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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第十一話「センチピードカルアを討伐せよ! 出撃マジカルロボ」
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センチピードカルアの最期

随分お待たせしてしまい申し訳ない

 すると、目が眩みそうな電撃が迸り、徐々に剣を象っていった。剣はマジカルロボの右手に収まり、構えたロボは怪物に向かって見栄を切る。

「集めた魔力を剣へと変換し、ロボの武器とする」

 エナジーソードってそう来たか。猛攻を続けていた怪物だけど、ソードを目の当たりにしてたじろぐ。ただ、剣そのものというか、剣が発している光に及び腰になっているきらいがある。なにせ、閃光でモニターが霞んでいるからだ。掴んでいられるマジカルロボの手もすごいと褒めておくべきか。


 そのまま斬りかかっても効果はありそうだが、トパーズは念には念を入れてきた。屈伸するや、マジカルロボは上空へと大きく飛び上がったのである。飛びすぎではないかとも思ったけど、いつの間にか背中からジェットストリームが噴出されていた。

 怪物を眼下に捉え、エナジーソードを頭の上で構える。怪物側もやられるだけに甘んじることなく、触手を伸ばして空中で絡め取ろうとしてくる。


「喰らえ」

 トパーズが簡潔に言い放つと、マジカルロボは剣を振り下ろしながら急降下していった。迎撃しようと無数の触手が伸ばされる。だが、落下速度を味方につけた斬撃の前では無意味。強靭さを誇っていた触手が切り払われていく。

 そして、頭部まで到達すると、勢いをそのままに甲冑をかち割った。顔面を真っ二つにされた時点で勝負は決まったようなものだが、マジカルロボの進撃は未だに止まらない。


 センチピードカルアの胴体をなぞるように落下を続けていき、その間、怪物の肉体を両断していく。奇しくも巨大化前と同様の最期だった。怪物も、よもや短時間で二度も一刀両断にされるとは思ってもみなかっただろう。

 やがて、センチピードカルアの尻尾の先まで到達すると、マジカルロボは剣を地面に突き刺して勢いを止める。怪物の肉体は粒子へと還元され、上空へと昇っていく。やったんだよな。振り向くと、怪物の装甲を剥がされ、人間形態となった闇道化師の姿が映った。彼の体もまた粒子へと還元されて天へと昇っていく。

「さすがですよ、魔法少女のおちびちゃんたち。しかし、ダイカルアの司教を二人も討伐されて、我々が黙っているとお思いですかね」

 敗北したはずなのに、浮かんでいた表情は愉悦だった。消えゆく化け物の姿をボクたちはただただ見送るのであった。


 ロボのコクピットから脱するや、巨大な機体が音もなく消滅していく。おそらく、トパーズの魔法の効力が消えたのだろう。後に残されたのは古びた校舎であった。

「優輝、よくやった。勝てたのはあなたのお陰」

 昴がハイタッチを求めてくる。だが、ボクは慌ててそっぽを向いた。不思議そうに首を傾げる昴だけど、ボクはどうしても直視することができない。うーん、指摘していいものやら。


 困り果てていると、蘭子が助け舟を出してくれた。昴の肩に手を置くと、そっと囁く。

「すばるん、すっぽんぽんだよ」

 指摘されて局部を隠してくれたおかげで、ようやくチラ見することができた。どうして昴の服が消滅しているのか。おそらく、ロボを作った魔法が彼女の限界突破ブレイクレリーズだったのだろう。チラ見とはいえ、幾度と視線を送っているとさすがに彼女も感付いたのか、

「むぅ、見られると恥ずかしい」

 昴はよりしっかりと体を抱きしめた。このまますっぽんぽんでいられると目に毒なので、ルビィの魔法でスパッツとシャツを出してもらった。彼女の魔法って地味に役に立つのな。


 闇道化師を倒したことで、改めて石にされた少年少女たちと向き合う。

「ねぇ、マサッキー。早く兄貴を治してよ」

 蘭子にせっつかれ、ボクは祈るように手を組み合わせる。さっき破壊光線を撃ったこともあって、残された魔力は僅かだ。おそらく、彼らを治療した途端に変身が解かれるだろう。なので、既に変身解除した華怜と渚先輩にバックアップをお願いする。

「ありがたき祝福よ! 彼の者たちに降り注げ! 全治全能オーラルリカルバリア

 光を浴びるや、硬直したままだった彼らの腕や膝がピクリと動き出す。治せると分かっていても、回復していく様を目の当たりにするのは心地よい。とはいえ、ゆっくりと感慨している場合ではなさそうだ。


 少年たちが復活していくのに反比例し、ボクの魔法少女装束が崩壊していく。ここで裸を晒すのは色々な意味でまずい。なので、すかさず華怜と渚先輩がボクの前に立ちふさがる。そして、少年たちの視線を防ぐようにしたまま、校舎脇へと退散していく。後は、予めルビィの魔法で作ったスパッツを着用するだけだ。女子の体操服を着るのにはいささか抵抗があるけど、真っ裸でいるよりはマシだからな。


 変身は解除されたが、どうにか公然わいせつ罪は回避できた。みんなの元に戻ると、感動の再会劇が開幕されていた。

「蘭子、蘭子なのか」

「兄貴!」

 当惑している兄に蘭子は飛びかかるように抱き付く。瞳からは小粒の雫が滴り落ちていた。

 もちろん、他のみんなも軒並み元に戻っている。いきなり訳の分からない場所に運ばれて困惑しているようだが、まずは復活できたことに歓喜するといった呈だ。


「どうしたんだろうな、俺。確か変なピエロにバトルを挑まれて、手も足も出せずに負けたというところまでは覚えてるんだけど」

 華怜たちの例からも窺えるけど、石化されると思考能力まで停止させられるみたいだね。諸悪の根源を絶ったから、心にとどめておくことでもないけど。


 喜びに沸く兄妹だったけど、ふと疑問に思ったのか、兄貴がおもむろに蘭子の服装を指差した。

「ところで、その格好流行しているのか。お前らお揃いじゃないか」

 成り行き上仕方なかったとはいえ、三人がシャツにスパッツという体育の授業みたいな姿だもんな。これでゼッケンが付いていれば反論のしようがなかったけど、そこまで拘る必要性はない。


 苦笑しつつも蘭子は「部活動のユニフォーム」とお茶を濁していた。「ユニフォームにしてはダサい」と酷評されたが、緊急退避用の服装だし仕方ないだろう。

 事件も解決したことだし、帰るとするか。そう思い、踵を返した時であった。

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