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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第四話「優輝の仲良し大作戦」
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服を選ぼう 渚のターン

 次は渚先輩のターンだ。すでに嫌な予感しかしないんだよな。だって、ファンシーというか、際どい衣装が並んでいる一角に連れてこられたんだもん。えっと、パーティーグッズとでもいうのかな。普段着としては購入しなそうな衣服がずらっと陳列されている。このショッピングモール、大抵のものを揃うけど、まさかキワモノまで扱っているとは。

 戸惑うボクをよそに、渚先輩は鼻歌混じりでコスチュームを選んでいる。フリフリの魔法少女衣装があったけど、買わなくても好きな時に着用できるんだよな。ボクにとってはありがた迷惑だけど。


「サキちゃんは無理に背伸びしなくても、素材を活かせば十分可愛くなるわよ」

「はっきりと可愛くなるって言いましたよね。可愛さは特に求めていないんですが」

「まあ、お姉さんに任せておきなさい。ジャンル開拓も必要ってね」

 任せておいたら覇王の趣味にコミットする方に開拓されそう。


 悩み抜いた末、なぜか頭には犬ミミのカチューシャを乗せられていた。もふもふの毛がついたグローブにブーツ。極めつけに尻尾までつけられている。

「なによ、これ」

 対面した華怜も絶句していた。どや顔されても困りますよ、先輩。

「私の渾身のコーディネイト。ワンちゃんよ」

 いや、コーディネイトというかコスプレですよね。コミケでもなけりゃ、こんな恰好で出歩けないよ。


 正直、また女装させられるかと危惧していたから、これで済んだのはありがたかった。でも、恥ずかしいことには変わりない。

「ううむ、案外似合うバね」

「どうしてあんた、ワンコの恰好なんて着こなしてんのよ」

 すごーい! ボクはワンコのコスプレを着こなすフレンズなんだね。褒められても全く嬉しくないのは何故だろう。


「似合っているってことは、勝負は私の勝ちね」

「いや、明らかにコスプレだから反則でしょ。それに、優輝が嫌がってるじゃない」

「でも、レンちゃんのは似合ってなかったし。サキちゃん、どっちが勝ちだと思う」

「引き分けになるんじゃないですか」

 正直、どうでもいいです。


 ふと、陳列されている動物の耳カチューシャの中に気になるものを見つけた。くたっと途中で曲がった長い耳。傍に置いてあるボンボンみたいな丸い尻尾。動物コスプレの定番中の定番だ。

「渚先輩。先輩だったらアレ似合いそうじゃないですか」

 遊び半分に提案してみた。いくら先輩でも乗せられるわけはないと思うけどな。


 でも、先輩はまじまじと凝視している。もしかして、興味あるのかな。裏付けるように、無言のまま例の耳を手に取る。そして、すんなりと頭に装着したのだ。

「案外いいんじゃない、これ」

 けっこうご満悦だった。先輩ってスタイルいいからマッチングしちゃうんだよな。白いうさ耳にボンボン尻尾。レオタードを身に着けていたら典型的なバニーガールになっていたところだ。覇王じゃないけど、心がぴょんぴょんしちゃいそう。


「いかがわしいお店で働いているお姉さんみたいよ」

「そんなことを言うのはこの口か」

「いひゃい、やっひゃふぁねぇ~」

「あんひゃもやっへるでひょ~は」

 あ~あ~。華怜と先輩がお互いに口をつまみあってるよ。事あるたびにぶつからないと気が済まないのか、この二人は。


 コーディネイト対決も引き分けで終了。と、いきたいところだったが、バンティーが唐突に妙なことを言いだした。

「優輝。俺っちもいい衣装を見つけたバ。着てくれないかバ」

 この時点で嫌な予感しかしない。でも、無碍に断るわけにもいかないしな。

「着るだけだからね。妙なことはやらせないでよ」

「大丈夫だバ。俺っちの見立てに間違いはないバ。君に絶対に似合うはずだバ」

 誇らしげに言うけど、逆にボクの不安が増していくんだよね。犬耳とかつけちゃっている手前、多少のキワモノじゃくじけないぞ。


 なんて、粋がったものの、バンティーの変態度合いは想像を超えていた。ないよ。これは絶対にないよ。

「どうだバ。俺っち渾身のコーディネイトだバ」

「却下」

 華怜と渚先輩も意見が一致している。当たり前だ。


 黒いボンテージに網タイツ。パピヨンマスクを着け、ナチス親衛隊の帽子をかぶり、鞭とろうそくを装備している。いくら動物耳のようなキワモノがあるからって、どうしてこんなのまで陳列してるんだよ。十八歳未満は絶対に行ってはいけないお店で働いているお姉さんの衣装だよね。

「素晴らしいバ。俺っちの見立てに狂いはないバ」

「狂いしかないって。これは絶対にダメだって」

「いいじゃないかバ。そうだ、華怜と渚も着てみるかバ。二人の方が似合いそう……」

 絶句したのは両脇から翼を掴まれたからだ。振りほどこうにも、万力の如くしっかり固定されてしまっているようだ。


 両サイドに位置しているのは目が笑っていない華怜と渚。うん、仕方ないよね。キワモノ中のキワモノを着せようとした君が悪い。

「ねえ、優輝。いい武器を持ってるならお仕置きを加えてやったら」

「本当はお姉さんが制裁を加えてあげたいところだけど、大人だからサキちゃんに譲ってあげるわ」

「じょ、冗談だろバ。優輝、君は野蛮なことはできないはずだバ。話せば分かるバ」

「ごめんね、バンティー。ボクだって、あまりにも理不尽なことに黙っていられる程仏じゃないんだ。でも、可愛そうだから一発だけだからね」

「やるのは確定なのかバ―ッ!!」

 天誅。もう、バンティーのせいで店員さんに「お客様、特殊なプレイはおやめください」って怒られたじゃないか。いっとくけど、ボクだって怒るときは怒るんだからね。

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