第三章 混迷? 美男美女コンテスト⑭
コンテスト終了後、女子の投票が行われる。
そして集計までの時間がフリータイムとなる。
下校してもいいのだが参加した身としてはどうしても結果が気になるところであった。
他の生徒も同じようで教室で談笑して時間を潰す生徒や
グッズを買い漁る生徒の姿を見かける。
自分の教室にはクライスやリルムの姿はない。
俺は暇であったので校内を探索することにした。
コンテストの余韻が残っているのか、
みんな興奮気味に口々に出場者の名を口にしている。
とうぜん俺の名前も出てくる……
「おっ、東洋の騎士さまだぜ」
「ああ、本当だ! しかもリルムの花束キャッチ者だぜ」
「うわぁ、なかなかオイシイやつだな」
何がオイシイのか知らんけど、言われる身になってほしい。
これは早いところ暇つぶしできる相手を見つけたほうがいいな。
歩くたびに後ろ指を指されるのは落ち着かない。
そして図書室に行くと、見かけたことのある後姿を見つけたのだ。
「よっ、キサラギ」
「告白なら結構です」
「はぁ? いやそんなつもりじゃ……」
「ああ、ロイ、君か」
キサラギは本を読むのを止め、俺の方に身体を向ける。
「いやぁ、コンテスト良かったぜ」
「どうも」
褒めているのに彼女はちっとも嬉しそうでない。
そんな態度を見ていると意地でも彼女のこのクールな顔を笑わせてやろうという執念が出てくる。
「あれなら優勝できるかもな」
「無理ね。上には上がいるから」
「そんなことないって――」
「どうせ興味ないし」
俺は心の中でがっくりと項垂れていた。
結構本気で褒めたつもりなのにぜんぜん冷たいんだもん。
「私より、リルムのことを褒めてやればいいじゃない」
「ああ、そうなんだけどな……見当たらないんだよ」
「たぶん校舎裏にいる――さっき、そっちのほうで見かけたから」
「おっ、センキュー。行ってみる」
俺は手を振り図書室から出る。最後に
「お世辞じゃなく、可愛かったからな!」
そう言い残して。
「馬鹿……」
彼女の呟きはそこを後にする俺の耳には届かなかった。