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第三章 混迷? 美男美女コンテスト⑧

俺は緊張する暇もなく、コンテスト当日を迎えることになる。

コンテストの順番は男子、女子の順番で行われる。

2種目の間は十分に空いてるので、参加する人も行事を見ることが出来るのだ。


コンテストまであと1時間というときに、俺は控え室に呼び出された。

俺とクライスが控え室を覗いてみると、

様々な格好をした男子とそれを取り巻く女子がたくさんいた。


ちなみに俺とクライスはそういう取り巻きを連れてきてはいない。

二人とも着付けに時間がかかる服装ではないし、第一恥ずかしい。


リルムやクーナは当然のごとく着いて来ようとしたが、

俺たちは断固として断ったのだ。


「じゃあロイ、これからはライバルだね」

「ああ。っても、俺に勝ち目はなさそうだけど」

「そんなことないよ」


そう言って、彼は試着室のカーテンを閉める。

クライスがどんな服装で勝負を仕掛けてくるのかは分からない。

そんなことを悩んでいるよりも俺は自分のことに集中しないと――――


コンテストで優勝は狙えないにしろ、

この服を選んでくれたキサラギのためにも無様な姿は見せたくない。

そう思い、俺も服を着つけるのであった。



着付けを終え、俺はステージ裏で出番を待つ。

緊張のせいか椅子が妙に硬く感じる。


俺の隣の子も身体を硬くしているようだ。

とは言っても、その男の子の格好はどう見ても女の子の格好で、

当の俺も、座る席を聞かれるまで彼を彼女と思っていたのだが…………


「ううっ…………どうして僕が、こんな格好を…………」


その台詞からして俺と同じように、

希望もしていないのに参加させられた子らしい。

自分の心境さながら可愛そうである。


「エントリーナンバー6番――――」


ついにクライスの番だ。

俺はクライスにガッツポーズを送る。

彼は少し照れくさそうにしながらステージへと出て行った。


クライスは清純なイメージどおりのタキシードで勝負する気である。

スタイル、顔的に決まりに決まっている。そして客席からは見事に黄色い歓声が上がる。


「くそぉ……………羨ましいぜ」

なんて少し呟いてみる。



そして遂に俺の前の前の人が終わる。


「うわぁ…………どうしよ…………僕の番だ…………」


隣の彼女――――失礼、彼はその不安を隠しきれない。

青い顔でソワソワとステージの方を見ている。


このままでは倒れかねないので、俺は緊張した彼を勇気付けてやることにした。


「コンテストなんて遊びなんだから、気楽にな」

「は、はい!!」


彼は潤んだ瞳で俺のほうを見る。

ウッ…………不覚にも可愛いと思ってしまった。

いやいや断じてそういう趣味ではないのだぞ!! 俺は!!


「では行ってきます。先輩!!」


彼女、あっ、いや彼はそう言って席を立ち上がった。

去り際の笑顔が眩しい――――


彼の登場で大いに会場は盛りあがっているらしい。会場の裏までに

声が聞こえてくる――――主に男子から…………


「っと、さて、俺も頑張らないとな」


自分の番を目前にし、俺は気合を入れた。


そして俺の名前が呼ばれ、実行委員の人へとステージへ呼び出される。


「エントリナンバー16。4学年、ロイ・ウォレンツ」


俺はステージに飛び出す。会場内は暗いせいか、

天井のステージライトが、やけに眩しく感じる。


俺の姿を見た会場内は沸く。これはいけるのかもしれない!?


キサラギに選んでもらった服は東国の民族衣装であった。

何と言ったか、サムライスタイルだっけ?


なんともまあ、フィット感がない服だ。

上着はともかく、”ハカマ”はとてもダボダボで動きにくい。


まあ、ともかく物珍しさもあって、会場受けは良いようだ。


とりあえずルールに従い造られた通路を歩く。

その最前列にはリルムの姿があった。


「ロイちゃ~ん!! かっくいい!!」


リルムは黄色い声援を出しながら、俺にブンブンと手を振る。

隣にいたクーナは危なげにその手を避けている。

そんな様子を見て、俺はクスりと笑ってしまった。


通路をを抜け、ステージ裏に戻ってくると、やっと緊張感から開放される。

肩の荷が下りたのか、とてもスッキリとした気分だ。



「ロイ」


その声に振り向くと、クライスがその手に紙パックのお茶を持って立っていた。


「お、悪いな」

俺はそのお茶を受け取り、飲む。

緊張で喉がカラカラだったので、これはありがたい。


「どうだった? 初舞台?」

「いやぁ、緊張したよ!!」


興奮が抜けきれず、少しトーンの高い自分の声に笑ってしまいそうになる。


「その格好、みんなにウケてたね」

「ああ、全部、キサラギのお陰だな」

「えっ? キサラギさん?」


クライスは目を丸くして驚いたような表情を見せる。


「彼女に服を選んでもらうなんて、なかなかだね」

「そうかな?」


クライスの中で、彼女はどんなイメージを持たれているのだろう?

少し疑問に思う。


「さてと、女子の部始まる前にお昼たべちゃおう」


クライスはそう言い、壁から背を離す。


「そうだな」


俺もその言葉を受け、次の行動を開始した。


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