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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第二話「幼馴染は魔法少女!? 情熱の戦士ヴァルルビィ」
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優輝の決意

 さすがにこんな凶器を持ちだされては華怜も及び腰になる他ない。

「ちょっと、チェンソーなんて反則でしょ」

「魔法に反則もクソもあるか。てめえも火炎放射をぶつけやがっただろ」

 火炎放射器VSチェンソーだったらそれなりに納得がいく。汚物が消毒されそうだけど。お互いに一撃必殺クラスの近距離攻撃を得意としているって、色々と危ない勝負だ。


 ルビィが武器を失っているのをいいことに、クロコダイルカルアが先制を仕掛ける。唸りをあげるチェンソーで迫るが、ルビィは右へ左へと受け流していく。しかし、クロコダイルカルアの武器捌きの方が数段勝っていた。そもそも、チェンソーを片手で軽々扱っている時点でおかしい。普通の人間なら両手でないとまともに使えないってどっかで聞いた覚えがある。


 舌打ちをすると、ルビィは「聖剣変化カリバーエクスチェンジャー」で真っ二つになった箒をディザスカリバーへと変換した。刀身は半分になっており、さながら短刀のようであった。チェンソーを相手にするには心もとないが無いよりはマシであった。器用に切っ先をアタッチメントにぶつけ、相手の攻撃をやりすごしている。

 けれども、その場しのぎの剣裁きがいつまでも続くはずもなかった。

「ギャッハーッ! いい加減くたばりな」

 奇声とともに、クロコダイルカルアはチェンソーの勢いを増長させる。ただでさえ短いディザスカリバーが粉々に砕かれてしまう。


 武器が消滅し、後には竹クズと化した箒が残る。「しまった」と口に出すが、もう遅かった。

 ルビィの胸を袈裟懸けにチェンソーが両断する。悲鳴をあげながらルビィは尻もちをつく。胸から真っ二つにされた惨殺死体が転がる。あまりにも最悪でグロテスクな光景を想像し、ボクは目を逸らす。


 そんな、華怜が。華怜が。ひどすぎる。これがダイカルアのやり方なのか。胸が締め付けられる程痛い。心臓が破裂するぐらい脈打っている。身体全体が拒否反応を示していて、立っていられなかった。どうしよう。華怜がいなくなるなんて。


 不安に焦燥に鎮痛にと、様々な負の感情に苛まれる。四つん這いになったまま立ち上がることができない。絶望の淵にまで追い込まれたけど、たった一言で一気に救われることとなった。

「こいつ、強すぎなんじゃないの」

 悔しがって吐き捨てる声。まさか。でも、この声を聞き違えるはずはない。


 ゆっくりと茂みから顔を出す。そして目撃したのはにわかには信じがたい光景だった。

 なんと、真っ二つにされたはずの華怜が健在だったのだ。魔法少女の装束は解除され、元の姿に戻っている。胸を押さえているものの、目立った外傷はない。嘘でしょ。チェンソーをまともに受けたのに。

「危ないところだったバ。魔法少女の緊急治癒能力が働かなかったら確実に死んでいたバ。でも、魔力の大部分を使い果たしてしまったからしばらく変身できないバ」

「命拾いしたってことか。まあ、俺様としてもお前のような逸材をむざむざ殺すような真似はしねえ。さあ、ダイカルアの力の偉大さが分かっただろう。大人しく入信するがいい。拒否したらどうなるかは分かるよな」

 これ見よがしにチェンソーを唸らす。ビルの天井をぶちぬいてきたりする輩たちだ。生身の人間をチェンソーで切り刻むぐらい躊躇なくやってきそうだ。


 どうしたらいいんだ。変身する。それしかないか。でも、あんなチェンソー野郎と戦うなんて。おまけに、華怜にあんな姿を披露する羽目になる。でも、やらなければ間違いなく華怜は殺される。

 意を決したボクは勢いよく茂みの中から飛び出した。


「あぁん、まだギャラリーがいたのか」

「か、か、か、華怜に手をだ、出すにゃ」

 思い切り噛んだ。だって、歯がかじかんでうまくしゃべれないんだもん。膝も笑っているし、見事なまでのへっぴり腰になっている。

「ギャッハーッ! 随分軟弱そうなやつじゃねえか。てめえなんざ、バグカルアにする価値もねえ。チェンソーの餌食になりたくなかったら、とっとと帰んな」

 ボクとて、大人しく従いたい。でも、それじゃダメなんだ。

「優輝、あんた、なんでそんなところにいるのよ。早く逃げなさい」

「嫌だ。むしろ華怜が逃げてよ」

「逃げられるわけないじゃない。こんなやつ、もう一度変身すれば。アーネストレリーズ! ミラクルジュエリールビィ!」

 華怜は変身の呪文を詠唱する。しかし、掲げた真紅の宝石は全く反応を示さなかった。心なしか輝きも薄れている気がする。


「だから、今の君じゃ無理だバ。変身するための魔力を蓄積するには丸一日以上かかるバ」

「そんな。明日まで変身できないってわけ」

 華怜に戦う力がないことは確定された。そうなると、もう残された手段は一つしかない。

「さあて、魔法少女もいねえことだし、さっさとこの女を拉致って入信の儀式を進めるとするか。久々に新しい司教が誕生するったぁ、胸が躍るぜ」

 勝ち誇ったようにチェンソーを肩に抱える。ボクは生唾を飲みこむと、ポケットからダイヤモンドを取り出した。


「ま、魔法少女ならここにもいるぞ」

「何!? てめぇ、そいつはまさか」

 クロコダイルカルアは絶句する。さながら黄門様の印籠のように映っただろう。

「優輝、あんたそれをどこで」

「俺っちが授けたんだバ。さあ、優輝、いや、ヴァルダイヤモンド。君の力でクロコダイルカルアを成敗するんだバ」

 ボクは頷くと、ダイヤモンドを高々と掲げた。

「アーネストレリーズ! ミラクルジュエリーダイヤモンド!」


 ダイヤモンドより放たれる煌々とした輝きに包まれ、ボクの制服が分解される。代わりにフリフリドレス状の魔法少女の装束が生成され、装着される。胸にはダイヤモンドのブローチが備わった。

 うぅ、二回目だけど慣れないな。こうなるまで0.05秒ってのが信じられない。おっと、いつまでも感嘆している場合じゃないか。

「清廉潔白。我、すべてを統べる戦士! ヴァルダイヤモンド!」

 決め台詞とともにぎこちなくポーズを決める。クロコダイルカルアは唖然としていた。あまり反応がないってのもむしろきつい。

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