無関心が呼ぶ僕の物語。
体験者:AA
今、崖に立っている。
雪吹雪と荒波が降りて来いよと降りろよとうるさくてたまらない。
僕は名のない小さな花。
そして、僕を温かく守っているのは横たわる一匹の犬。
世界の違う僕らはなんも思わない無関心な関係。
よそ者だから関係のない存在。
だからなのか、犬の気持ちが知りたくてつい乗り移ってみた。
僕の名前は犬のポチ。
飼い主のおじさんは薪ストーブの近くに寄せて暖めてくれる。
おじいさんはたくさんのにおいがする。
臭いにおいもも甘いにおいもたくさん混ざっている。
おじいさんは86歳の高年齢。
僕はおじいさんの手が大好きだ。
たくさんのにおいがして大きな手で包んでくれる。
でも、おじいさんは冷たくなってどこかへ運ばれてしまった。
連れて行くのはおじいさんと少し同じにおい。
なぜか、おじいさんに二度と会うことが出来ない気がしてずっとついて行くとおじいさんは黒い扉へいったっきりやはり戻ってこなかった。
すると、同じにおいの人が僕を車に乗せて、僕の知らない地に置いていった。
僕は、叫び続けた。
だけど、誰も来なかった。
僕はとうとう疲れて寝てしまった。
かすかに見える猫。
のんびりと歩く猫。
世界の違う僕らはなんも思わない無関心な関係。
よそ者だから関係のない存在。
だからなのか、猫の気持ちが知りたくてつい乗り移ってみた。
僕の名前は猫太郎。
でも、男の子から「コロ」と呼ばれている。
僕は捨て猫である。
お母さんを知らない猫である。
のんびり歩いていると小さな家に着いた。
すると、男の子は僕にミルクをくれる。
小さな手で撫でてくれる。
でも、指をなめると血の味しかしない。
男の子は痩せ細っていた。
青ざめた顔をしていた。
この子は病気なんだと分かった。
でも、僕は歯を立たないように指をなめる。
男の子が笑うから。
僕はうれしいのだ。
「コロ・・」
僕は返事をする。
髪のない彼、残り少ない精気、周りにたくさんものがあることに驚いたが僕は返事をした。
男の子の膝の上は安心する。
優しい手つきに癒される。
でも、彼は悲しそうな顔をする。
いくら舐めても笑顔にはならない。
そして、彼は泣きながら唇の両端を上げた。
「なんて、僕は不幸なんだろう。・・コロは知っているのかな?・・・」
しっているよ。
なんて、思ってること男の子は知らないのだろう。
胸が張り裂けそうになる。
男の子はそういって僕の前から消えていったんだ。
僕は白黒の暗幕の下でずっと君が帰ってくることを信じていた。
目の前を通る男の人。
世界の違う僕らはなんも思わない無関心な関係。
よそ者だから関係のない存在。
だからなのか、人の気持ちが知りたくてつい乗り移ってみた。
僕は夫である。
そして、白いベットに横たわり笑うのは僕の妻。
「おかえり。」
病院がいつの間にか我が家のようになって言ったのはつい1年前。
妻に病気が見つかり余命1年半。
そして、彼女の命は後、半年とされる。
でも、これが元気に見えてたまらない。
紫の唇に少し驚いてしまう自分がいるが、指輪が緩いことに気づいたが僕はいつもどおりに接する。
でも、最近多い
「ありがとうね。」
という当たり前の言葉についつい反応してしまう。
さよならに聞こえてしまって辛くなる。
妻にりんごを剥く。
下手な剥き方に君は笑わなかった。
視点の合わない不安定な身体。
いつの間にか、妻の傍から遠ざけられ外から見守るようになっている。
そして、妻に触れることなく僕はもう会えないことを知った。
サヨナラもいえずに
愛してるもいえずに
僕はひとつ長い人生を過ごしてしまう。
家から見つかった一つのDVD。
中には僕宛の映像があった。
テレビ画面に映るのは若きころの妻だった。
心が震えた。
動かない足を手だけで近くに行きそっと妻の顔をなでる。
変わらないものがそこにあった。
愛し合った時間があった。
寒さを感じていたこの冬の出来事に、僕は暖かさを感じた。
妻よ。僕は離れていても、傍にこの心は存在。
そして、僕は外にいた、女の子を見つめた。
いや、20歳はなるだろうと言う小さな白い子を。
死に際。
世界観の違う僕らはなんも思わない無関心な関係。
よそ者だから関係のない存在。
だからなのか、その子の気持ちが知りたくてつい乗り移ってみた。
私は一人の人間。1つの生き物。
父も母も誰もが私の大切な存在だった。
なのに、自然の出来事に逆らえず、運命を変えれず、跡形もなく消えた。
私はこの白い雪を見ながら、思うのだ。
儚いと。脆いと。
なのに人はがんばれと言う。
なにもないのに。
ただただ、かんばれという。
その先に何があるのだと尋ねれば、光と答え、奇跡が起きると。
私にはそんな言葉が信じられなかった。
だって大切な存在こそが『光』であり『奇跡』と呼べるのだから。
私は幸せ者だった。
当たり前にいたと言うことが今の私にはとても辛い。
私は父が大好きだ。
私は母が大好きだ。
友達も、生まれ育ったふるさとも大好きなのだ。
がんばれと言う言葉が辛い。
もう疲れたのに・・。
横たわると、
小さなフンを見つけた。
世界の違う私たちはなんも思わない無関心な関係。
よそ者だから関係のない存在。
だからなのか、フンの気持ちが知りたくてつい乗り移ってみた。
僕の名前はフン。
みんなから「汚い」とか「なんでいるの」とか言われてきた。
だから僕は辛かった。
なんで僕は生まれたんだろう?
そんな簡単で難しい疑問を持った。
みんなのように綺麗に生きたい。
お花さんや蝶さんはとても綺麗だ。
なのに僕は醜い。存在価値のないもの。
あぁ、なんで僕は存在いるんだろう。
僕は土にかえった。
そうしたら僕は隣にあった小さなお花さんの肥料になった。
そう、僕はお花さんを元気にしたのだ。
よかった。
僕でも、役に立っているんだな。
僕はお花さんの一部になった。
今、崖に立っている。
雪吹雪と荒波が降りて来いよと降りろよとうるさくてたまらない。
僕は名のない小さな花。
そして、僕を温かく守っているのは横たわる一匹の犬。
世界の違う僕らはなんも思わない無関心な関係。
よそ者だから関係のない存在。
だからなのか、犬の気持ちが知りたくてつい乗り移りたくなった。
でも、本当にそんなことをしていいのだろうか?
僕は無関心なんかじゃない。
例え、世界が違っても僕は関心を持った。
そして、関わる事によって関係のある存在になったのだ。
あぁ、そうだ。
僕も君もみんなも全てのものが。
大切で必要なんだ。
僕は生きていた。
僕は、天国と言うところへ入った。
無関心は関心へと変わった。