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第一章 初めての旅。そして海⑤

「リルちゃん、キィ~ック!!」


朝っぱらから部屋に騒がしい声が響く。


扉を開けるや否やリルムはロイがいるであろう、ベッドに飛び蹴りを放ってきたのだ。


しかし、ベッドの膨らみからは人特有の固さが伝わってこなかった。


「はっ!?」


ベッドの膨らみは枕や掛け布団で作ったダミー。本物の俺はこっちなのだ。


「うらああああああ」

「きゃあ!!」


俺はリルムを後ろから羽交い絞めにする。


「ロ、ロイちゃん。騙すなんて、卑怯だよ!!」

「不意打ちしてくる輩に言われたくないね」


俺はリルムの脇に手を移動させ、思いきりくすぐった。


「きゃはははは……やめてよ、ロイちゃ~ん……」

「おらお~ら。どうだ? 苦しいか?」

「ああ~ん♪」

「というかセクハラだよ、お兄ちゃん……」


後から入ってきたクーナは呆れ顔だ。


「朝から元気だね~」

クライスはいつもと変わらずボーっとしている。まあ平和な朝ってことだな。



そして一段落したところで朝ごはんを食べるために海の町を探索することになった。

海に程近いので町の中にも潮の匂いが届く。

それが朝の涼しげな風と合わさり、なんとも清々しい――――


「およ? こっちからいい匂いが」

「ね~ね~!! こっちも美味しそうですよ」


そんなことを思っているのは俺だけなのか?

他3人の頭の中は食べることでいっぱいらしい。

まあ、旅行に来ているんだからいいか。

俺もそう思い、匂いに誘われるがごとく街を散策した。


だが結局、4人の意見が割れ、無難にカフェテリアでの朝食となるのであった。

外のテーブルにそれぞれの朝ごはんを運び、朝食を開始する。

当然食事のときに話題となるのが今日の予定のことである。


「朝食終わったら、すぐ海に行こうよ!!」


リルムは断然行動派。それに対してクーナは、


「食後休みが少しほしいかも……水着の準備とかしないといけないし……」


という意見を出す。


「僕は昨日のうちに用意できているから、先に言って場所を確保しとくよ」


こういうところでクライスは頼もしいと思う。

俺もクライスのことを手伝うことにして手早く食事は終了した。



部屋に戻ると最低限の身支度をして、俺とクライスは浜辺へと向かった。

少し早かったお陰か、海岸にはまだ人は少ない。

どの人たちもベストプレイスの確保をするために

パラソルやレジャーシートを砂の上に広げていた。


「ここでいいんじゃないかな?」


クライスが選んだ場所の砂の上にパラソルを突き刺す。

これで準備は完了だろう。あとは2人を待つのみ。




「おっ、まった~せ~!!」


すぐに女子二人は現れた。


「おっ、来た来た――」


現れたリルムの姿に俺の口は自然と閉じてしまう。


彼女は水着姿なのだ。

いや、海水浴なんだから当然なのだが。


照りつける太陽を反射するような白い肌に青いビキニ。

そしてその身体にかかる桃色のきれいな髪の毛。


いつもとは違う、そんな彼女の様子に俺は見とれてしまう。


「どうかな? ロイちゃん?」

「ああ……似合ってると思う、ぞ」


自分でも棒読みになっていることが分かるそんな台詞でも


「やった~! 気合入れて選んだかいがあった!!」


と、彼女は大はしゃぎする。


そんなに飛び上がると胸が……



「じーっ」


気が付くとクーナが俺の顔を覗き込んでいた。

彼女も当然ながら水着。白のシンプルなワンピースだ。


「ど、どうした?」


リルムを見ていたことを悟られないように、慌てて目線を外したが、遅かったらしい。


「お兄ちゃんのえっち」


クーナはそう言うとクライスの隣にドカッと座った。


「クーナちゃん、可愛いね」

「えっ?」


突然、クライスはクーナに向かって、そんなことを言う。


「水着、似合ってるよ」


クライスは爽やかな笑顔を浮かべクーナの頭を撫でる。


「あ、ありがとうございます……」


クーナは顔を少し紅く染めて、リルムの元へと走っていった。


「ロイ、クーナちゃんは君にも褒めてもらいたかったんだと思うよ」

「えっ?」


クライスは俺に耳打ちをしてくる。


「まあ、リルに目がいくのは分かるけど」

とクライスは苦笑した。



「2人とも~!! 早く海に入ろう~!!」

「おう」


ほっといたらリルムが勝手に泳ぎそうだったので俺たち2人は腰を上げ、

海のほうへと走っていった。

海水の温度を足で感じながら、波打ち際を4人で歩く。


「クーナ。足をとられないように気をつけろよ」

「うん。だいじょう―― きゃっ!?」


言ったそばから、クーナは足を取られ、水しぶきを上げ、転倒する。


「まったく……」


俺は手を取り、彼女を立ち上がらせる。


「えへへ。ありがとう」

そう言って、クーナは汚れを払うと、先を行っているリルムの後についていく。


「ロイ。心配しすぎなんじゃ?」


クライスはニコニコしながら、俺の肩に手を置く。


「そうかな?」


自分ではそうでもないとは思うのだが。


「人の心配をし過ぎると、自分が楽しめないだろ」


クライスは肩をポンと叩き、2人の後に続き海岸を疾走していく。


「楽しむか……」


そうだ、これは俺の旅行でもあるのだから楽しまないとな。

そう心に言い聞かせ、前の3人を追いかけ走り出す。


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