第二章 夏空と宿題②
「で、誰とも付き合ってないんだろうな?」
「う、うん」
「好きな人とかは?」
「え、えええええ!?」
「居るのか、居ないのか?」
「いる………かも」
「誰なんだ!?俺の知ってるやつか!?」
「お、お兄ちゃんだよ」
「えっ!?」
「私、お兄ちゃんが好き。小さい頃からずっと好きだった……」
「本当か? 俺ら兄妹なんだぞ?」
「でも、それでも好きなの!!」
「クーナ……」
「お兄ちゃん。私のこと嫌い?」
「俺は……… 好きだよ。クーナ」
「お兄ちゃん………」
「2人は見つめあい、禁断の口付けを………
という、ロイちゃんの妄想でした!!」
ガスッ――――
俺はリルムの頭にチョップを打ちあてる。
「勝手に俺のキャラを崩すな!!」
まったく、リルムの妄想にはついていけないぜ。
俺は部屋の壁にもたれ掛かり、不機嫌な顔をする。
「でもさぁ、クーちゃんからそんなこと言われたら、まんざらじゃないんじゃない?」
「えっ?」
リルムはクーナを見て、クスクスと笑う。
「クーちゃんどうなの?」
「そりゃ、お兄ちゃんのことはかっこいいと思うし、好きだよ」
おいおい、クーナ。何を言ってるのだ?
「でも、お兄ちゃんはお兄ちゃんだし、それに………」
クーナはリルムの顔を見る。
「リルムさんにわる――――むがぁ!?」
台詞の途中でリルムはクーナの口を押さえる。
「あははは、そろそろ勉強しなきゃね!!」
「はぁ!? なんだよ急に?」
俺は状況が分からずに困惑する。
「そ、そうだ! クーちゃん。お茶入れるから下まで来て手伝って」
「むがむがぁ………!?」
リルムはクーナが嫌がるのも気にせず、彼女を引き連れて、下へと降りていった。
「なんだったんだろう?」
取り残された俺は、唖然とするしかなかった。
「リルムさん……… 苦しい!!」
その言葉にリルムは手を離す。
「ご、ごめん。大丈夫だった!?」
「げほげほ………なんとか生きてます」
相当本気で口を塞いでしまっていたらしい。
クーナは苦しそうに咳き込む。
「というかリルムさん、慌てすぎです。お兄ちゃんを――――」
「わぁああああ!! お茶淹れないと!!」
リルムはその言葉をかき消す大声を出し、急いで紅茶の準備をする。
「こんな態度でバレてないって、我が兄ながら………」
リルムを哀れに思いながらクーナはお茶の準備を手伝うのだった。