14,資料①
ご先祖さまが蘇生してから、またたく間に一週間が過ぎた。その日は朝から、どんよりと曇り空だった。ご先祖さまは、あまり気は進まないのだが、二十世紀の資料を見るつもりでいた。
どうしても、自分の生きていた時代を確認すべきだと思っていた。その事を木師に話すと、快く応じてくれた。
「ふむ、それがいい。ついでだから案内しよう」
資料のある図書室は、ここの建物、通称『木師の家』の端にあった。
さまざまな本やさまざまな映像の記録類も、コンパクトディスクやビデオに収められていた。
小さく衝立に区切られた部分に、机とイス、各机ごとに液晶の大型画面が設置されている。机の上に、ドサリと資料が置かれた。
「ふむ、これが二十世紀の資料だ。イヤフォンは要らないだろ。今のところは、ご先祖さましか居ない。係りの者にも、言っておこう」
「いいんですか」
「ふむ」
木師はデッキをセットし、リモコンの操作方法を説明し、どこかへ行ってしまった。
ご先祖さまは、各巻一時間三十分にまとめられた『二十世紀の記録映像』を観ることにした。
第一回 二十世紀の幕開け
白黒の映像とノイズ、画面の乱れが古い時代を象徴してるかのようだ。
ご先祖さまは、引き込まれるように画面に見入った。二十世紀の初頭は、一つの時代、王朝の時代が頭頂を極め、新たな思想、技術の革新、変革などのうねりが今まさに出現しようとしている時代だった。
第二回 第一次世界大戦
人類は、かつてない惨禍を経験した。かといって、それ以前の時代が良い時代ということではない。『昔は良かった』などと言うのは、いつの時代も年寄りの繰り言だ。
ただ、この時代の戦争から、殺し合いのシステムが画期的に新しくなった。
そして、飛躍的に大規模となった。
機関銃が、兵士たちをバタバタと撫でぎるように殺して行く。重たそうな戦車が、人でも、車でも、家でも何でも構わずグチャグチャに踏み潰して行く。
飛行船が、飛行機が空から爆撃を始めた。地上では、列車に乗せられた巨大な大砲がしずしずと移動して行く。極めつけは、毒ガスだろう。当時すでに三千種が開発されて、じっさい使われていた。
主戦場はドイツ、フランスの国境地帯である。短期に決着がつくはずが、膠着状態になってしまい、泥沼の長期戦、塹壕戦となってしまった。
塹壕の兵士たちは、悲惨だった。戦争が予想より大幅に長引き、それに対する備えはハナから念頭になく、装備は甚だおそまつなままだった。冬になっても、当然冬服の支給は無い。雨が降れば、塹壕はドロドロの泥濘地となる。
ミズムシと凍傷で、兵士たちの足は無残な『ザンゴウ足』となり、ひどいのは切断する他ない。
いったい、これは……誰のための戦争か、戦争で誰が得をするのか。
それにしても、映像に出てくるこの群衆たちの熱気はどうしたことか。白熱した時代の気分が、溢れ出てくるようだ。
これは、ほとんど狂気に近い。




