21、オコジョ①
ご先祖様は足をブラブラさせて、ボケ~とデッキの端に座っていた。
デッキに面した庭にはサクラの大木が何本もあって。つぼみが大きく膨らんでほころびかけていた。そのサクラの下草に、楚々として咲くニリン草の小さな白い花の一群れが見えた。
うららかな春の陽射しが降り注ぐデッキの陽だまりで、ご先祖様は悩まし気な顔をしていた。
「あの~ご先祖様、よろしかったら紅茶を……」
「ん……」
ご先祖さまが振り向くと、オコジョとかいった少女がいた。
手におかもちを持っている。
ご先祖様は今日も図書室に来ていたのだが、なぜか気乗りがせずデッキに出て陽なたぼっこをしていたところだった。
「……差し上げましょうか?」
少女は、にこやかに問いかけご先祖様の隣に正座した。
「いや……それは……どうも、……ありがとう」
問いかけた少女に、ご先祖様は一種不思議な感銘を受けた。鼓動が、妙にドキドキと高鳴るのを覚えた。
「ふふ、私、オコジョといいます」
「うん」
「変な名でしょう」
「いや、ご先祖様ほどでもない」
「ほほほほ……」
オコジョは朗らかに笑った。ご先祖様は、オコジョの笑顔が妙にまぶしく感じられた。優雅な手つきで、オコジョはトポトポとカップにレンガ色の紅茶を注いでいる。
「これ、ハーブティなんですけど……お口に合いますかどうか。
よろしかったら、召し上がってください」
ご先祖様は『ドキッ』とした。差し出されたかわいいカップを持つ手が、まるで陶器で作ったように青白く透き通っていて、妖しく、美しく、なめらかな作り物のように端正だった。
「うん」
ご先祖様は、恥ずかしいほど際立った対比を見せるそのイカツイ手で、小さなカップを受け取った。
それにしても、この時代がかった古色蒼然たる手垢で黒ずんだ、擦り切れて木目の浮き出ている取っ手の付いたお盆のような物、つまり骨董品のようなおかもちから、シャレた、小さく、かわいらしい、モダンな白磁のコーヒーカップが出てきた。
どう見ても、ミスマッチとしかいいようのない取り合わせだ。
ご先祖様は、ものすごくお上品なおママゴトのような気がしてならない。




