甲態はその隙を見て英夜装甲態にドロップキックをお見舞いする。
英夜装甲態はダメージを受け蹲る。
「英夜! ぐわっ!!」
それを見た美森装甲態は助太刀に行こうとするも、2体の蟷螂の悪魔に行く手を阻まれる。
美森装甲態は邪魔だから退けと言わんばかりに蟷螂の悪魔を剣で斬るが、胡桃達が戦った個体同様斬られた箇所が再生する。
「再生能力か!?」
美森装甲態は蟷螂の悪魔が片付けるのに厄介な相手だと解り毒づく。
一方の英夜装甲態も、光龍装甲態が元はオーラナイトとは無縁の一般的な暮らしをして来た人間だったが故に油断し、反撃を受けた事を悔しく思った。
「一つ学習したぜ、薙刀使いに接近戦は困難って事がな。」
光龍装甲態は実際に英夜装甲態と戦ってみて、リーチの長い薙刀が相手では中々近づきずらいという事を学んだ様だった。
「だったら何だってんだ!?」
英夜装甲態は接近戦は不利だと得意気に話し出す光龍装甲態にだからどうしたと反論する。
「こうするんだよ!」
光龍装甲態はそう言った直後、剣を地面に突きつける。
すると地面に光龍装甲態のオーラが流れ電流の波となって英夜装甲態に襲い掛かる。
「くっ!!」
英夜装甲態は左に身体を転がらせて間一髪で地面から流れ出る電流を避けた。
「オラオラどんどん行くぜー!!」
光龍装甲態は英夜装甲態に休む暇を与えず続けざまに攻撃する。




