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3年前(2)

昼下がりに、とある駅前で松岡とジロー達。

なんであんなこと言ったんやろか?



 松岡は心の中で思った。


松岡は関西出身だ。

今は大学に入り、標準語の世界に順応している。というより少し自分をそこに合わせないとバランスが取れない、そのせいもあるのかもしれない。時々、地か出てしまう。頭の中、そして言葉に。



 駅前の噴水の前で松岡はジロー達を待っている。人で駅前は賑わっている。天気がいいせいだろう。

 飲み会での彼の唐突な発言、あれには焦った。静香は苦笑いで、


『冗談だよね?』


と聞くが彼は、


『いえ冗談は聞き上手には言えません』


なんて言うものだからその場はさらに緊迫した。静香はその後、苦笑いで、ゴメンね無理だわ、と言って去っていった。包容力のある優しい笑顔が特徴の静香が苦笑いだ。静香が引くのもよく分かる。ただその後、俯き本気で悩んでいる彼を見て松岡は思わず言ってしまった。


「そんなに落ち込むなよ。今度、俺が女の子との接し方、街で教えてやるから」


松岡は不味いと思った。めんどくさいことになる。そう思った。その瞬間、



「面白そっすね~俺も一緒にいっていいですか?」


なんてデブの堤が言うものだから困った。


「僕も行きたいです」


酔いつぶれ、寝てたはずの山下までそういう。なんだか少しだけ嬉しくなった松岡は



「おし!任しとき~今度の日曜駅前に集合なあ~

女の落とし方見せたるわ~」

つい里の言葉が出てしまう。


「ナンパやナンパ~」


松岡は少しだけ調子に乗った。



「ありがとうございます」

坊主頭をこちらにむけて頭を下げるジローに松岡は気持ちよささえ覚えた。


「せやな~」


松岡の方にビクッと力が入る。山下の横で寝てた彼女は、不適に笑いながら松岡の隣に座っていた。


「懲りない男やね~別れましょう?」


松岡の影響で会話に関西弁の混ざる松岡のカノジョは言った。目が笑ってなかった。そして



強烈なビンタ




どこの女も怒らせると怖い。

 その後、カノジョにメールアドレスは変えられ、電話番号は変えられカノジョの中から存在を消された。別れってやつだ。松岡は呆然とするしかなかった。




 そして今、松岡は日曜日の正午過ぎ、大学のある最寄り駅の噴水の前でジロー達を待っている。水しぶきが必要以上に飛んでいる。待ち合わせ場所を間違えた、そう思い始めた頃、ジロー達がやってきた。最近の後輩は時間にルーズらしい。


「チワっす!」


「チース」


「こんにちは!」


松岡に三人はなんとも高校生や中学生の部活を思い出させる挨拶をしてきた。それぞれバラバラな挨拶なのだか、松岡にはそれが気持ちよかった。



「よお~遅かったじゃんか~」

松岡。


「どうもすいません、ジローのやつが準備に手間取って」

堤が言った。


「いやお前が服選びがどうとか…」

ジローが反論する。


「まあまあ先輩の前だろ」

線の細い山下が2人の会話に割り込んだ。細いよな彼、松岡は思った。


「うるさいな、お前だって靴が合わせずらいとか最後まで言ってただろうが」

ジローは言った。


「そうだ、そうだ!今日は天気いいからブーツかスニーカーにするか散々迷った挙げ句、お前サンダルじゃないか」

堤は唇を突き出しながら言った。松岡はポッチャリとした彼の顔がさらにふくよかになった気がした。


「いいじゃんか!この方がらくだよ。てか堤、お前は体型考えろよ~そのカーディガンは小さすぎるぞ」

山下は方をすくめる。ちなみに堤は赤茶のカーディガンを、山下は黒のベストをTシャツの上から羽織っている。


「ぱっつんぱっつんだぞ!」


「うるさいな」



「まあまあ2人とも、服装のことはもういいだろうに」

ジローが2人をたしなめる。その雰囲気は、どこか2人を達観している。坊主頭がなおさらそう見せるのかもしれない。



『一年中スウェットが何言ってやがる!!!』


堤と山下はジローを見据えると揃ってそう言った。3トリオ 、思わずそんな言葉があてハマりそうだ、松岡は少し可笑しかった。



「この黒のスウェットはなあ…」

ジローは自分の着るスウェットの裾を引っ張って解説を始めようとしている。



「…そろそろ行かへん?」

松岡はタイミングを見計らい口を開いた。


「そうっすね」

堤は頭を掻く。


松岡は3人を引き連れて歩き出した。



「これはマルイのバーゲンで…」


ジローは歩き出しながら、いかに自分のスウェットが上質か語り出した。


とりあえず今はどうでもいいだろうに?そう思ったが、可愛い後輩にはそう言わなかった。

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