表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

かんざしの中には

ここは日本橋の旅籠。


そこには一匹の美しい狐がいた。


その名はおさき。


おさきは幸せを感じることなどほとんどなかった。


そんなおさきが少しの幸せを感じた、その時、新たな絶望がおさきを襲う。



 おさきのかんざしの中には(くず)の葉が入っていた。といっても、普通の葛ではなかった。白い葉をした葛だ。白い葉のつく葛は森の奥底に隠れていた。森の奥底ならどこにでもあるわけではない。稲荷神社の中だ。

 

 森の奥底にその神社はあった。だが、その神社には本殿がなかった。あるのはお稲荷さんと、寂れた鳥居だけだった。つまり、その神社は自然と、稲荷だけを祀っていた。その鳥居をくぐると、白い葛が見えるのである。白い葛だらけのそこは、まるで天国のように幻想的な場所だった。


「ふーん、、これは綺麗だな。まるで天国にいっちまったみたいだよ。」


 重悟朗はかんざしを見つめながらそう言った。


「でも、あの娘はこれとは違ったのをつけてたぞ。」


 おさきの心の臓が大きく脈打った。不思議な恐怖が襲う。だが、平静を装うために安心したような顔を見せて、

「やっぱり、違いましたね。相手が私の特注のかんざしを持っているのは気味が悪いので、良かったです。ちなみに、色はどんなでしたか?」

と言った。


「色は黒。墨を垂らしたみたいな。」

 

 重悟郎は平然と言った。おさきは息を呑んだ。息を呑む音が重悟郎に聞こえるくらいに。


 (まさか、あいつらがここにいるなんて、、!!)

おさきは自分の顔が強張るのを感じた。重悟郎の姿が見える。


「そ、その、私の知り合いに私のかんざしの色違いを持っている人がいて、もしかして、その人なんじゃないかと。思って、、、。驚いただけです。。。」


おさきはたどたどしく言った。重悟郎は不思議な顔をした。


「やっぱり、いつものお前じゃあないな。そんなにそいつが気になるのか?親友だったりしたのか?」


「そうです!!親友だったんです、!」


 おさきは、重悟郎にうまく誤魔化せたと思うのと同時に、またもやあの恐怖感が襲った。


 それに構わず重悟郎は話し続けている。


「お前に親友がいるとはな。」


重悟郎はわざと驚いたような顔をした。おさきはいじけた顔を見せて、

「いますよ。」

と言った。だが、心臓の音は大きく鳴り響いていた。


「それで、どうだったんですか?私のと色違いだったんですか?」


 おさきは心の中で祈った。どうか、色違いではありませんようにと。おさきはわずかな可能性を信じていた。


「だけど、私のと全く柄が一緒だったわけじゃあないでしょう?」


 おさきは手汗を前掛けで拭いた。おさきがこんなに緊張したのはいつだっただろうか。


「色以外は全く一緒だったぞ。中に黒い葉のようなものがあったけどな。」


 重悟郎はさらっと言った。






 そのあとのことは、おさきははっきりと覚えていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ