ハートキャッチ魔法少女作戦
話の流れの都合上、今回もかなり短めです。
次の日のことである。朝っぱらから覇王は詰問されていた。魔法少女について最も詳しそうなのは彼だから仕方ない。
「ふむ、ヴァルサファイアについて知りたいということだな」
「あんただったら正体掴んでるんじゃないの」
「残念ながらどこの誰かは知らん。それに、どちらかというとヴァルダイヤモンドたその正体が知りたいぞ」
ボクですけど。暴露したら失神するだろうな。言うつもりはないよ。
「だが、ある程度は推測できる。まず、出現しているのが五宝町近辺だ。つまり、この近くに住んでいる」
「それぐらいは私にだって分かるわよ」
「クッ、我が渾身の推理が空振りに終わっただと」
自信満々に発言したところ論破されちゃったもんね。
実際に会ったボクたちの方が手掛かりを得ていると思うな。凛とした佇まいから、年上の可能性が高いよね。上級生に知り合いっていうと……あの人か。気が進まないけど、後で聞いてみようかな。
「正体を推測することはできなかったが、まだ方法が尽きたわけではないぞ。ついに、温めてきた作戦を実行する時が来たようだな」
覇王は鼻息荒く胸を張る。お、相当自信満々のようだぞ。
「その名もハートキャッチ魔法少女作戦だ」
どこかで聞いたタイトルだな。
「ちなみに、俺はキュアサンシャインが一番好きだぞ」
「別にそんなこと聞いてないよ」
前に俺ガイルの戸塚彩花が好きって言ってたから納得はできるけど。覇王って本当に男か女かあいまいなキャラが好きだな。
アホすぎる作戦名に華怜は呆れ顔だった。
「なんなの、そのふざけた作戦は」
「説明しよう。ハートキャッチ魔法少女作戦とは、ダイカルアの怪物に襲われている振りをし、ヴァルサファイアが助けに来たところを捕獲して正体を暴くという画期的な手法だ」
「すごく古典的だと思うけど」
しかも、色々とツッコみどころがある。
「まず、どうやってヴァルサファイアを捕まえるの。相手は魔法を使えるから、そんじょそこらの方法じゃ無理じゃない」
「案ずるな、優輝氏。策は講じてある」
そう言うと、覇王はノートに巨大な籠を木の枝で支えている絵を描きだした。枝にはひもが括りつけられていて、ずっと物陰へと続いている。
「ヴァルサファイアが油断した隙に紐を引く。すると籠が降りてきてすっぽり捕獲できるという寸法だ」
「あんたね、鳩じゃないんだから捕まえられるわけないでしょ」
「華怜、その前に人間を捕獲できる程の籠なんて用意できないよ」
うん、覇王にまともな作戦を期待する方が間違いだった。
ただ、華怜は顎に手を当てて真剣に考えている。
「でもまあ、ダイカルアに襲われる振りをするってのは有効かもしれないわね。捕まえる方法は私がどうにかするわ。だから、あなたたち二人で演技してちょうだい」
「いいだろう。前にアマゾンで買ったアレが活用できる日が来るとはな。もろもろ準備があるから、今週末の休日に決行するってことでどうだ」
「構わないわ。待ってなさい、ヴァルサファイア。あんたの化けの皮を剥がしてやるんだから」
華怜と覇王って予期せぬタッグが結成されちゃったな。ろくでもないことになりそうだ。諦観していると、ポンと覇王が肩を叩いた。
「優輝氏。この作戦は君の力に懸っている。活躍を期待しているぞ」
「え、えっと、できる限り頑張るよ」
空返事しといたけど、本当にろくでもないことになりそうだよな。うう、週末が憂鬱になるなんて。




