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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第四話「優輝の仲良し大作戦」
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服を選ぼう 華怜のターン

 次は華怜のリクエストでジャージの新調だ。ジャージに限らなくてもいいと思うよ。そんなこんなで女性用の衣服を売っているエリアに辿りつく。

 普段は通り過ぎるだけだから、まじまじと眺める機会なんてなかったな。女の性というか、二人は目を輝かせているし。


 独自に衣服を吟味している二人をよそに、ボクは暇だった。それに、どうしても視界に入っちゃうものがあるんだよ。色鮮やかに並ぶ、男が絶対に着用しない衣類の数々。凝視していると確実に変態さんと思われちゃう。そう、下着だ。

 半ば置いてけぼりにされているから、本当に目のやり場に困るんだよな。ボクも勝手に自分用の服を見てこようかしら。


 ふと、陳列されている黒の下着類に直面する。その中に、どうにも違和感があった。前にもあったよな、こんな瞬間。下着のようで下着でない。それは何かと尋ねたら。

「バンティーだバ」

 ですよね。この変態コウモリ、またパンツの中に紛れていたのか。


「バンティー、こんなところで何やってんの」

「君たちがそろって買い物していると知って放置するわけがないバ。こっそり後を付けていたバ」

「もしかして、本屋の時もいたの」

「エロ本売り場に潜んでいたバ」

 じゃあ分かる訳ないよね。中学生がそんなところに居ちゃいけません。


「変態コウモリじゃない。あんたも来てたの」

 華怜もバンティーを発見したようだ。今更だけど、コウモリがしゃべっているのを目撃されるのはまずいから、ひそひそ話をしている。

「こんなところまで湧き出てくるなんて。まるで夏の風物詩ね」

「人をゴキブリ扱いするなバ」

「やめてよ。その単語は聞きたくない」

 華怜が耳を塞いでしゃがみ込む。彼女にとって最悪の敵だもんな。


「みんな揃って買い物してるバか。もし、下着を選ぶなら俺っちが採寸してやるバ」

「結構よ」

 女性陣二人がハモった。やっぱり痴漢行為は許せないんだろうな。共通の敵、バンティーってわけか。

「つまらないバ。仕方ないから優輝の下着でも見繕ってやるバ」

「ろくでもないの選びそうだから遠慮しておきます」

 間違いなく男性用下着は選びそうにない。男の沽券として、パンティーとかブラジャーは絶対に着用しないからね。


 ただ、一連のやり取りから、渚先輩が意外な提案をしてきた。

「私たちだけで盛り上がってサキちゃん暇してるでしょ。なんなら、私たちがサキちゃんの服を選んであげよっか」

「そんな、悪いよ」

「いいじゃない、面白そうだし。言っておくけど、優輝と付き合いが長いのは私の方だからね。当然、私が選ぶ服の方が似合うわよ」

「どうかしらね。お姉さんの見立てに間違いはないわ。まあ、せいぜい頑張りなさい」

「面白いことになってきたバ。俺っちのファッションセンスに酔いしれるといいバ」

「ちょっと。みんなして盛り上がらないでよ」

 ダメだ。火花を飛ばしあって聞いちゃいない。ボク、了承した覚えないんだけどな。こうして、勝手に呉羽優輝着せ替え人形選手権が開催されてしまうのであった。誰が得するんだろ、この大会。


 まずは華怜のターン。変な服を着せられないか不安だったけど、連れてこられたのは順当に男性用の衣服が売られているエリアだった。少なくとも女装をさせられなくて済むというだけでもありがたい。最近、やたらとスカートを穿かされていたからな。

「あんたはなよなよしいから、あの生意気な先輩に弄られるのよ。だから、男らしくコーディネイトしてギャフンと言わせてやるわ」

 手に取っているのは高そうなジャケットとかパーカー。とてもじゃないが、中学生が手の出る品ではない。着るだけだからって躊躇がないんだろうな。

「華怜。いくら試着するだけとはいえ、あまり高いのはやめておこうよ。万が一弁償することになったらどうしよう」

「心配し過ぎよ、優輝は。ちょっと着るだけだから平気、平気」

 鼻歌混じりで服を吟味している。まさか、単純に高い服を着せれば勝てるって考えてるわけじゃないよね。


 数十分待たされた後、華怜がセレクトした衣服に着替える。こんなの、普段着たことないから緊張するな。大人の男性が嗜んでいそうなレザージャケットに長袖のポロシャツ。そして、クラシカルなジーパンという組み合わせだ。相当渋いけど、似合うのかな。

「とくと御覧なさい。私の自慢のコーディネイトよ」

 事前の打ち合わせに従い、ボクは片手を腰に当てて左足を前に出すモデルポーズを決めた。「ほ~」という感嘆の声は渚先輩か。もしかして、似合ってるのかな。


「サキちゃんって、こういう格好だと見違えるわよね。でも、若干着せられている感は否めないわ。で、コンセプトは」

「チョイ悪おやじよ」

 いたな。前に流行したけど、最近はめっきり聞かなくなった。もっと前に山姥ギャルとかいたらしいけど、彼女らは生存しているのだろうか。


「どうしても背伸びしている感じがするバね」

「そうそう。あと五年は早いってね」

 うう、あまり似合っていないってことか。組み合わせがダンディーなだけに複雑な気分。

「どうせ、あんたの趣味嗜好を押し付けたんでしょうけど、素材を見極めないと駄目よ」

「そうだバ。むしろ、君の方が似合いそうだバ」

「は!? 私!?」

 いやいや、バンティー、唐突になんてこと言い出すんだ。いくら華怜でも典型的なちょい悪親父ファッションが似合うはずがないだろ。


「うーん、試しに着てみようかしら」

 やる気なのか。しかも、ボクと似たような組み合わせの服をすでに手にしているし。止める間もなく、試着室に籠ってしまう。そこに入ったらもはや手出しできないじゃないか。発案者のバンティーはもちろん、渚先輩もわくわくしながら待っているし。はてさて、どうなることやら。


 数分後。カーテンが開かれ、ボクとそっくりな服装の華怜が現れた。サイズが合っていないのか、ややダボダボした印象を受ける。しかし、それを差し引いてもダンディな服装な男勝りな彼女の性質をいい感じに助長している。おまけに、サングラスがアクセントとなりより男らしさを際立たせる。まさか、着こなしてしまうとは。

「驚いたわね。っていうか、どうして似合うのよ」

「君、本当は男なんじゃないかバ」

「失礼ね。前にも言ったと思うけど、正真正銘の女よ」

 華怜が女なのは認めるよ。でも、思ったほど違和感がないのはどうしてだろうか。むしろ、ボクより着こなしているんじゃないかな。


 憤慨している華怜だけど、悲劇はふとした拍子に訪れた。背伸びして全くサイズが合っていない服を身に着けていたのが災いした。だぶついていた裾を踏みつけてしまったのか前のめりになる。簡単に転倒するほど華怜は鈍くはない。容易くバランスを整えるけど、本当の問題は別にあった。

 ズボンはベルトによってかろうじて止められていたのだが、肝心要のベルトが外れてしまったのだ。支えが無くなったズボンは万有引力の法則に従い地面へと失墜する。


 けたたましい悲鳴をあげる華怜。不幸中の幸いというか、上着もサイズが大きかったため、うまいこと下腹部を隠している。パンツは見えそうで見えないけど、相当恥ずかしい格好になっているのは変わりない。

「露出プレイとは、華怜もやるバね」

「感心してんじゃないわよ、この変態コウモリ!」

「とりあえず下を隠したら。あとサキちゃん。気になるのは分かるけど向こう向いてようね」

 うむ、女同士の結束が優先されて窘められたか。バンティート同類になるのは嫌なので、ボクは目を伏せる。やっぱり、背伸びしすぎるのはよくないな。女子中学生がチョイ悪おやじのファッションをしようというのが無理があるけど。


 華怜にとっては十分災難だったけど、今にして思えばこれはまだ序の口だったんだよな。まさか、この後とんでもない出来事に見舞われるなんて誰も予想していなかっただろう。

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