第三章 混迷? 美男美女コンテスト③
「まったく………」
俺はコーヒーを啜りながら、不機嫌に椅子へともたれ掛かっていた。
正面にはご機嫌そうなリルムの姿があった。
そして隣にはクーナとクライス。
そこに居る俺以外はご機嫌だった。
それが逆に俺のつまらなさを加速する。
「ロイちゃん。幼馴染、トリプル出場おめでとうだよ」
リルムはクーナとクライスと乾杯する。
「まさか、お兄ちゃんが当選するなんてねぇ」
クーナは俺の顔を見ながらそんなことを言う。
「まあ、私も入れたし」
「おいおい、リルム。何してくれてんだ」
「私も入れましたし、私の友達も入れてくれて」
「ちょっと、クーナもか!!」
なるほど、リルムとクーナそしてその周りが俺に入れたわけだ。
面白半分に…………
クラスの奴らを問いただしたら、女子数人が俺を推薦してくれていた。
その理由が面白そうだからだ。
コンテストに出ることは名誉なことらしいが、
その票の半分以上が「面白そう」という俺はどうすればいいのだろうか。
「で、クーナは出れないのか?」
「う、うん。セーフ!!」
クーナはボディランゲージを使い、その安心感を表す。
「ちっ。お前も出させてやりたかったぜ」
不機嫌になりながら俺はコーヒーを一気飲みする。
「でもロイ。誰に入れたの?」
クライスに尋ねられる。たしかにそこは気になるところだろう。
「俺はもちろん、クーナに」
「お、お兄ちゃん!!」
「へ~ん。お前も俺に入れたんだから、おあいこだろ」
「ロイちゃん、性格悪く見えるよ…………」
リルムは苦笑いをする。
「で、クライスは誰に入れたんだ?」
「僕は無難にリルに入れたよ」
「ありがとう。クライスちゃん」
リルムは嬉しそうだった。
俺も彼女に入れたほうが良かったのかな?
「でも、クーちゃんも結構惜しかったよね。13票は入ってたんだから」
「えっ!? そ、そんなに」
クーナは少し複雑な表情を取っている。
喜んで良いのか、危なかったと思っているのか。
そんなところだろう。
「でもロイちゃんを抜いても12人には可愛いと思われてるんだよね?」
「むっ!?」
俺はリルムの言葉を聞き、眉間にしわを寄せる。
「そ、そんな。偶然ですよ」
クーナは顔を紅くして俯いてしまう。
「そういう態度が、かあいいんだよね~」
リルムはムギュっとクーナへ抱きつく。
「おい、人の妹を大事にしてくれよ」
俺はリルムを睨みつける。
「おお。こわ~い」
そう言って、リルムは身体を離す。
「で、リルム。誰が誰に投票したか分かるか?」
「うん。探りを入れれば――――」
「クーナに投票したやつを教えてくれ!!」
「えっ? なんで?」
「そりゃあ、お兄ちゃんとして妹に付きまとう男は駆除しないとな」
「ああ、なるほど了解!! お姉ちゃん代理として私も協力するよ!」
俺の言葉にリルムはびしっと敬礼をする。
「お兄ちゃん? リルムさん?」
「大丈夫。お前に付く害虫は俺が排除する」
「わぁ~。ロイちゃん。人を虫扱い。さすがS会の王様!! 鬼畜。人外~!!」
「おう、もっと褒めろ!」
俺とリルムはひたすらテンションを上げていた。
ただ、そのベクトルは果てしなくおかしいところへと向かおうとしているのだが。
「ねえ、クライス先輩。止めたほうがいいのかな?」
「そのうち燃料切れすると思うよ」
残りの2人は俺たちの様子を哀れんだ目で見るのであった。