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第三話 謎の少女

「やれやれ……何を願ったらこんなことになるんだか」


 ミラの前から消えた少女は、瞬時にフィオナのいる付近の上空に現れ、独り言を呟く。


 その時だった。


 ズシャァァァッ!!


 怪物の息の根を完全に止めたフィオナが、跳躍して少女に襲いかかる。


 少女はその攻撃を軽々と躱してフィオナを地面に叩き落とした。フィオナと共に、少女もゆっくりと地上に降下する。


 地面と激突したフィオナは、先程とは一変して全く笑顔を見せず、顔をぐにゃりと歪めて少女を睨みつけていた。腕が延び、完全に四足歩行状態になっているその肢体と形相は、獣以外の何者でもなかった。


「フィオナ」


 その名を呼んだ少女の声には、冷たさも怒りもなかった。まるで、幼子を諭すような優しさすら滲んでいた。


 フィオナの体がびくりと震えた。


 一瞬の動揺を見せた後、まるで獲物を見つけた捕食者のように、彼女はゆっくりと少女がいる方向へと距離を詰めていく。


「さあ……来い」


 瞬間、フィオナが凄まじい速度で少女に向かって拳を振る。怪物をも凌駕した一撃、それを、間一髪で少女は横に躱す。


 「フィオナ、私は……」


 少女が言葉をかけようとするが、フィオナは攻撃を継続する。地面が一瞬で黒く変色し、そこから伸びた無数の棘が少女を突き刺す――が、それは残像。


 少女は、すでにフィオナの背後に周り、彼女の後頭部に手のひらを翳す。


 だが次の瞬間、フィオナの後頭部が裂け、そこから生えてきた三本目の腕が少女を吹き飛ばした。予期せぬ攻撃を受けた少女は、頭から血を流しながら立ち上がる。

 

「本当に……厄介だな」


 そう言いながら、少女は両手に魔法陣を展開する。


「次で、終わらせる」


 朝日が、昇り始めた。

 暖かな陽光が、二人を照らす。


 一瞬の、静寂。


 動いたのは、同時だった。


 フィオナは右腕を、引き絞った弓のようにうねり、空間を切り裂くような音を立てながら少女の喉元に振り翳す。力任せの理性を持たない打撃、それは、少女にとって隙だらけだった。


少女はすれ違いざまに、フィオナの胸元に滑り込んで振り翳された腕を避ける。そして、フィオナの腹のあたりに魔法陣を展開した手のひらを当てて詠唱した。


「――律命韶(りつめいしょう)、ここに告ぐ。彼の者の穢れを禊ぎ祓え」


その瞬間、フィオナの全身が発光を始めた。


「ぐ……あ……!」


フィオナが呻くと同時に、「それ」が次第に彼女から分離し、霧散していく。額の角もなくなり、手足も元通りになっていった。


「おやすみ、フィオナ。今はただ、安らかに」


その一言と共に、光が静かに収束していく。


フィオナの体が、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。


重力に従い、彼女は少女の腕の中へと倒れこむ。その寝顔は穏やかで、まるで幼い子供のようであった。


「ふう……間に合った……」


その時、物陰に隠れていたミラが飛び出してきた。


「フィオナ!しっかりして、フィオナ!」


 ミラは泣きながら彼女の名前を繰り返し叫ぶ。


「大丈夫だ、死んではいない」

「あなたは……?」


 フィオナの無事を確認して安堵したミラは、そう少女に問う。


「私の名前はエリィ。お前たち『器』を回収するためにここに来た“回収者”だ」


 少女――エリィは、そう答えた。

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