エスト王国
クレメンテ達と森の奥にみを隠したルシアスは幼竜のバルアにマナ達が無事脱出できたか思念を送る。バルアからマナ達が無事でシアーノ伯爵領内に入りひとまずは安心であろうことを聞いたルシアスは安堵してクレメンテの娘リータも無事であることをクレメンテに伝えた。
クレメンテも娘が無事であることに安堵してルシアス達に今後どうするかを尋ねると今後の事を考えてこの島国の状況をほとんど知らないルシアス達はクレメンテになぜ内乱が起きたのかそして国の情勢をを尋ねた。
この島国の名はエスト王国という名であり事の発端は王であるゼルディアと王妃リエーテの突然の死から始まり王位継承権を持つ幼き王子である兄シンビスと弟メリオスのどちらを王位継承者とするかに対して兄であるシンビスこそが正当なる王位継承者とする宰相ラファール。
ラファールの権力掌握を恐れ弟メリオスこそがゼルディアとリエーテに愛された王子として王位を継ぐべきと主張するマラガン公爵、そしてその対立に対して民の為にこの争いを終結し自らが王位を継ぐと宣言したアダイト大公の三つの勢力。
そして中立の諸侯達はシンビスとメリオスは非常に仲の良い兄弟であるためお互いに争う事を望んではいないことを知っていた。そうした兄弟愛を知る諸侯の多くは宰相ラファールやマラガン公爵そして野心深いアダイト大公に組せず中立の立場を取り事態を憂れんでいた。
エスト王国はこれまで複雑な勢力が入り混じっているため互いに慎重になり王位継承の戦いは小競り合いを続けている程度の状況だったというが中立の諸侯達の中で大きな影響力を持つアルバ侯爵が動いた事によって状況は変わるであろうことをクレメンテはルシアスに告げた。
ルシアス達は再びマナとアルマそしてバルアと合流すべくシアーノ伯爵の元へ向かう旨を伝えるとクレメンテに自身はどうするかを聞くとクレメンテは娘であるリータが無事なら残された自身達は占領された港街の領民が不当な扱いを受けなければ投降し領民が虐げらるようなら命を捨てて戦うと返答した。
そんなクレメンテの話を聞いた老騎士がクレメンテにルシアス達と共にシアーノ伯爵の元へ向かい同伯爵と中立の諸侯達にアルバ侯爵とサヴィーニ伯爵が中立の立場を破り侵略してきた事そして今のエスト王国の状態が大きく変わり中立の立場を取る諸侯達が領地を守る為に各地の諸侯達にまとまる必要があることを伝えるように進言した。
クレメンテは暫く考えたのちに老騎士に賛成する衛兵や騎士、ルシアス達の説得もあり共にシアーノ伯爵の元へ向かうことを決断した。
次の日ルシアス達とクレメンテはサヴィーニ伯爵の兵士とアルバ侯爵の兵士に出会ないよう警戒しながら森を後にすると人道のない険しい山からシアーノ伯爵の元へ続く道へと向かっていった。