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シーン

 『追う男』

『追われる男』



どこかで観たような観ないような…




 銃声が響いた




 男はその銃声から逃げるように、コンクリートの壁に身を潜めた。男の額から汗が滴る。彼は手に握られた銃を強く握りしめた。相手の気配はなく、自分の息づかいだけが聞こえる。



…………




「……終わりだ…隠れてないで、出てこい…」



冷淡な声が聞こえた。その声が自分に向けられているとおもうと男はゾッとした。緊張が募る。





再び銃声が響いた





男は驚くが、深呼吸をし、銃を構え直した。


「殺してやるから出てこい」

相手は言った。




決着をつけてやる



男は呟くと意を決し、自分の背で、盾となっていた壁から勢いよく飛び出した。



男の目と相手の目がしっかりと合った。どちらの銃口もしっかり倒すべき相手に向いていた。

引き金を…



パァン



パァン


パァン




パァン



銃声が鳴った



男は目を開けると、そこには血を流し倒れる相手が転がっていた。


「…俺の負けだ。せいぜい楽しみな」

相手はそう言うとそれ以上言葉を発しなかった。


男は呼吸がなかなか整わない。



 サイレンの音が徐々に近づいてきた。赤い光が彼らを包む。男の周りに数台のパトカーが止まる。そのパトカーからブロンドの髪の長い女性が降りて、ぼろぼろになった男にかけよった。女性は男をねぎらった後、愛してるわ、そう囁くと男とキスを交わした。男もその女性求めた。


「お疲れさま」


二人は手を繋ぐと、赤いサイレンの光と、パトカーを背に歩き出した。

 

 歩き出した二人が映るスクリーンをスタッフロールが流れ壮大な音楽が劇場を包んだ。暗がりで動く人の頭や、エンディングを見ずに去っていく人影が見える。







 高橋伸次郎タカハシシンジロウは大きく伸びをした。彼は仲間内ではジローと言われている。

 この映画の感想はズバリ、面白かった。

 しかし映画の大作2時間半は長い。90分がちょうど良いなとジローは思う。

 それにジローは長編に向いていない劇場の客席の座り心地の悪さに少しだけ文句を言いたくなった。

 面白くなかったの?面白かったの?どっちなの?



ジローは、この劇場の外で待っているはずの自分のカノジョにまた怒られる気がした。

 そもそもジローとそのカノジョはたとえデートだとしても、観たいモノを観る、というスタンスだ。片やアクションと言えば、片やホラーと言った見方だ。恋人は恋人でも、観たいものは1人で観る、カップルや家族ずれにに囲まれても二人とも動じない。ある人は自由奔放なカップルと言うし、またある人は恋人未満とも言うし、大学の友人、つつみ山下ヤマシタには、おまえら別れたら?と、からかわれる。

 しかしジローとカノジョにとって、お互い放任主義な所は気に入っているし、カップルでベッタリと言うのは性に合わない。珍しい?そうなのかもしれない。 ジローは少し考えると、座席から立ち上がった。上映時間からして彼女の方が先に劇場の外で待ってるはずだ。

 

 そういえば映画の物語の中で、去っていった主人公と女性はその後、どうなったんだろう?その後、2人は結婚して子供が産まれたり、あるいはなにかの拍子に別れたり、最後に倒した悪役の弟とかが現れてまた命を狙われたり、いろいろな事が頭に浮かんだ。それに物語の前は何があったのだろう?


想像力を働かせるって言うのはこういう事なのか……


『想像力だよ』

そう言われたのを急にジローは思い出した。いや、昔言われたことがあるから、さっきみたいなことを思ったのかもしれない。少し昔のことだ。

 とりあえず、カノジョにこの話をしたら、キミは物語にのめり込みすぎだよ、と言われるだろうとジローは想像した。少し顔が緩む。




まあとりあえず!



食事でもしながら、今日お互いに観た映画についてカノジョと語り合おうと思った。



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