第1話
僕、中学2年の水瀬イヅル(みなせ いずる)は空気感染する謎の病気から逃れるために学区単位での避難のため山奥のキャンプ地に来ていた。
キャンプ地にはテントを張って政府による食料支援でなんとか生活していた。
しかしそんなある日異変は起こった。
それはもう雨の降りそうなくらい曇っていた日だった。
担任の先生の様子が明らかに変だった。
「先生、顔色がとても悪いですが何があったんですか?」
「だ、大丈夫だ...少しテントで休んでいるからお前たちは入ってくるなよ...」
そういいながらテントの中に入っていく先生は携帯を出しどこかに連絡を取るように見えた。
明らかに大丈夫じゃないと感じた僕はテントの外で立ち聞きすることにした。
「...はい.......そ......すか..........わかりま..........は内密に....」
ぼそぼそと聞き取れない部分が多いがおそらく感染したのかあるいはよくないことが起きているのだろう。
皆には黙っておいた方がよさそうだな...そう思ったその時
「うがががが...うおぉぉぉぉ....」
と先生の叫び声が聞こえたかと思うと体から機械のような植物のようななんとも言えない触手が伸びてきた。
明らかに人ではなくなっている。やばい、そう思った瞬間体は動いていた。近くにあったテントを支えるための釘を引き抜き先生"だった"ナニカの頭部に向かって全力で投擲する。
すると血を吹き上げながら動きを止めた。
なんとかなった、と安心していたところ近くから悲鳴の様な声が聞こえる。
「やべぇよやべぇよ...」
そこには唖然とし座り込んでいるモブAがいた。
「みんな!ここから移動しよう!ここはもうダメだ!」
まずいと思ったが時すでに遅し、モブAは取り乱して大声で叫んでいた。
これはキャンプ地にいる皆に聞こえてしまっただろう。
急いで落ち着かせに行かないと...
「移動するって言ったって山奥だぞ!下手に動くと遭難するぞ!」
「そんなこといったってここにいたら俺たちも感染するだろ!」
『そうだそうだ!』
戻ってみると親友の水上主水が皆を留まらせようとしていたがあまり効果がないようだ。
移動することを前提にした案を出せば落ち着くかもしれない。
思いついたら早速実行、
「皆で固まって移動しよう。ただ、道を探すのと安全確保のために俺と主水が先頭を行かせてもらう。文句はないな?」
...特に反論はないようだ。
僕たちは素早く隊列を作り移動を開始した。
太陽をみておおよそ南であるだろう方角へ進んでいく。
およそ5分といったところだろうか、歩いていると車道が見えてきた。
「僕と主水で先に行って様子を見てくる。少し進んで何もなければ呼びに戻ってくるよ。」
と言い放ち僕と主水は走り出した。
走り出してすぐに違和感があった。車道を車が走っているのだ。なぜ違和感を感じるかって?そりゃ避難先にされるぐらい人がいない山の中にある車道なのに車が走っていたら誰でも違和感を感じるだろう。
先を走っている主水が何か見つけた様で速度を落とした。
「向こうから何かこっちに走ってくるぞ。ぱっと見人間じゃない。引き返そう。」
言い終わると同時に主水は走って来た道を先ほどより早い速度で走り出す。
自分もUターンしながら主水が見ていた方向をよく見ると先ほど感染した先生の様なナニカが走って来ているのが見える。
走って来ているナニカの速度は尋常じゃない様でゆるりゆるりと僕らとの距離を縮めていく。
なのであえて主水より少し遅めに走って引き付けることにする。
「主水!先に行って皆を後退させろ!あいつは僕がなんとかする!」
「わかった!死ぬんじゃないぞ!」
そう言っているうちにあと10メートルほどの距離になる。
このままでは捕まってしまう、そう思い車道を超え、狭い通路のある方へ走る。
後ろ側で車の転倒する音が聞こえるが今はそんなことを気にしている場合じゃない。
通路に入ると運良く鉄パイプが落ちており素早く見をかがめ拾い上げる。
ナニカが通路に入り、もう少しで触れられそうな距離に入った瞬間、僕は行き止まりの壁を蹴りナニカの上を通って後ろに着地すると同時に鉄パイプを頭に叩き込む。
はっきりとした手応えを感じ素早く距離を取る。
ナニカはゆっくりと倒れこみ動きを止めた。
一安心、そう思って汗を拭いた時に小さな生物が通路の入り口からこちらに向かってくるのが見える。
まるで小さなナニカだ。
小さなナニカ達は僕の周りをジリジリと囲む様に移動する。
このままではまずい、そう思った時頭に激痛が走る。消耗した体に力が入らなくなり、視界はゆっくりと暗転する...