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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第五話「優輝の苦悩! 逆襲のクロコダイルカルア!」
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凄惨たる狂騒曲(カプリッチオ)

 色々と屋台を回っているうちにフェスの開始時間を迎えた。チケットで指定されていたのはけっこう前の席。ただでさえ倍率高いのに、前列なんてプレミアものだぞ。あの占い師さん、よく引き当てることができたな。占いをやっているから運気を操作するぐらい造作もないってことかな。

「アマチュアバンドってよく分からないけど、アマチュアっていう冠がついているからそこまで大したことないんでしょ」

 開始する前から渚先輩は高を括っていた。演目を一覧しても、聞いたことがないグループ名が羅列しているからな。それでも学校の校庭以上の広さを誇る敷地を埋め尽くすってことは、よほど娯楽に飢えているってことだろう。この町、観光名所となるものは皆無だからな。


 クオリティには懐疑的だった渚先輩だったけど、いざ開幕すると熱気に後押しされて自然と盛り上がっていった。オリジナルの楽曲を発表するグループもいれば、馴染みのポップスをカバーするグループもいる。会場の隅まで響き渡る歌声に、つい体が上下してしまう。

 特に、華怜はいつの間にサイリウムを買ったのか、曲に合わせて振り回していた。時たま黄色い声援を送ってもいる。華怜って意外とミーハーな部分があるもんな。


 演目はつつがなく進んでいき、あっという間に最後のグループの演奏が終わろうとしていた。四時間ぐらいプログラムがあったけど、時間が過ぎるのはあっという間だったな。名残惜しいけど、最後まで楽しもう。

「さあ、本日のラストグループ。今年初参戦にして、今後が期待されている注目株の登場だ」

 司会のお兄さんが声を張り上げる。よいしょをしていることからして、余程大型の新人だろうな。どんな人たちが出てくるんだろう。


 割れんばかりの拍手を受け、五人のグループが登壇する。だが、メインボーカルの姿を目撃し、ボクは絶句した。華怜もまたサイリウムをだらしなく下げている。そんな、どうしてあいつが。

 髪を逆立て、顔はおしろいを施したように真っ白。これ見よがしな肩パットといい、あいつに間違いない。

「ギャッハーッ! てめえら、全員冥府に送ってやろうか!」

 ハウリングを起こさん勢いでマイクに向かって絶叫する。パフォーマンスと受け取られたか、すさまじい拍手が返される。

 ほかのメンバーも同じようにフェイスペイントを施している。こんな会場じゃなければ、完全に不審者集団だ。

「気合十分、ラストを飾るのにふさわしいぞ。では、DIE KAHLUAのみなさん、お願いします」

 紹介され、ベースたちが楽器を弾きならす。うん、グループ名が確信犯すぎるでしょ。


「華怜、あいつはまさか」

「嘘でしょ。どうして出場してるのよ」

「あのボーカルの人と知り合いなの。まったく、エリマキトカゲじゃないんだから、目立てばいいってもんじゃないのに」

「渚先輩、気を付けて下さい。あいつの正体は……」

 喉まで出かかっていた言葉はギターとドラムの爆音にかき消された。演奏が開始されたことで、会場内の声援も増幅していく。どうやら曲の前奏が始まってしまったようだ。


 デスメタルらしく、激しい打音が響き渡る。加えて、いきなり「ギャッハーッ!」というシャウトが入る。会場内のボルテージを引き上げるには十分だった。

「俺の歌を聞けーっ! 凄惨たる狂想曲せいさんたるカプリッチオ

 曲名だろうか。滅茶苦茶物騒だ。


「過酷溢れる世界に、救いなどないさ。ただ臓腑まき散らし 息絶えるだけ。

身の程知らずの愚か者 巣食うこの町。力無き者は 身を滅ぼせ」

 歌詞はひどいけど、メロディーはまともだな。普通に聞き入っちゃったし。

「闇の、力、それこそ偉大。信仰、捧げ、邪な神。

救い、求め、抗う者よ。我ら、悪に、敵いはしない」

 Bメロが終わり、ひときわ大きくギターが轟く。「Ah~!!」というシャウトで嫌が上でも気分は盛り立てられる。いよいよサビだ。


「勝利を求め、牙を突き刺せ。敬え崇め、信仰捧げ。

叩き潰せ、弱きものども。栄華のために、我らに続け」

 なんだかんだでまともな歌じゃないか。と、安堵するのはまだ早かった。

「殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!」

 エンドレスで「殺せ」を連呼している。最後の最後でネタ曲になっているじゃないか。しかも、観客たちが面白がってリピートしているし。しかも、二番の頭まで永遠と「殺せ」を連発するという熱の入れようだ。


 二番もAメロからサビまでは比較的まともだったけど、サビの直後にまたしても「殺せ」が連呼される。観客のほとんどが合いの手を入れるという熱の入れようだ。あいつの化けの皮を知っているだけに、素直に周りの雰囲気に乗っかることができない。渚先輩までもが感化されているというのがすごいな。


 そして、最後のサビが終わった後も「殺せ」は繰り返され、「ギャッハーッ!」というシャウトで締めくくられた。曲が終了すると同時に割れんばかりの拍手が送られる。おそらく、白けているのはボクと華怜だけだろう。あいつ、本当に何やってるんだよ。


「てめえら、のってるか」

「イエー!」

 マイクを引っ掴み、デスボイスで呼びかける。心なしか、清々しい表情をしていた。まさか、単純に歌いに来ただけか。呆れつつあったボクだけど、次の瞬間、気を引き締めざるを得なくなった。

「今日はてめえらを我らが教団に勧誘しに来たぜ」

 リーダー格の男が指を鳴らす。すると、ギター以外の三人の男が前に進み出た。同時に腕をクロスさせると、白いパーカーで頭を覆い、全身を隠すような白い修道服を纏った。顔面に浮かぶ朧げな光といい間違いない。

「バグカルア。どうして、こんなところに」

 さすがに確信犯的存在を前に、渚先輩も目を覚ましたようだ。最近のニュースでバグカルアについても取り扱われるようになっており、ダイカルアの下級戦闘員であることは知れ渡りつつある。突然の出来事に、会場内には動揺が広がっていった。

当作品初のキャラソンはまさかのあいつでした。

ジョジョ初のキャラソンがオインゴとボインゴだったからいいじゃん。

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