7、光
「総司!今から近所の子達と鬼ごっこやるんだ!混ざれ!!」
「本当ですか!?わぁ、鬼ごっこなんていつ以来でしょう?」
子供に混じって、明らかに大きい二人。
しかし、違和感がないほどに幼い笑顔を振りまいている二人は、沖田と龍也だった
子供相手に本気で逃げて、その度に小賢しい手を使ってくる子供達の攻撃を精一杯かわす。
子供がそのまま大人になった、というよりは、図体の大きい子供といった方が適切であるほどに、二人は子供じみていた。
「龍也兄ちゃん、つーかまーえた!」
「あ、チクショウ!」
「龍也、あんまり汚い言葉を教えちゃ駄目ですよー!」
「全速力で逃げながら言うなよ!」
薄曇りの空の下だった。
あまり明るいとは言いがたい壬生寺の境内。
鬼ごっこ、色鬼、石蹴り。
時間も忘れ、騒ぎ遊び走り回った。
そのうちにぽつ、ぽつ、と沖田の頬に水滴がかかった。
「わ、皆さーん!降ってきましたよー!」
「皆避難だ!そこの屋根の下まで走れー!」
雨が降ってきても楽しそうに、笑いながら走る。
全員が屋根の下に入った瞬間、ざぁざぁと凄まじい雨が降り出した。
「おぉ、早く避難してよかったな」
「それより、二人とも足はえーよー」
「はっはっは。お前らも精進しろ」
「龍也は大人げなさすぎですよ」
「俺を見捨てて全速力で逃げやがったくせに」
にしてもなー、と龍也は呟く。
空を見上げ、ため息を一つ。
「もっと天気が良ければよかったんだけどな」
「きっと通り雨ですよ。もしかしたら見れるかも……」
「総司兄ちゃん。何が見えるのー?」
「お楽しみです。もう少し待っていてください」
皆で雨が降る空を見上げる。
しばらくして、雨が上がる兆しが見えた。
雨音が静かになり、雲がわれる。
雲間から光が射し込み、照らされた水滴がキラキラと輝く。
「……ほら、見えますか?」
「あ……虹だ!」
沖田が指差した先には、見事な虹がかかっていた。
塗れた土の香り、潤った空気、雨上がりの空。
素晴しい情景は、皆を感嘆させ、虹の架け橋は俗世から身を隠すように、ふっと消えた。
「あーあ。消えちゃった」
「少ししか見ることができないから、素晴しいと思えるんですよ」
「……よし、お前ら!鬼ごっこ再開だ!」
そう言って駆け出す龍也の後に、皆は続いた。
その顔には、光りを受けた雫より輝く笑顔が浮かんでいた。