プロローグ
持ち物よし、鞄よし、制服よし、これで完璧のはず。
「誰もいないけど……い、いってきます!」
扉を締め、鍵をかける。
そして、いよいよ高校生活はじめの1歩を……
……べしゃっ。
記念すべきはじめの1歩で転倒するのも、なんだか自分らしく思いつつ、立ち上がって、幼馴染の待つ方へ駆け出した。
「はるはる、おはよーっ!」
「おはよう、玲音」
朝から元気にぴょんぴょんと跳ねる、幼馴染の水無月玲音に挨拶を返す。
ちなみにはるはる、とは僕、桜井遥の事である。
このあだ名で僕を呼ぶ人は、彼女ともう2人の幼馴染だけだ。
「はるはる、制服似合ってる!超可愛いよ!これは私がはるはるを悪い男から守らなきゃだねっ」
「ありがとう、玲音。でも玲音の方が絶対可愛いからね?」
「またまたぁ、謙遜しちゃって」
……と言っているけど、本当に彼女は可愛い。
さらっさらで綺麗な水色の髪を揺らして笑う彼女は、まさに「天使」と呼ぶのに相応しかった。
「ほ、ほら、早くしないと入学式始まっちゃうよ?行こう」
「えぇっ、もうそんな時間なの!?行こう、はるはる、ダッシュだ!」
話を逸らしたかっただけなんだけれど、そんな意図にも気付かなかった彼女は、私の手を握って走り出す。
にしても玲音……足、遅いよね、本当。