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掌編

完璧な僕

作者: 綴 詠士
掲載日:2026/01/01

 僕は完璧だ。


 だからプリティーな彼女に告白するのさ。

 

 僕の名前は西園寺怜さいおんじ れい。僕より完璧な人間はどこにもいない。

 

 最高の家柄、最高の容姿。パパやママに愛され、すくすくと育った真っすぐなハート。


 トイレの鏡で自分の姿を覗き込む。


 パパから受け継いだブロンドの髪。ママの品と美しさが同居したこの瞳。神が僕に与えた彫刻のようなこの顔。なんてすばらしいんだ!

 

 こんな僕に魅了されない女性はいないだろう?


 クラスで一番の美少女。藤堂あかねさん。


 黒い髪を背中まで伸ばした清楚な雰囲気。美しく整ったその顔。モデルのようなそのスタイル。


 なんて僕に相応しいんだ。


 今日だって僕に挨拶してくれたその気持ち。僕には伝わってるよ?


 当然彼女は僕の告白を受けるだろう。


 そして僕との甘いスクールライフを二人で満喫するのさ。最高だね。


 放課後、僕は藤堂さんと屋上にいた。


 屋上の周囲には緑色の柵で囲われ、あるものは白い給水塔くらいなもの。灰色のコンクリートに覆われた殺風景な場所だ。


 吹きさらしなので風も吹き抜け、折角セットした髪が崩れてしまう、ああなんて不愉快なんだ。


 ここは愛を伝えるのにはロマンチックさが欠けている! ……ごめん藤堂さん、これも全てこの貧乏学校のせいなんだ。今は気にしないでくれ。


「えっと。何かな西園寺君? 屋上なんか何もないと思うけど」


 藤堂さんは屋上を見回しながらそんなことを言う。


 なんてプリティー。


 そして分かっているんだろう? 僕の、気持ちを。

 

「藤堂さん」


「ん?」


「ずっと伝えたい気持ちがあったんだ。勿論君なら分かってるよね」


 ここでウインク。彼女の気持ちは僕にメロメロ。


 藤堂さんは眉をひそめる。感情が揺れているんだね。可愛い人だ。


「何?」


「僕の彼女になるんだ。そして二人で最高のスクールライフを送ろう」


「……」


 藤堂さんは目を見開いて、動かなくなってしまった。


 全く。僕も罪な男だ。藤堂さんはこうなるなんて夢にも思わなかっただろうに。こんなプレゼントを差し上げるなんてさ。


 僕は髪をかき上げ、彼女を観察する。ふっ。


 藤堂さんは目線を何度もうろうろさせると、頭を下げた。来たね。


「ごめん! 無理です!」


「……」


 え?


「西園寺君にそんな気持ちないから。全然全くない。というか西園寺君浮いてたから話しかけてただけで、勘違いしないでほしい。ごめん」


 そう言うと藤堂さんはそのまま屋上から出て行った。


 オーマイガー。何という事だ……。


 ***


 僕は西園寺怜。


 完璧な人間だ。


 前は僕の魅力を分かってくれない女子に告白してしまったが。今回は違うのさ。


 この間は相手に完璧さを求めすぎてしまった。だけどそうじゃなかった。相手の不完全な部分も愛さなければね。


 更に前回の反省を生かして、使用人たちを使い、屋上を飾り付けておいた。


 地面には人工芝を張り、赤や黄色など、色とりどりの造花を飾り鮮やかにし、周囲には背の高い造木を並べて森のようにした。


 もうここは美しい森の中。ロマンチックだ!


 ここまで努力したんだ。この気持ち伝わるよね。

 

 そして今、目の前にはプリティーだが、少しとぼけた雰囲気の加藤さんが……。


「ごめん! むり!」


 そういって去っていた。


 オーマイガー。


 僕は完璧なはずなのに……。





 

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