表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

現在(2)

飲食店でのジローとユウコ。


そして電話、


そして…

 松岡が亡くなった?その言葉を聞いた後、静香は風の噂だけどね、そう念を押すと彼女は、


「2人とも仲良くね!お似合いよ」

そう言い残し、ジローとユウコの前から去っていった。





「……」


ジローは思わぬ不意打ち言葉が出ない。静香の一言はジローを黙らせるには十分だった。


「ジローくん?大丈夫」

ユウコがジローの顔を覗きこんだ。


「…ああ、ご飯どこいこうか?」


「大丈夫なの?」



「平気だよ」



ジローは言った。


「ご飯どこで食べようか?なんか俺ガッツリ食べたいなあ~」



「…そうだね~お腹減ったね」


「ユウコちゃん…実は焼き肉食べたいんだけど?臭いうつるかもしれないけどいい?」

ジローは控えめに言った。



「フフ、いいよ行こう」

ユウコは微笑んだ。2人は歩き出した。





 焼き肉か…松岡さんが好きだった。焼き肉といえば堤、なんとなくだが、お店の席で待ちながらジローは彼に電話をかけてみた。ユウコは向かいでチョコンとおとなしく待っている。



『もしもし~』

ダルそうな声が聞こえてきた。


「おう!今ナニしてんだ」


杏子アンズの家だ』


「そうか」


 杏子はジローと同じサークルで、堤の彼女。ショートカットのまあなんと言うか胸が大きい、そしてそれを武器にしているのか、確信犯なのか、それを強調した格好をいつもしている。いつもジローは出会うとドキリとしてしまう。


『なんだ?どこ遊びにでも行くか?』


堤が少し期待を込めた声で言った。


「いやちょっと聞きたいことがあってな」


『なんだよ急に~杏子は俺の彼女だよ』


堤は言う。


「いや別にそれはいいんだけどさ…」


電話の音の後ろから、何々?と杏子の声がした。


『ああ』



「松岡さんって今どうしてるんだ?」


『はあ?何行ってんだよ』

呆れた感じで堤が行った。


「いやさ、今ユウコと焼き肉屋にいるんだけど、そしたら松岡さんのこと思い出してさ~どうしてるっけ?」

ユウコが箸と皿を自分の前に置いてくれた。ジローはすまないという仕草をする。



『う~んそういわれれば…大手の企業に就職したんじゃないかな確か?』

堤ははっきりとは答えられない。


「そうか?亡くなったってことはありえる?」

恐る恐る聞いてみる。


『そうなのか?!』

堤が動揺した。


「だよなあ~驚くよな~気にするな噂だ」



『なんなんだよ~一体~…うわっ?』


堤の声がそこで途切れた。


『もしもしジロー君かしら?』

杏子の声だ。


「あれ?杏子」


『そうよ。松岡さんのことだけど…』

威勢の良い声だ。


「うん」


『確か海外に留学したのよ。親のコネ使って』


「そうなのか?」


『噂だけどね』


噂か…またか、ジローは思った。


『コラ!オッパイを触らない。まずは痩せなさい』


杏子が叫ぶとゴスっと言う音がした。多分、悪さをしようとした堤を携帯で殴ったのだろう。イチャイチャしたいよお~

と嘆く堤の声が電話口で聞こえた。ジローは苦笑してしまい、運ばれてきた肉を焼き始めたユウコの胸元を見てしまう。


「い、いやなんでも」

ジローは目を反らした。

「視線がいやらしいんですけど?」


ユウコは可愛らしい笑顔だが刺すような目でジローをみた。


「な、なんでもないよ」


『どうしたの?』

杏子の心配そうな声がした。まったく男って奴は!…ああ、俺も男かとジローは思う。


「いやこっちの話。じゃあ堤に早くまた痩せろって言っといて」


『ふふわかった。じゃあね』


電話は切れた。



「どうだった?」

ユウコ



「あんまりわからなかった。みんな勝手に想像してる。風の噂は怖いなあ」


ジローは噛みしめるように言った。


「そう。焼けたよ」

そういうとトングでジローの皿に肉を盛りつけてくれた。


「お?サンキュ!……旨いなやっぱり~うんコレ、カルビ?」



「上カルビ。ジロー君の奢りね」

ユウコは笑顔で言った。八重歯が覗く。


「お金ないよ~」

ジローはお手上げだ。


「嘘だよ。頼んだのアタシだから奢る。この前たくさん働いたから今月バイト代多めなんだ」

ユウコはパスタ屋で店員のアルバイトをしている。あそこではいろいろあったとジローは思った。


「ゴチになります」

ジローは目の前で手を合わせた。







 しばらくすると再びジローの携帯がなった。メールだ。開いてみる。


『ウハハハハハハハ』


書き出しはやはりこうだ。根岸だ。ジローはため息がでた。


『ウハハハハハハ~グハハハハハハハ~


俺様は今、駅前でミホちゃんと歩いてるぞ~手を繋いで~ラブラブさあ~


ウハハハハハハハハ


羨ましい?羨ましい?羨ましい?



 そしてメールにはやはり写真が添付されていた。駅前の噴水の前でポーズを取る根岸と、文面からさっするに、ミホちゃんが写っていた。



「わざわざだれかにとって貰ったのか?」

ジローはメールを見ながら、思わず声にでてしまう。


「どうしたの?バイト?」

ユウコが心配そうに言った。


「いやなんでもないデザートは俺が奢るよ」



「あら!嬉しい」


ユウコが笑った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ