第三章 混迷? 美男美女コンテスト⑨
その日の昼食はリルム抜きになった。
リルムは着付けのために早く昼食を済ませたらしい。
「ああ、クライス先輩もお兄ちゃんも格好良かったなぁ――――」
クーナは顔を赤らめて、うっとりとする。
「ありがと…………」
そんなこと言われると俺も照れてしまう。まあ一応お礼は言っておく。
「それにしても、これ…………」
俺はいつもと違う雰囲気の食堂を見渡す。
食堂の一角には生徒が群がっている。
何をしてるかと思えば、コンテストに出る人のグッツの即売会であった。
そのほかにも誰が優勝できるかの賭けや、
来年のコンテストの予想までやっている。
「これって…………学校が許可してるのか?」
「さぁ?」
クライスは苦笑する。どうやら不許可の店らしい。
だがこれは伝統行事みたいなもので暗黙の了解で運営しているんだとか。
というか良く見れば、グッツコーナーに先生の姿が見えるし…………
「さっき覗いたけど、お兄ちゃんの生写真も売ってたよ」
「何っ!? いつ取られたんだ?」
「あはは、いつものことだよ」
クライスとク―ナは笑う。
だが、俺にとっては笑い事ではない。
どんな人が俺の写真を買うか、気になってしまうではないか!!
「ちょ、ちょっと覗いてくるわ」
「ふふ、そんなに自分の映り具合が気になるの?」
「ち、ちげーよ!!」
ともかく俺は席から立って即売店を覗くのであった。
「おっ、ロイやん。どしたの?」
そこで店を開いていたのはクラスメイトの女の子であった。
「ああ、なるほど君に撮られたわけか…………」
最近彼女がやたらと、カメラを持ち歩いているのは気が付いていた。
まさか俺まで撮られていたなんてな。
「自分がどう映ってるのか気になったんでしょ?」
「い、いや、別に…………」
「まーまー、素直になりなさいって!! これがロイやんの写真」
フムフム、なかなかの写りだ――――って、違う
「なんで俺の写真が勝手に売られてるんだ!!」
「えー、なんでって言われても、なあ?」
彼女は当然の権利だと言わんばかりに首を傾げるのだ。
「俺は自分の写真が売られんのは嫌だぞ!!」
「大丈夫。ロイやんの写真は人気がないみたいだから――――」
「そういう問題じゃないって!!」
彼女はマイペースに俺の怒りを受け流す。
「そうカリカリせんといて、これあげるから」
彼女は俺に一枚の写真を手渡した。
それはリルムが机に突っ伏して涎を垂らして寝ているというものであった。
「これ、リルムに許可取ったのか?」
「ん~ん? 非売品やし。でも売ろうとすれば高く売れるで」
「これで俺を買収しようってか…………」
「そや。理解が早くて助かりますー」
こんなリルムを他人に見せるわけにもいかない。身内として恥ずかしい。
「彼女の醜態を世間に晒さん様に振舞う。さすが彼氏の鏡や!!」
「彼氏じゃないけどな!!」
俺はその写真と引き換えにその場から身を引くのであった。