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第三章 混迷? 美男美女コンテスト⑯

校内放送が流れ、生徒たちは一斉に体育館へと集まる。

いよいよ順位発表が始まるのだ。


俺たち参加者は再びステージ裏でスタンバイをする。

なんでも3位以内は表彰されるみたいなシステムらしい。


しかし、俺にとってそんなことは無縁であろう。

クライスやリルム、それにキサラギが呼ばれるのを期待し、俺は椅子に座り、放送へと耳を傾けた。



男子の表彰が始まる。

3位、2位は順当に上級生の有名な先輩方の名前が呼ばれる。



「それでは第1位、1学年、ミスト=レディアーク!!」

「ええええええええ!?」


隣の子が悲鳴にも似た声を上げ、立ち上がる。

その子の顔は覚えている。


確か、ステージ発表の際に、俺の隣にいた女装の子だ。

予期せぬ自分の順位に驚き、オドオドしている姿も可愛らしい。


「あの子、男子からすごい票集めてたんだよ」

「へぇ~」


裏方の実行委員からはそんな声が漏れる。なるほど納得だ。

彼はオドオドしながらもステージでトロフィーを受け取った。


「あーあ、残念。ロイちゃんとクライスちゃんには期待したのになぁ……」

「あーすまん」

「ごめんね」


俺たちは顔を見合せながら、平謝りをする。


「すまんな、キサラギ。服選んでもらったのに」



近くにいたキサラギにそう言うと

「期待なんか端からしてなかったんだ。別にいい――――」

そう言われた。


ここは励ましてほしかったのだがなぁ……

「ロイちゃん、静かに!! 女子の発表だよ!!」

「はい……」


ついでに怒られて、踏んだり蹴ったりだし――――


「第3位――――」


女子は俺の目から見ても熾烈な争いであったと思う。


リルムやキサラギもそうとう上位だろうが、それでも2人の名前は呼ばれることがなかった。



「あーっ!! だめだったぁ……」


リルムは肩を落としガッカリとしてしまう。


「ドンマイ」


俺とクライスはそんな彼女の肩を叩く。


「キサラギも残念だったな――」

そう言いかけたが、彼女の姿はもうどこにもなかった。



それからコンテストの詳しい順位が発表される。

身内で一番順位がよかったのはリルムで4位、それに続いてクライスが5位

キサラギが6位ということになった。

ちなみに俺は23人中18位という、微妙なポジションだ。




コンテストの打ち上げという名目で、俺たちはメインストリート内にあるカフェへと

足を運んでいた。





「4位、5位、そして18位、おめでと~!!」


――――パンパン!!


クーナはどこからともなく持ってきたクラッカーを鳴らす。

それに続いて店の中の人たちも俺たちに温かい拍手を送ってくれる。


それからが大変だった。

リルムは無礼講と言って、アルコールを注文するわ、

クライスがグロテスクな闇料理を注文するわで、

店の中はいつも以上の賑わいを見せていた。



「うぅ~、気持ち悪い……」


俺の背中でクーナはそんなことを言っている。


「まったく、リルム!! 酒を無理やり飲ませるなよな」

「あははは、ごめんね、クーナちゃん」


どうやらクーナにはお酒はまだ早かったらしい。

飲み始めて早々、彼女は酔いつぶれてしまった。

そんな妹を背に、俺たちは寮へと向かっていた。


クライスもリルムも酒を飲んで顔は赤いがその足取りはしっかりしている――――

これは飲み慣れているに違いない。


「ロイちゃんも、お酒飲めるんだねぇ」

「ああ、師匠にさんざん付き合わされたからな……」


酒豪のあんな師匠に付き合えば嫌でも強くなるだろうな。


「じゃあ、俺はクーナを部屋まで連れて行くよ」

「ああ、じゃあね二人とも」


クライスはそう言って、男子寮の方へと入っていく。


「あーあ、それにしてもコンテスト残念だったなぁ」


リルムは先ほどのことを思い出したようで、また愚痴るように俺に言う。


「なこと言っても、仕方ないだろ?」

「でも、デートの約束までしたのにー」

「あっ……」


そうだ、そんなことすっかり忘れていた。確かに俺はリルムとそんな約束をした。

彼女が優勝すればデートをしてやるって……


「あー、もったいないなぁ……ロイちゃんとのデート」


彼女は酔ってるせいで何を言ってるのか分からないのだろうか?


「じゃあさ、こうすればいいんじゃないか?」


このとき俺もアルコールのせいで正常な判断ができなかったのかもしれない。

だからこんなことを言ってしまったのだ。


「俺が18位ってブザマな順位だからさ、罰ゲームってことでデート……」

「む~。それじゃ、私とデートすることが嫌なことみたいじゃない」


どかっ!!


リルムは俺の腕を叩いてくる。


「痛ぁ……手加減ないな……」


クーナを背負って無防備だと言うのに、容赦ない攻撃だ。


「分かりました~。その罰ゲーム、乗ってあげるです~」


呂律が回ってない。ここまできてアルコールが回って来たのだろう。


「じゃあ、次のお休みに勝負です――ふぁぁ……おやすみぃ」


そう言い残し、リルムは自室へと消えていった。


「さてと、俺も帰るか――って、クーナを部屋に寝かせないと」


俺はク―ナを寝かせるために女子寮の中をフラフラと彷徨うのであった。

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