第三章 混迷? 美男美女コンテスト①
新学期が始まり、俺は登校する。
キサラギとの特訓で学校に来てるとはいえ、
新学期になると、やはり気分が改まる。
まあ、そうは思えない奴もいるのだが。
隣の机に突っ伏した少女を見る。
「あ~。夏休み終わっちゃった」
彼女は全身から気だるいオーラを放っている。
「ほら、リルム元気出せよ」
「だって~!!今年の夏休みも何もなかったんだよ」
俺にしてみればイロイロあったと思うのだが、
この桃髪はどんな刺激を求めているんだ?
リルムと同じオーラを纏っている者もいれば、格段に格好良くなった
ヤツや、オシャレになった奴もいる。
夏休み効果って人それぞれだ。
「ロイ」
「おっ、クライス。いたのか?」
「いたよ!!」
珍しく、クライスはツッコミを入れてきた。
どうも彼は影が薄くて困る。
「ロイ、今、酷いこと――――」
「気のせいだ」
まあ、夏休み中は女子2人に振り回されっぱなしだったからな。
少しは男の友情を深めないとな。
とはいってもクライスも部活でエンジョイしてたようだが。
まあ、詳しくは分からないが。
「夏休みは名残惜しいけど、もう少しで大イベントがあるのは楽しみかなぁ」
唐突にリルムはそんなことを言い出す。
「大イベント?」
「うん」
クライスは俺へと説明を開始する。
「この学校の一大行事なんだけど、校内人気コンテストってのがあって」
「はぁ?なんだ、その俗っぽい行事は?」
「まあ、変な学校だから」
クライスは苦笑する。
彼の説明をまとめてみた。
その人気コンテストというのは、その名の通り、
校内での男女の人気者のナンバーワンを決めるものであり、
異性の推薦が20票集まると強制参加しなくてはいけないものらしい。
「ちなみに、僕とリルはずっと出ているよ」
「うん。そうだね」
なるほど参考になった。
イケメン&かわいこちゃんめ!!
「だからロイも20票集まったら、出る羽目になるかもね」
「まさか~」
俺は豪快に笑う。
そんなことはないだろう。
自分で言うのも少し寂しいけど…………
実際問題、俺以上にカッコいい男子はいくらでもいる。
「投票は明日から1週間。統計が出次第、エントリーメンバーが張り出されるよ」
「そうか」
俺の頭の中では誰に投票するかの思惑が広まっていた。
人気コンテストが近いという事で、
クラスでは誰に票を入れるかという話題で持ちきりであった。
投票される側であろうクライスやリルムは生徒に囲まれることが多くなり、
少し疎外感を感じた俺であった。
とはいっても友達はリルムやクライスだけではないので、
俺にとってはいいリフレッシュになった。
特にリルムの暴走に巻き込まれない日々はとても幸せである。