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1年A組の事件簿〜筆箱失踪事件編〜  作者: o
2章【犇めく陰謀】
6/22

EPISODE6 花鳥風月に暮れる

あぁ。

嘆きながら見る天井はなんと虚しいものなのか。

夕飯時、午後6時を回った頃だろうか立っているキッチンからはなんとも香ばしいを運ばせた波が鼻に突き抜けていくのが今にでも分かる。

あの怒号の様子だと二次試験のようなものがありそうだ。

つまり授業後の10分休みを使った二回目のお叱りが来る合図のようなものだった。

たっくんはその事に気づいていないようなので伝えてあげることにした。

すると、顔色悪くゆっくーりとガタガタさせながらこちらを振り向いてくる。

どうやら伝えるまでもないようだ。さすがのたっくんでも学習くらいはしているであろう。

そうだと信じ何も言わずに頭の方向を戻してあげた。


案の定丁寧に聴き込んでいた姿とは裏腹に鬼の形相をして話している元はかなり早い足取りでやってきた。

「頑張って」とだけ残すとあぁ、とたっくんらしくない情けない声が漏れ出たのが聞こえた。


ももちゃんのことが絡む口喧嘩には口出しするべきではないと漢である二人の約束を交わしたのを、腹を括ったのを思い出した。うっかりしてしまい危うく参入してしまうところであった。


彼女の口喧嘩は実に幼稚園からの受け継ぎ。多分高校生までは通用すると思う。

何故なら彼女には圧倒的な語彙力がある。蓄えすぎた語彙力が時に口喧嘩中にどうしても暴言など、会話でないもののあまり好ましくない表現をしているものだった。


ぼぉ、と手帳を眺めているとうっすらと痴話喧嘩ではないものの一方的な罵声大会が繰り広げられていた。

あんなに口が荒くても一緒にいると楽しい。

"ただ"怒らせると怖いというだけだ。それだけだが扱いが難しいということ。

普段は丁寧に話してくれる性格だが...。おそらくたっくんとはチグハグなのであろうか。

あんな様子だけどおそらくだが下校は一緒にはしてくれるだろう。3人揃って。


な〜んてことを考えていると1、2回は聞き馴染みのあの声が耳に響く。


時「やぁ、何してはるん?まいどな海人くん。」


聞き馴染みはどうやら時くんのようだ。それも変わらずの関西弁で。

僕は時くんのことについて色々訊いてみることにした。


僕「時くん、君の出身は京都って言ってたよね?どうしてこんなトコロ(この学校)に来たの?」

時「コンナトコロ!?おぉ、ええ質問やな!答えてやってもええけど聞きたいか?」


思わず(かぶり)を振る。もちろん聞きたいわけだ。


時「ええがっつきぶりやな。かまへんで教えたる。」

僕「うん!お願いします。どんなことでも、ね。」


僕はどうやら意味ありげなことを言ってしまったが全然その気はなかった。癖だ。

相手は首を傾げる(不思議そうだ)が僕にはさっぱりな顔だった。


時「う〜んとな引っ越しの理由は親の都合っちゅうかよくある出張でこっちに来たみたいな感じやで。

単身赴任やないけどこっちに来たって感じで特に〜って。ウチはそないには思うてへんで。」

僕「うん、そうか。なかなかに大変だね」

時「まぁそないに大変やないけどね。どっちかっちゅうと身支度のほうが難儀やったかな笑。」


そうなんだ、あっけない顔で聞き流してしまったのか相手の顔はポカーンとしていて今にも

「おーい!ちゃんと聞いとるか?」と言わんばかりの顔を。

どないしよ話すネタが尽きてしもたやないか。おっと、つられてしもうた。

誤魔化し程度の咳払いを2、3回。気休めにしかならないがこれでいい。

整えたあとに次なる質問事項を思索中。


はっ、と浮かんだ考えはこうだ。

「推理小説は好き?または君の好きなことは?」自分についての質問しか練ることができなかった。

だが、これは最善の質問だと思うんだ。「自分という存在」を知ってもらう機会にもなるはずだ。

迷わずに真っ直ぐな目で時くんを見つめると言った。


僕「時くんは推理小説とか好きかい?」


帰ってきた返事はこうだ。


時「うん。好きやで、よぉみてんで。特に見てるんはやっぱりコナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズやな。あれめっちゃ引き込まれるっちゅうかすごい読んどる最中に考えさせられるやんな。あのホームズとワトソンとのコンビは※なんしか最高やんな。」

僕「わっかる!あの類稀(レア)な才能かつ敬服するほどの圧巻な推理力!たまらなく面白い。読んでいる最中にも問いかけられる謎に対する懐疑心。それを解こうと参加するけど、予想の斜め上を行くような推理。あっと息が詰まるような苦しさを解いてくれる推理力は毎回耳を疑うほどになるけれど、整理していくうちに必ず分かる。奥が深いよなかなかに。」

時「ごっついな!シャーロック愛が止まれへんほなん笑」

僕「うん!ほんんとに。」


直後に咳払いをした。

少々取り乱した。いや、取り乱しすぎた気がする。どうやら八雲くんとは趣味趣向がぴったしのようだ。

ふと、脇目に横を見る。

まだ続いているが、あの独特な口調が混ざってくると大体もうすぐ口喧嘩は終了するという合図のようなものだ。「ごめんね。怒りすぎた。」だ。なんと心の広し持ち主だろう。

時間はかかるが了承してくれる優しさが彼女の持ち味だ。


再び、八雲くんのほうへ顔を向き直す。ごめんねと言い、気を取り直す。

大丈夫だとさ。では問題ない。心置きなくお話ができる、思った矢先に口喧嘩(一方的)が終わった。

先に話し変えたのは八雲くんの方だ。


時「あの子、何をそないに怒ってるん?怒られとる子はなにかしたん?なぁ。」

僕「んん〜まぁあの二人には...そっとしておいてあげておくれよ。たっくんはあぁ見えて意外とデリケートな部分があるんだ。二人のあぁいう姿を見ていると引き止めたくはなるんだけどそっとしておくほうがいいんだよ。」

時「そらなんでやねん」

僕「それはね、ももちゃん一度スイッチ入っちゃうと手を付けられなくなっちゃうんだよ。僕含めて三人とも古馴染みではあるんだけれども、どうかな。ふと気がつくといつも口喧嘩が展開されているんだよ。そして僕は毎度のごとく傍観者ですと。」

時「そら結構じゃんくさいね」

僕「うんそうなんだよ。あの輪に無理に介入して仲裁しようとしても無駄だよ。弾かれて牙を向けられて飛び火を食らうのは僕までも怒られてしまう。そうなりたくないだろう。だから干渉しないであげたほうがこちらとしてのリスクは低い。旧友の中ではあるものの救えないものもあるんだよ。それが残念ながらね。

だからといって見過ごすわけには行かない。だからさっきの『ごめんね。』のようにももちゃん側から折れていただければたっくん回収に望めるわけだ。理由(わけ)はここにある。」

時「はぇ友達付き合いのこともそないして考えられるんやな。せやさかいあの二人のことの面倒見れとるわけやな。通りで思ってん。海人くん、ごっついな。」


そこまで言われると少々照れるが、友達としての責務を全うしているだけだ。二人の幼馴染としていられるように日々の努力。泥仕事買ってまででも守り抜いて見せる義務がある。

あるというよりもどれだけできるかの自分に対しての制約だ。

一緒にいるために条件はいらないだろうが、僕はこの貴重な()()()()を終わらせたくないがために僕はこの場で腹を括っているから二人とそして八雲くんとも今、現在形で会話ができているわけだ。

終わらせたくない。自分を、自分という価値、自分という存在を忘れるわけには行くまいと、日々の精進、そのために努力は惜しまない。


守るって決めたんだから。

※なんしかとは、関西弁で言う「とにかく」である。


明けましておめでとうございます。

一挙放送のドラゴン桜を見ていたら一日潰れてました笑

構想を考えるのに気分転換で視聴していましたらいつの間にかどっぷりだったという了見です。

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