完璧な僕
僕は完璧だ。
だからプリティーな彼女に告白するのさ。
僕の名前は西園寺怜。僕より完璧な人間はどこにもいない。
最高の家柄、最高の容姿。パパやママに愛され、すくすくと育った真っすぐなハート。
トイレの鏡で自分の姿を覗き込む。
パパから受け継いだブロンドの髪。ママの品と美しさが同居したこの瞳。神が僕に与えた彫刻のようなこの顔。なんてすばらしいんだ!
こんな僕に魅了されない女性はいないだろう?
クラスで一番の美少女。藤堂あかねさん。
黒い髪を背中まで伸ばした清楚な雰囲気。美しく整ったその顔。モデルのようなそのスタイル。
なんて僕に相応しいんだ。
今日だって僕に挨拶してくれたその気持ち。僕には伝わってるよ?
当然彼女は僕の告白を受けるだろう。
そして僕との甘いスクールライフを二人で満喫するのさ。最高だね。
放課後、僕は藤堂さんと屋上にいた。
屋上の周囲には緑色の柵で囲われ、あるものは白い給水塔くらいなもの。灰色のコンクリートに覆われた殺風景な場所だ。
吹きさらしなので風も吹き抜け、折角セットした髪が崩れてしまう、ああなんて不愉快なんだ。
ここは愛を伝えるのにはロマンチックさが欠けている! ……ごめん藤堂さん、これも全てこの貧乏学校のせいなんだ。今は気にしないでくれ。
「えっと。何かな西園寺君? 屋上なんか何もないと思うけど」
藤堂さんは屋上を見回しながらそんなことを言う。
なんてプリティー。
そして分かっているんだろう? 僕の、気持ちを。
「藤堂さん」
「ん?」
「ずっと伝えたい気持ちがあったんだ。勿論君なら分かってるよね」
ここでウインク。彼女の気持ちは僕にメロメロ。
藤堂さんは眉をひそめる。感情が揺れているんだね。可愛い人だ。
「何?」
「僕の彼女になるんだ。そして二人で最高のスクールライフを送ろう」
「……」
藤堂さんは目を見開いて、動かなくなってしまった。
全く。僕も罪な男だ。藤堂さんはこうなるなんて夢にも思わなかっただろうに。こんなプレゼントを差し上げるなんてさ。
僕は髪をかき上げ、彼女を観察する。ふっ。
藤堂さんは目線を何度もうろうろさせると、頭を下げた。来たね。
「ごめん! 無理です!」
「……」
え?
「西園寺君にそんな気持ちないから。全然全くない。というか西園寺君浮いてたから話しかけてただけで、勘違いしないでほしい。ごめん」
そう言うと藤堂さんはそのまま屋上から出て行った。
オーマイガー。何という事だ……。
***
僕は西園寺怜。
完璧な人間だ。
前は僕の魅力を分かってくれない女子に告白してしまったが。今回は違うのさ。
この間は相手に完璧さを求めすぎてしまった。だけどそうじゃなかった。相手の不完全な部分も愛さなければね。
更に前回の反省を生かして、使用人たちを使い、屋上を飾り付けておいた。
地面には人工芝を張り、赤や黄色など、色とりどりの造花を飾り鮮やかにし、周囲には背の高い造木を並べて森のようにした。
もうここは美しい森の中。ロマンチックだ!
ここまで努力したんだ。この気持ち伝わるよね。
そして今、目の前にはプリティーだが、少しとぼけた雰囲気の加藤さんが……。
「ごめん! むり!」
そういって去っていた。
オーマイガー。
僕は完璧なはずなのに……。
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