「青い石の道」
ある日の夕暮れ。僕はあの道を選んで、帰ろうとした。家へは遠回りだが、お気に入りのあの道を。
「ねえ」
道に足を向けた時、呼び止められた。そこには、僕が好きな女の子がいた。なんて幸運なんだ!
ところが、彼女は不思議なことを言った。
「そっちの道は大丈夫?」
「えっ」
僕は口をぽかんと開けてしまった。どういう意味なんだ。
女の子は何か言いかけたが、
「ううん。なんでもないの。じゃあね」
と言うと、行ってしまった。僕はその影が街の角に消えるまで、突っ立っていた。好きな子から初めて掛けられた言葉は、よく分からなかった。
なんだろう。
へんに高鳴る胸を無視しようと、わざと大またで歩き始めた。
僕はこの道へ来ると、石畳にはめ込まれた青い小石の上を渡って帰る。その夜空のような青を足の裏で確かめながら歩くと、疲れたからだが軽くなる気がするのだ。
「気をつけて」
突然、誰かに声を掛けられた。女の子が来たのかと振り返ったが、誰もいない。代わりに、山の向こうに太陽が隠れていくのが見えた。
その時。
足元の青い石がカタタタッと音を立てた。今にも空へ飛び出さんとばかりに、地面の間で揺れている。
カタタタタ、タタタッ。その石に触れようとした瞬間。石はいくつもの光の筋を放ち、まぶしいほどに輝き始めた。目を開くと、すべての青い石が光っていた。いや、すべてではない。ある道を示す石だけが、輝いている。丘の上へと続いている道だ。その石たちは、まるで僕を誘っているみたいだ。
僕はさっき以上に胸が高鳴るのを感じ、走り出していた。
光る石たちの照らす先に何があるというのか。走り出してまもなく、強い風が吹き、次第に嵐となった。それでも僕の足は止まらない。むしろ加速してゆく。なぜか豪雨の中でも、光る石ははっきりと見つけ出すことができた。僕の目の前の風景が、チカッと妖しく点滅した。
いけない!
止まろうとしたが、もう遅かった。
バーーーン!
という轟音と共に、視界が真っ暗になった。
次の瞬間、僕は信じられないところにいた。
そこは、宇宙だった。
いつも見上げていた、まぎれもない夜空だった。
「だから気をつけてって言ったでしょ」
振り返ると、地球が笑っていた。
僕は星になっていた。追いかけていた石のように、青いあおい星に。
この話はごく単純です。だけど、こんな不思議が、僕たちの道に密んでいるのではないでしょうか。