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1年A組の事件簿〜筆箱失踪事件編〜  作者: o
1章【you and me】
4/22

EPISODE4 必要なもの

農家は広大な土地を持ち、自分で野菜を作り、それらを売ったり買ったり。

人それぞれの生き方があるというものだが、やはり自分の性分には合う。

必要なものを継ぎ足し不必要なものを断捨離。

まるで百年間続く秘伝のタレを継ぎ足す焼き鳥屋のようなものだ。

いやでも違うな。いや似た、近しいものだ。

出会いというものは必然的であり必要なものだと思う。


夕方(16:00)を過ぎた頃はやはりだが、西日が自分の部屋に赤い光が差し込んでくる。

お母さんが仲の良いお隣さんから「お土産(おすそわけ)」と静岡の一番茶。

新茶をもらってきたとのこと。

煎れた緑茶の色は鮮やかな緑色で新緑が映える。

「色は静岡 香りは宇治よ 味は狭山でとどめさす」というのはこういうことか。

言葉通り発色が良く、心の癒しになる色だ。


時間的にはあれだがとふと気づくものの食欲が勝ってしまう。

我関せずともな気持ちで戸棚から眠らせておいた煎餅があったなと今思い返す。


リビングで入れた新茶の香りを楽しみながら赤に染まる部屋の中、カーテンを閉めずに読書を楽しむ。

はっきり言って、カーテンを全ビシャで締め切りにしてから室内照明で鑑賞したほうが余程目にもいい。

西日ということもあるので太陽の角度が自分とほぼ真横にあるので光は遮蔽物を掻い潜りながら自分の部屋に漏れてくる。

御生憎様でありまして僕の寝室のカーテンは普通のレース生地のカーテンではない。

だが、カーテンを閉めずに読書という謎の背徳感に駆られ、紙を繰る手が止まらない。


遮光カーテンにはそれぞれに遮光等級が設けられている。全4種で完全遮光と1級から3級までの3段階の等級。

おそらく僕の遮光カーテンは3級の遮光性。最低ランクだ。

遮光率が最低ランクだとしても99.40%は遮光するのだという。

両親が勉強を捗らせるならば最低限の遮光性を持ったカーテンであったほうがちょうどいい塩梅だと言っていたのを思い出す。


一段落ついたところで本を捲り栞をかけて一休みと行こうか。

ふぅと微かにため息を付くと気づけば座っている椅子を船漕ぎしてしまっていた。

はっ、と思えばそばにおいてあったスマートフォンが飛ぶ虫の羽音のように鬱陶しかった。

なんだよ、とロック画面に届いたポップを見ると、たっくんからだった。鬱陶しいと思ってごめんよ。

申し訳ない気持ちが込み上げたが要件はこうだ。




【仲良し3人組♪】

16:54卓『二人とも!』

桃『どうしたのよこんな時間に連絡よこして。』

16:55 卓『それがさ折り行った話なんだけどさ』

卓『八雲くんとLIME(ライム)を交換してやり取りしてたんだけどさ、()()()L()I()M()E()を作らないかって。

桃『なに。全然折行ってもないじゃない。』

16:58 卓『ももちゃんは心置きなくOKするってわかってるけど問題はかいちゃんだよ。』

16:59 桃『かいちゃん。あんたはどうなの?』




【仲良し3人組♪】のようなグループラインが苦手だ。

そのため淡々と進むやり取りに追いつけなかった。

自身が機械音痴なためにかなり文字を打つのに手こずるからだ。


二人にも僕が機械音痴だと伝え、配慮をしてもらうようになったが。トークに割り込めなかった。

そのような人間が総勢40名も招待されているチャットに果たして僕は割り込めていけるのだろうか。

幸い、二人とも気を使ってくれているのかももちゃんのトーク以降は追い打ちをかけるように通知は来なかった。


暫くしてなんとか言葉を絞り綴る事ができた。その時には十分以上は経っていただろうか。送信した時間がトーク画面に残るのでそのために確認ができた。




17:09 僕『うん。いいと思うヨ✌』

17:10 桃『笑笑十分かけてそれだけってwすっごいおじさん感あるwww何その絵文字w超ウケる笑』

卓『ほんとそれwやばい苦しい笑』




すぐに既読がつくのは暇なのか若者のネットサーフィング能力だろうか。

画面越しに赤面してしまった。俄然耳が熱くなり体中に熱が走った。

「夕焼けのせいで体が赤くなっている。」という言い訳を考えたが、しかしもうあたりは暗い。日の入りをして太陽は見えない状態にある。そうなるとあっという間に頭をフル回転させて考え出した最高な言い分はすべてもみ消されてしまう。

若干嘲笑(ちょうしょう)された気もするが保留にしておいて。


後に聞いた話だと、僕が考えに考えひねり出し画面越しで二人の腹筋を壊しかけた渾身の一文はおじさん構文だったらしく、おじさん構文について調べると、隣りにいた僕はひどく赤面していたらしかった。


金輪際こんなことはゴメンだと心に誓いかけたが、俄然自分自身もこのまったくひどい機械音痴はどうにかしたいと誰がために?とは思わずに磨きをかけようと思う。

その後も二人(僕を除く)のメッセージのやり取りが続いた。

これはまるで裁判のようで、弁護士対検察を判定する裁判官の構図にそっくりだ。

美しい三角形がこの場で構築された。

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