君は
君は歩き出した。
息を吐けば白い煙となって夜空に溶ける。星を数えてみれば約十数個あった。
道路を走る車は、光の目ん玉を君に向けては走り去っていく。透明なビニール傘を持つ手が冷たく、右手左手へと忙しく傘の柄を渡しては、あまった手をすかさずポケットへ突っ込む。
君は少し、怯えているようだった。
水溜まりに映る、ネオン。
ミドリ、アカ、キイロと、何処からか放たれた光の色がそこらじゅうにあった。その出どころを探して辺りを見回す。
ガソリンスタンド、高い街灯、雨、店先とその看板、車のライト、家の窓とマンションのガラス、時々通る自転車やバイク、そして信号機。
立ち止まり、君は耳を澄ます。
水飛沫の上がる音、エンジン音、傘にあたる雨、靴が鳴らすピチャピチャという音、それから人の音。
君と同じく傘を挿す制服姿の女学生二人とすれ違う。何か口ずさみ鼻歌めいたものを残してゆくが、そのメロディーがやけに軽快さをもっていて君は少し安心感を覚える。
君は孤独だった。
早朝にコンビニへ向かう。
まだ明けてない空の蒼さは君を問いかける様にある。家から一番近いコンビニへは遊歩道を通って行く。この道は君が何度も歩き慣れた筈で、しかし歩く度に違った面を見せた。春、夏、秋、冬と、大きく姿を変えるものではなくとも容易に違ってくる。不安や喜び、期待や不満、虚しさや充実感、優しさや辛さ、迷いや思い遣り、弱さと強さ。
君は繊細だった。
コンビニで入り用の品を買う。
いつも決まったものしか買わないので勘定も不要だった。千円札一枚を置いてお釣りを貰う。店員もまた顔見知りとなって変な愛着まで出てくる。
コンビニを出ようとすると、年配の男性が朝刊を待ってましたとばかりに勢いよく表紙を眺める。君はその様を不思議がって表へ出た。
コンビニの袋を馬鹿みたいに揺らして遊んで帰る。
君は子供と大人の両方をもっていた。




