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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第六話「謎の天才ゲーマーと自由の戦士ヴァルエメラルド」
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L対覇王

 早々に敗北した華怜と一緒に観戦に回る。華怜の攻め一辺倒の戦術は大会に出場するような選手には通じなかったらしい。「変ね、勝てるはずだったのに」って未だに文句を垂れ流している。

「だから、レンちゃんみたく、ただ攻めてるだけじゃ勝てないのよ」

「そういう先輩は既に負けてるじゃない」

「あれは手札事故が起きただけよ。魔術師デッキって高コストが多いから事故ると悲惨なのよね」

 負け惜しみを言ってみますけど、仲良く敗退したってのは変わりませんからね。


 一方で覇王は善戦しているようだ。危なげなく勝ちを拾って、あれよというまに準決勝。伊達にいつもネトゲやってるわけじゃないんだな。

 それで、肝心な対戦相手は、

「え、嘘でしょ」

 思わず声をあげてしまった。偶然にしてはできすぎてるでしょ。


 覇王と迎え合わせに座ったのは、あのアホ毛の子。相変わらず自己主張激しく揺らしているから間違いない。

 これまで余裕で勝ち上がってきた覇王の顔色に焦燥が覗く。

「今度の相手は破戒帝ゼニオスさんか。面白い名前だね」

 相手の皮肉に答える余裕すらない。こわばりながらも、手札をしっかりと握りしめている。っていうか、破戒帝ゼニオスって二ックネームにしても凄まじすぎるな。


「覇王、大丈夫かい」

「優輝氏か。ううむ、今度の相手は慎重にいかんと勝てぬからな。きちんとイメージしているところだ」

 お前の勝手なイメージを押し付けるな。なんて冗談が通じる状況じゃなさそうだ。

「あのLって子と戦ったけど、けっこう強かったよ。もしかして、優勝候補なのかな」

「まさにそうだ。優輝氏は知らないか。ゲーム業界で話題の天才ゲーマーLを」

 なんだその、ノーコンティニューでゲームをクリアしそうな通り名は。


「様々なゲームの大会に参加しては優勝をもぎとっていく、希代のゲーマー。俺も一度ネトゲの大会で目にしたことがあったが、あいつの腕前は並外れていた。まさか、こんな小規模大会で対面できるとは夢にも思っていなかったぜ」

 この子がゲームの天才か。人は見かけによらないっていうか、よらなすぎるでしょ。


「あっれー。さっき戦ったマサッキーがいるじゃん。ゼニオス君の知り合いなんだ。もしかして、また初心者?」

「ふふ、俺は優輝とは違うぞ。お前がゲームの天才だろうと、打ち勝ってみせる」

「へえ、自信満々ってわけだ。じゃあ、本気出してもいいよね」

 Lがカードを引くと、遅れじと覇王も倣う。どっちも折り紙付きの実力者だ。一体どんなバトルになることやら。


 先行を取ったのはLだった。それだけで覇王は舌うちしている。Lは速攻デッキを使うから、先手を掴まされるだけでも不利になるのだろう。

「ぼくのターン。疾走する山猫を召還」

「さっそく出してきたか。俺は一ターン目はパスだ」

「じゃあ、遠慮なく攻めさせてもらうね。強靭なる子熊召還。この子は速攻能力は持ってないけど、2コストで攻撃力300のアタッカーだよ。そんで、山猫でダイレクトアタック」

「ライフ100などくれてやろう。俺のターン。ライフを更に100払い、2コストの堅牢たる悪魔召還」

「へえ、体力400のディフェンサーか。厄介だね」

 序盤から果敢に攻めるLと、防御カードを巧みに展開する覇王。まさに、一進一退の攻防が続けられていた。


 あれよという間に十ターン目を迎えた。覇王の残りライフは300。Lは900だ。おまけに、Lの場には二体のモンスターがいるのに対し、覇王のバトルゾーンは更地だ。

「ぼく相手に十ターンも持ちこたえるなんて、大したものだよ。でも、終わりにしちゃおっかな。疾走する山猫を召還。そして、出てきて、グレゴリアスドラゴン」

 来た! バトルゾーンにあるモンスターの数だけ強化されるLの切り札だ。おまけに、三体のモンスターが揃っているので、速攻能力を持っている。壁となるモンスターがいない覇王はもはや詰みだった。


「じゃあ、おしまいだね。グレゴリアスドラゴン、プレイヤーにダイレクトアタック」

 ビシリと指差し、ドラゴンがあぎとを開いて襲いかかる。善戦したけど、覇王もここで敗退か。


 いや、最後の最後で意地を見せた。ドラゴンの牙が到達する寸前、覇王は魔法カードを発動させたのだ。

「魔法カード邪神結界。ライフポイントを半分にし、このターン、プレイヤーへのダメージを無効化する」

「わお、悪あがきってやつ。仕方ないからターン終了だね」

 防御カードを使って延命には成功した。でも、どうやって逆転するつもりなんだろう。グレゴリアスドラゴンを倒したとしても、三体の小型モンスターが控えているわけだし。おまけに、覇王のライフは150。雑魚モンスター相手であっても被弾は許されない状況だ。


「俺のターン。フフフ、こんな土壇場で切り札を引くとは、まさに主人公補正ってやつだな」

「ええ~。ぼくが主人公だと思ったのに。悪魔デッキなんて、マリクとか獏良ぐらいしか使わないよ」

「悪魔が主人公の漫画もあるということを忘れるな」

 永井豪原作のアレですかね。でも、カードゲームは関係ないよね。

「まずは六コストで暴食王グラトニーを召還。グレゴリアスドラゴンを破壊し、攻撃力、体力ともに800へと昇華する」

「もう、グレゴリを倒すなんてひどいな。でも、山猫たちの攻撃は防げないもんね」

「それはどうかな。俺は残りの三コストを支払い、腐敗した突風を発動。こいつはバトルゾーンに出ているモンスターすべてに300のダメージを与える。お前のバトルゾーンに出ているモンスターの体力はすべて300以下。よって、体力800のグラトニーだけが生き残る」

 禍々しい風が吹きすさび、山猫にモグラ、野犬のモンスターを白骨化させる。いいぞ、形勢逆転だ。おまけに、次のターンまでグラトニーを生き延びさせれば覇王の勝ちとなる。


 なんで分かったかというと、覇王の手札をちらりと覗いたからだ。手札に残る魔法カード穢れた契約。これは好きなだけライフポイントを支払い、場のモンスターに加算することができる。残りライフの内100ポイントをグラトニーに加えれば、攻撃力は900となる。そのままダイレクトアタックを通せば逆転勝利ってわけだ。


 勝負の分かれ目となるLのターン。おそらく、最後の一手となるであろう。形勢逆転されて、天才ゲーマーはいかなる戦法を取るのであろうか。

「ぼくをここまで追い詰めるなんて。デュエウィザやってて初めてかもしれないな。じゃあ、君に敬意を払って、ぼくのもう一つの切り札を見せちゃおっかな」

「なんだと」

「本邦初公開かもね。八マナを支払って、大自然の女神を召還」

「しまった、そいつは……」

 覇王が絶句する。要所要所に花弁やツタを纏った見目麗しい女神。高コストであることも相まって、強力なモンスターであることは間違いない。


「この子は攻撃力、体力ともに400とステータスはそんなに高くない。けれども、これまでに倒されたみんなの力を得ることができるんだ。女神の特殊能力発動」

 大自然の女神が両手を広げる。すると、Lのライフカウンターが上昇していく。900だったライフが1000、1100、いや、もっと上がっている。一体どこまで回復するんだ。

「やられた。ここまで回復されては攻めきれん」

 覇王が落胆するのは尤もだ。Lのライフは1700。グラトニーの攻撃を二回通さないといけないうえに、大自然の女神がそのまま壁になっている。時間稼ぎと捉えればまだ望みはあるけど、相手が相手だけに雌雄が決したといっても過言ではない。

「驚いたでしょ。大自然の女神は倒されたモンスターの数だけライフを回復させることができる。八体のモンスターがいるから、800ポイント回復ってね」

 さっき、腐敗した突風で全体除去をしたのが裏目に出たというわけか。劣勢を逆に好機に変える。まさしく、一歩上をいくプレイイングだ。


 おまけに、Lは念には念を入れてきた。

「残ったマナで爆撃ネズミを召還。この子とバトルしたモンスターは強制的に破壊される。召還酔いで攻撃できないから君のターンだね」

 覇王に手順が回ってきたものの、山札のカードをめくるのが精いっぱいだった。ダメもとで攻撃しようものなら、ネズミにブロックされて相討ちにされてしまう。おまけに、引いたのは防御能力を持たない低級アタッカーのスケルトンソルジャーだった。


 肩を落とした覇王はデッキの上に手を置いた。

「降参だ。お前に負けるなら悔いはないさ」

 サレンダー宣告。勝ち抜いたLはブイサインを繰り出した。

「準決勝ともなると、骨のある相手が出てくるもんだね。でも、勝ちは勝ち。これであのカードに一歩近づけたってことで」

「あのカードを手に入れられなかったのは残念だが、天才ゲーマーと戦えただけで十分だ」

 互いに手を握り合う。二人の健闘を讃え、観客たちからも拍手が送られた。

堅牢たる悪魔の元ネタはシャドウバースの「糸蜘蛛の悪魔」

大自然の女神は同じくシャドウバースの「エルフクイーン」が元ネタです。

ガチのOTKエルフ組んでみたけどネクロに勝てないお。

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