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介護日誌〜僕の愉快な仲間達  作者: めんとうふ
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第3話 boys be ambitious ~少年よ大志を抱け


無断欠勤した皆藤には、少し話掛け辛かったが、意を決して話しかける事にした。背中をこちらに向けて座っていたので、背中を軽く叩きながら話しかけた。


「皆藤~熱は下がったのか~?」


僕なりに気を使って優しく語りかけた。皆藤は苦笑いをしている。あまり触れて欲しくないらしい、皆藤の顔がそう語りかけてきた。

皆藤には一時しのぎだが、洗濯物干しを手伝って貰った。簡単だし、余りの人と接触しなくて済むからだ。



昼食時、皆藤の表情は相変わらず死んでいる。仕事に対する嫌悪感が顔から溢れ出していた。僕は少し皆藤と距離を置いて座った。皆藤には違う先輩が話題を振り、気を紛らわしていた。


うちの会社の人はみんな優しくて面倒見がいい。僕も何度助けられた事か‥とまぁ時間だけは刻一刻と経っていた。


「先輩、後でちょっといいですか?」


皆藤が通りすがりに小声で話しかけてきた。僕はジェスチャーでOKサインを出した。





ある程度、仕事が落ち着いた頃‥僕は皆藤を人が居ない部屋に呼び出し話を聞いた。


「僕、仕事辞めたいんです‥20時以降で帰ってたらラップの練習出来ないんです。」


皆藤は申し訳なさそうに口を開いた。どうやら残業が嫌だったらしい。20時に仕事が終わっても、ラップの練習は幾らでも出来るだろうと内心は思ったがここはグッと堪える。


「それなら辞めますってちゃんと一ヶ月前に伝えて辞めないと‥面接の時にちゃんと説明をされたでしょ?別にラッパーになりたいって夢は応援するけど、人に迷惑はかけちゃいけないよ。」


皆藤に正論をぶつけまくると表情が少し暗くなったが、構わずに続ける。


「ラッパーとしての実績をちゃんと伝えないと、叶わぬ夢を追いかけてる馬鹿だと思われるよ?ちゃんと大会で優勝してる県No. 1のラッパーですとか言わないと‥それに現実問題としてラッパーとして食べていける人なんて一握りだし、副職としてラッパーするなら親も応援してくれるだろうに‥」


「わかってるんですけど‥自分は介護の仕事は向いてないんです。」


福祉課の高校出てて何を言ってるんだコイツは口から出そうになったが、また僕は堪える。


「じゃあ、それを理事長にちゃんと伝えないといけないよ?」


「朝、言ったんですけど言いくるめられて‥」


「言いくるめられって事は意志が弱いって事じゃないの?」


「っぐ‥僕はそういうのが苦手で‥」


これ以上、正論をぶつけても無駄だと思った僕は自慢のラップをお見舞いした。


「俺は社会の檻には捕らわれねぇ、デカくなって世界に羽ばたく。これが皆藤の心境でしょ?」


「先輩、ラップ上手いですね!まさにその通りですよ」


皆藤の顔はやっと綻び笑顔が見えた。僕は皆藤が仕事を辞めるのを応援した。嫌々仕事をされるのは嫌だし、なにより好きな仕事をして欲しいからだ。


そして、この日を境に皆藤の姿を見る事はなかった。





社会の決められたルールを守る社会人。高校を卒業し就職したら、それはもう立派な社会人です。

夢を持って仕事をするのは理想的です。夢に向かって仕事をするのと夢も何もない状態で仕事をするのでは、天と地の程の差があります。その差は何か?気力などの精神面です。


それぞれ些細な夢を持っているはずです。それは生きる希望で、一度きりの人生で叶えないといけない試練です。


仕事をするために生きるのではなく、生きるために仕事をするのです。実際、夢を追っている人は輝いているし応援したくなります。



○著者は夢はあるが、社畜の模様。

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