第四章 ロイのドキドキ初デート!?②
俺らは公園から出て劇場へと向った。
今ちょうどウッドベルには小さな劇団が公演に来ているのだ。
それを天の配剤と思った俺はデートプランに組み込んだのだ。
お芝居なんて普段は見ないが、まあデートのときぐらいは見てもいいだろう。
劇団が来るのは年に数度ということもあり、劇場の中は混雑している。
前売りで手に入れたチケットの席は――――
3列目の中央寄り。
なるほど結構いい位置だ。
俺とリルムはそこに腰掛ける。
「パンフレット貰ってきたけど、見る?」
「うん。見る」
リルムはパンフに食い入るように目を通す。
今日の内容は――狙ったように恋愛ものであるようだ。
劇が始まり、一気に会場の電気が落とされる。
舞台だけがライトで照らされた。
この雰囲気――――俺は人気コンテストを思い出して苦笑してしまう。
そんな俺だったが劇が始まるにつれ、自然とステージに集中するようになる。
ステージの上では役者が迫真の演技をしている。
ふと横を見て、俺の視界にはリルムの顔が映った。
リルムは演技に夢中のようでステージに食いつくように見入っている。
シーンが変わるたびにリルムも表情を多彩に変えていく。
笑ったり、泣いたり、怒ったり――――
見慣れたせいか気が付かなかったが、リルムは本当に多彩な表情を持っている。
そういや子供の頃も、俺にいろいろな表情を見せてくれたっけ――――――
いつのまにかステージの演技よりも夢中でリルムの横顔を見ていた。
「あー、よかったぁ」
劇場を出てからもその余韻を押さえ込めないのかリルムは劇のことを夢中で話す。
ハッピーエンドであったこともあり彼女はご機嫌だ。
劇の途中でリルムがすすり泣いてしまうシーンがあり、
このまま終わったらどうしようと思っていたことは秘密だ。
時間はお昼時、次の目的地はもちろん昼食。
「リルム。何か食べたい物ある?」
「えっと……なんでもいいよ」
もちろんお店は決めてある。念のため聞いただけだ。
俺はリルムの一歩前を歩き、あるお店の前にたどり着いた。
たどり着いたのだが――――
「えっと―― お休みかな?」
店のカーテンは閉まっており、ドアのところにはCLOSEの文字が……
「うわぁ、定休日か…………」
気まずい、気まずすぎる……
そーっと、リルムの表情を見る。
彼女はアハハと乾いた笑みを漏らす。
「ど、ドンマイだよロイちゃん!! とりあえず、その辺りを探してみよう!!」
「あ、ああ……すまん」
俺はリルムに連れられその店を後にする。
このダメージはしばらく抜けそうにない……
駅前を歩いてみたが結局いい店が見つからず、
俺たちは学園の最寄りのカフェに足を運んでいた。
俺的には敬遠したい所だったが、結局食欲には勝てず、渋々とここに来たのだ。
カフェの中は昼時とあって混雑している。
「2人ですけど、席ありますか?」
「はい。大丈夫ですよ」
ウェイトレスさんに連れられ、俺たちは店の奥へと案内された。
「あっ!!」
席へ座る前に俺とリルムは同時に声をあげてしまう。
そこには見た顔の青髪の少女、他三名がいた。
恐れていたことが起こった――ここは学園の生徒も良く使うカフェ。
このように知り合いと会うことは覚悟していた…………
しかし、よりにもよって妹と会うとは…………
今日のことをクーナには内緒にしていた。
今日だってクーナがいないことを確認して寮の部屋を出たというのに――――
「お兄ちゃん? それにリルムさんも」
「あはは。どうも……」
リルムも乾いた笑顔を見せる。
クーナは俺たち二人の姿を見て、ニヤニヤと笑いだす。
「お兄ちゃん達、デートでしょ」
「えっ!?]
先に声を上げたのはリルムの方であった。
彼女は慌てた素振りで否定をしようとしている。
だがその口からは"デートではない"という言葉は出ない。
そればかりか俺の方をチラチラ見ている。
俺はそんな仕草を見て、腹を括った。
「そうだ。俺とリルムはデートしてるんだから邪魔するなよ」
最高の作り笑顔をし、俺ははっきりとそう答える。
「えっ!? ろ、ロイちゃん――――」
リルムは恥ずかしそうに俺の袖を引っ張るが、そんなことは気にしない。
「ほら、リルム。座れよ。何食べたい?」
「はううううう……」
リルムをなだめ、俺はテーブルへと着く。