31、会食①
ご先祖様がここに目覚めてから、いつの間にか二週間が過ぎていた。
ご先祖様にとって、この二週間はそれこそ衝撃の連続だった。それでも、ようやく動揺も収まりここの生活にも順応しかけてきた。ことに、記録映像を観てる途中で大泣きした後は、一皮剥けたみたいでヘンに爽やかだ。
しかし、それから以降は記録映像は観ていない。はたして、観ることが出来るかどうか、その勇気があるかどうかは分からない。
そんな折を見透かしたように、木師がご先祖様にここの連中を紹介したいと言ってきた。
「ふむ、なに、今晩、ここの主だった連中を集めて会食を開くから、出席してくれればいい。これは、ご先祖様のささやかな歓迎会でもあるんだ」
ご先祖様に否はない。感謝こそすれ、拒む理由は何もない。
「いや、ありがとうございます。ぜひ、出席させていただきます」
ご先祖様には、いま一つ密かな期待もあった。『たぶん、オコジョも出席するだろう。また、会える』
ご先祖様は、なぜかオコジョが気にかかっていた。オコジョの妖しげな美しさに、魅かれているのかもしれない。出来れば、また会いたいと思っていた。ただ、少々感傷的な気がしないでもない。
この日は、皆何となく浮足立つっている感じで、落ち着きがない。忙しそうだ。
しかし、ご先祖様は手持ちぶたさだった。かといって、とても資料を観る気にはなれない。音楽を聴く気にもなれない。
ご先祖様は、ブラリと外に出た。気が付くと、いつも間にか木師の盆栽棚の前にいた。
奇っ怪なムベの半懸崖、見事な箒立ちのケヤキ、春の野山を思わせるハゼの寄せ植え、中には、チカラシバなる物もある。これ何か名札が付いているから分るようなもので、何ということはないありふれたただの雑草じゃないか。名前さえ知らなかった。それも、去年の枯れた残骸らしい物が、まるで頭髪を束ねるように結んである。
他にも、ドクダミやら春蘭、ネコジャラシ、オオバコ、セイダカアワダチソウなどいろいろある。ヤブレガサなるものもある。
まったく、こんなものの何処がいいんだろう。ここにも、木師の不可思議さがある。
ご先祖様は、そう思った。
夕方になって、三々五々新人たちが集まって来た。ここの木師の家は、もとは小学校か中学校だったそうで敷地が広い。その広い敷地の一画に、駐車場らしき所があって、ご先祖様の部屋からもよく見えた。
新人たちは、スノボーに取っ手の付いたような物に乗って来た。
下に小さな車輪が前後に二個付いている。回頭性は良さそうだ。よくそんな物で転ばないものだと、ご先祖様は感心して見ていた。もう一つ気づいた。スノボーには、ブレーキが付いてないのかもしれない。それとも単なる遊びなのか、止まる時に野球の滑り込みのように、まっすぐ走るスノボーをいきなり直角に向きを変え、横倒しにしてザザザーと滑り込む。
中にはヘタな奴もいて「きゃー!」とか悲鳴をあげて、あらぬ方向に投げ出される奴もいる。それでも器用にコロコロと転がって、ケガはしないみたいだ。
たいていは「いりゃー」とか「きゃはー」とか奇声を発して、鮮やかに止まる。
実に器用なもんだと、ご先祖様は感心した。
だけど、そこらここらにタムロする様子は、まるで暴走族の集会みたいだ。




