第二章 夏空と宿題⑥
「じゃあまずは基本のおさらいだ。
魔法を防御する方法とは大まかに3種類ある」
俺の講義は始まる。
先生ぶった事はしたこと無いが、
とりあえず魔法の”なんらか”は心得ているつもりだ。
教えることに支障は無いだろう。
「ひとつは対魔法を使い、その魔法詠唱を無効にすること。
もうひとつは他の魔法をぶつけ、威力を相殺すること」
キサラギは俺の話を真剣に聞いているようだ。
そんなに見つめられると照れるのだが………
「だが、この2つは使う用途が限られているし、失敗時のリスクが高い。
だからこそ基本は魔法障壁での防御が主になる」
戦場では、相手の魔法の特性を考えている暇など無い。
360度すべてから絶え間なく飛んでくるのだから。
だからこそ、俺も防御魔法のなかでも魔法障壁系の術は真っ先に覚えさせられた。
彼女が何を目的に魔法を使うのかは分からないが、
魔法障壁ぐらいは覚えといて損は無いだろう。
「では、今から実践するぞ」
俺は彼女から数メートル離れたところに立つ。
「じゃあ、魔法を撃ってくれ」
「いいのか?」
彼女は不安そうだ。
まさか俺のことを心配してくれているのか?
「本当に止められるのか? 直撃して殺人犯になるのはごめんだぞ」
うん。やっぱり、そんなことだと思った。
「俺って信用できないか?」
「ああ」
そうきっぱり言われるとショックを受けるのだが。
「じゃあ、信じるぞ」
彼女は詠唱を始める。
そして彼女の掌からは大粒の水球が飛び出す。
こんなのに当たったら、びしょ濡れになる。
怪我をさせたくないという彼女なりの配慮だろう。
俺はイメージを頭の中で思い描きながら、詠唱をし、障壁を張る。
水球はその見えない壁に弾かれ、空中で発散する。
「まあ、こんな感じだ」
「………すごいな」
彼女は本気で感心していたみたいだ。先ほどとは俺を見る目が違う。
「じゃあ、詠唱の仕方とコツを教えるから」
俺はその後、彼女に付き合い、何度も練習をするのであった。