第二章 夏空と宿題⑩
「で、なんでコイツがいるんだ?」
キサラギは俺を睨んでくる。
「そんな、怖い目するなよ…………」
「サラちゃん。よろしくね」
そんな彼女と対象にリルムはご機嫌だ。
「なっ? リルムも学びたいって言うし、
キサラギには迷惑かけないようにするからさ」
「私は教わる立場だ。文句なんて言えない」
最後には彼女も同意してくれた。
「そのかわり、首輪ででも繋いどいてくれ」
リルム、お前は犬並みの扱いらしいぞ。
「わんわん♪」
はぁ…………これはもしかして大変なんじゃないのか? 俺。
落胆とともに、”ロイちゃんのすぺしゃる講座(リルム案)”が始まった。
「ロイ、イメージというか、何を思い描けばいい?」
「俺は盾のイメージだけど、壁を思い浮かべる人が多い見たいだぞ」
「ひゃっ!! また舌、噛んじゃった~。ロイちゃん~!!」
何だ、かんだで2人は優秀だ。
すぐに障壁魔法は覚えられるだろう。
「おっ、キサラギ。だいぶ上手くなったな」
「本当か?」
キサラギは俺の顔を見てうれしそうな顔をするが、すぐに表情を戻し、
俺から目を外す。
「ま、まあ当然だな」
そんな素直じゃない彼女の仕草は見てて飽きない。
「みゅ~!! ロイちゃん、リルムの方が上手だよ!!」
リルムは見せつけるかのように、魔法を詠唱する。
「おっ、やるな。リルム!!」
俺はリルムの頭を撫でてやる。
「てへ~。褒められちゃった」
リルムはベタベタと俺へと、くっついてくる。
「ロイ。そんなことしていないで教えてくれ!!」
水面下で彼女たちは闘志を燃やしてたらしい。
それがいい意味で実力の底上げに役立ったのだ。
驚くことに、夏休みが終わるころには、キサラギもリルムも
教えた魔法をほとんどマスターしてしまった。
これには俺も脱帽だ。
「ロイ。ありがとう。とても参考になった」
夏休み、最後の練習日、俺はキサラギから感謝を述べられた。
「ああ、俺も楽しかったぜ」
気にするなとばかりに、俺は笑みを浮かべる。
「じゃあ、また新学期にな」
そう言って彼女は去っていった。
「じゃあ、私たちも帰ろっか」
「ああ」