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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第二話「幼馴染は魔法少女!? 情熱の戦士ヴァルルビィ」
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学校にダイカルア!?

 つつがなく一日の授業が終わり、放課後となる。クラスメイトの面子は我先に部活動へと出向いていった。

「あ~、やっと部活動できる。待ちくたびれて仕方なかったわ」

 ボクの斜め後ろの席で華怜が背伸びをしていた。

「華怜って本当に剣道好きだよね」

「姉さんの影響ってのがちょっと癪だけど。いっそ、一日全部部活動でもいいのに。むしろ、一時間目から六時間目まで全部体育とか」

 拷問ですか。そんなに体育やりたいなら日本体育大学にでも行ってください。そう言うと「体育ばっかできる大学とか最高じゃない」って喜んで行きそうだけど。一応、体育以外の授業もあるんだぞ。あと、ものすごい偏見しちゃって日本体育大学に申し訳ない。


 ボクも久しぶりに部活に顔を出そうかな。存在自体幻とされている学内屈指の弱小部だけど。華怜と別れて廊下を歩いていると妙な視線を感じた。どこからか監視されているような。学校でストーカーとか嫌だよ。

「見下げてごらん」

 池乃めだかですか。素直に声に従うと、廊下の隅でバンティーが寝そべっていた。


「バンティー、そんなところで何してるんだよ」

「こうしてるとスカートの中を見れないかなと思ってバ」

「やってること完全に犯罪だから。それに、今までよく誰にも見つからなかったね」

「俺っちを誰だと心得てるんだバ。人間から気配を察知されずに潜伏するなんざ朝飯前だバ」

 気配を消せるってけっこう強い能力だよね。いつの間にか背後に回り込んだりさ。そういう実践的な能力持ってるなら、君が戦えばいいのに。

「この力を使ってよく女湯に通ったものだバ」

 うん、実戦に使う気ないね。

「でも、鼻の下を伸ばしすぎて、たらいとかを投げつけられたバ」

 ダメじゃん。


 廊下の真っただ中で変態コウモリと会話していると色々とまずい。なので、バンティーを引き連れてトイレへと籠った。別に便所が好きなわけじゃないよ。人の目を気にせず会話できるとしたらここしかないもん。それに、今度はきちんと男子トイレの個室に入ったからね。

「ボクがこの学校に通っているってよく分かったね」

「魔法少女の気配を辿ればどこにいるかは一目瞭然だバ。最強の魔法少女が普段どんな生活をしているか把握するのは大切だバ」

 もしかして、ずっとストーキングしてたってこと。ボクが男だったからまだしも(って言っちゃいけないけど)、女の子相手だったらただの犯罪だよ。

「ついでに、ダイカルア連中が悪さしないかパトロールしてるんだバ」

 むしろ、そっちの方が重要でしょ。


「あ、そうそう。さっそく君に出動命令を下すば。この学校の敷地内にダイカルアの怪物っぽい魔力を感じたバ。見つけ次第、変身して退治してほしいバ」

 さらっと頼まれたんですけど。学校の中に怪物とかやめてほしい。生徒全員がゾンビになるよりはマシだけどさ。窓は割れてないよね。

「あのさ。ボクは変身する気なんて全然ないからね。君が勝手に宝石を渡しただけだし、ボクが戦う義理なんてないじゃないか」

「そんなこと言われても困るバ。力を手にしてしまった以上、世界平和のために戦ってもらうしかないバ」

 世界平和って。そんじょそこらの犯罪やら災害やらよりも害悪なことやらかしてるから、ダイカルアを排除するってことは和平に繋がるんだろうけど。でも、一介の中学生に任せるようなことでは断じてない。


「じゃあさ、せめて女の子になるのをどうにかしてよ。ボクがヴァルダイヤモンドの正体だってバレたら生きていけないよ」

「そもそも男が魔法少女になるなんて、イレギュラー中のイレギュラーだからバね。正直どうしようもないんだバ。あ、でも、魔法少女の力を消す方法ならあるバ」

 なんだ、きちんと対抗策があるんじゃん。ならば早く教えてよ。

「魔法少女はダイカルアを殲滅するために生み出された存在。奴らを倒せば力は不必要と判断され、変身能力がはく奪されるバ」

 結局、怪物と戦うしかないってことじゃん。理不尽すぎてため息しか出なかった。


「優輝、こんなところで油を売っている場合じゃないバ。学校内でダイカルアの怪人の気配が強くなってきたバ」

「だから、行くつもりはないって。サファイアとかもいるみたいだし、彼女に任せればいいじゃん」

「人任せって、君は正義の味方の自覚はないのかバ」

「ない」

 正義のヒーローになったつもりなんかないし。第一、ボクなんかがそんな大それたものになれるわけないよ。

「仕方ないバ。ダイカルアの連中を放っておくわけにはいかないバからね。俺っちだけでも出動するバ」

 そういうと、バンティーは窓の外へと飛び去ってしまった。へそを曲げてはみたものの、完全に無関心ってわけにはいかないことは心の奥底で感じていた。学校のどこで暴れるつもりなんだか。


 興味本位でバンティーが飛んでいった方向を見遣る。すると、まっすぐに武道場へ向かっているじゃないか。あそこで練習しているのは柔道部と剣道部。まさか、こんなことがあってたまるか。底知れぬ不安に突き動かされ、ボクはトイレの外へと飛び出した。


 普段ろくに運動していないせいで、道場までたどり着いた時には息が切れそうだった。まだ練習中なのか、道場の中から威勢のいい掛け声が聞こえる。よもや、道場の中に出たってことはないよね。

 建物の周りをウロウロしていると、

「やっぱり来たんじゃないかバ」

 バンティーと鉢合わせした。彼の先導で道場の裏へと回り、茂みの中に身を隠す。と、いうのも明らかに取り込み中の男女を発見したからだ。


 剣道の道着と袴という比較的動きやすそうな姿の女生徒。対峙しているのは学生服を着崩した目つきの悪い男子生徒が三人。そのうち一人は背格好が高く、上級生であることは容易に察せられた。

 そして、嫌な予感が的中してしまったことを激しく悔やんだ。道着のお陰で凛々しさに磨きがかかっているボクの幼馴染。絡まれているのは華怜だったのだ。

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