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1年A組の事件簿〜筆箱失踪事件編〜  作者: o
4章【収束へ】
18/22

EPISODE18 一匹狼の末路

今も尚さまよい続けるこの問題はいつになったら解けるのだろう。

人生わからないことだらけ。多分、東大の赤本並みの厚さの悩みが出てきたりする。


主犯格の伊藤吉政、そしてその取り巻きの齋藤と望月は保健室に連れて行く前に制圧されていたそうだ。

目立った外傷はなかった。話によると出ていった時には既に一方的に攻撃されていたが、軽く往なして横転させた。元ヤンだけじゃなく、学生時代から多彩だったようで、空手では黒帯だそうだ。

空手についても良くはわからないがとにかく僕のような初心者からするとめちゃくちゃすごい段位の人だということはわかった。

黒帯に見合わない相手の往なしで相手を制圧とは、伝説の元ヤンだけあったのかもなと思う。


ー保健室ー


時「すんまへん、こないになるまで放っとって。海人くんの言う通りやった」

僕「いいんだよ。校長先生が三人をやっつけてくれてもういじめが出ることはないよ。」

時「ウチのために色々してくれて、なんて言うたらええんやろか。」


程なくして校長先生が息を切らして教室に滑り込んできた。


僕「先生、廊下は走らない、教室に駆け込んで入ってこない。きちんとしてください。」

時「どっちが先生かわからへんね」

校長「うーん、手厳しいですね」


笑いがだんだんと込み上げてきたのか二人とも高笑いしている。

釣られて僕も声に出して笑ってしまった。あはは。一番やばい笑い方は校長先生かな。

ブハハ、もう吹き出してる。八雲くんは意外と上品に口許を押さえて笑ってる。


保健室にある壁掛けのアナログ時計を首だけ向けて見る。何時だ...5時、5時、5時16分。

5時16分!?


僕「すみません!この後予定があるので、一足先に御暇させていただきます!本日はありがとうございました!」


軽く足踏みをしながらないはずの腕時計を指差す仕草を焦って見せて何回も浅くペコペコとお辞儀をして見せる。


僕「じゃあね八雲くん!また明日ね!」


声には出さずににこやかに笑いながら手を振るだけで別れを告げた。


ー会議室前にてー

約束の時間を最低10分は過ぎている。学級委員の発議が遅れているといいけど。


願いは叶わず僕を待っているのは二人に増えていた。しくじりの気持ちと無理な嘘をついてしまった気持ちが同時に込み上げてくる。


桃「ずいぶん遅くなかった?寄り道でもしてたの?それとも...」

僕「ごめんごめん、さぁ行こうか。」

卓「僕より遅かったね、もう10分は待ったよ。」

桃「なんか話してたけど、何だっけ?」

卓「かいちゃんの悩み事について」

桃「そう、それ!」

僕「なにそれ、悩み事吐くようなことした?」

桃「まったく、鈍いんだから...」

卓「カ・ノ・ジョのことじゃないの?お熱いですなぁ!」

僕「やかましい。大体、恋愛には疎いってわかってるでしょ?そういうのはついていけないよ。悩みというよりも、原田さんの筆箱について考えているんだ。君たち、すっかり忘れているでしょう?」

桃「そうだったわね、忘れてるのはたっくんなんじゃないの?」

卓「忘れるわけ無いやん、ずーっと考えてましたけれど!」

桃「あっそ」


愛想尽きるのが早い。

どんだけたっくんに興味がないのか。


桃「それですみちゃんの筆箱、どこにあると思う?」


すみちゃん…

誰?って聞こうと思ったが会話の流れ的にも聞く必要のないことなので敢えて聞かないこととする。


卓「すみちゃん?誰?」


先手を打たれた、競うつもりはないが僕も行っておけばよかったと思う。


僕「言わなくてもわかるでしょ」

卓「ん?あぁ、そっかそっか原田さんのことね!」

桃「...」


ちゃんと声に出して話してはいないがおそらく「合っている」ということだろう。


僕「そこで何だが、一つ良いかな」

桃「何?」

僕「謎、解ける気がするんだ。」

卓「ホンマでっか!?」


なんか聞き覚えがあるフレーズが出てきたが、先を急ぎたいので続ける。


僕「あぁ、鍵はいじめっ子たち、伊藤たちが知っているはずだよ。」

桃「確かに、八雲くんに指示して隠させたのは知っているけど、まさか伊藤たちが隠し場所まで知っているとはわからないじゃない。」

僕「確かにそうはなるね。でも、彼らなら盗んできた筆箱をひったくって自分たちが隠す、ということもできるよね。」

卓「うーん。でもさ、一つ引っかかることがあるんだけどさ、いい?」

僕「どうぞ」


手を差し出しながら先を促す。


卓「アイツラが知的に何かを働かせて器用に物をカンペキにわからないように隠すなんて芸、できるのかな?そうなると、本当にひったくられずに絶対に分かりっこないところに八雲くんが筆箱を隠した、とも言える。どう?」

僕「うん、大体の情報で今は完結するけど、肝心の隠し場所なんて狭い校舎と言い、体育館の天井の鉄骨の上にあると言われてもまず届かないし人を呼ぼうにもかなりの労力。

ある程度の場所は絞れたとて、何しろ情報が不足しすぎているのでね。」


どこに隠すのだろう、例であげた鉄骨の上だったらそもそも論届きませんし、鍵のかけられた倉庫の中とかはたまた倉庫内の大きめの備品に隠されている、というケースもまた然り。

最近何かと家事の手伝いとかをやらされてできたささくれを弄りながら深く考え込む。


桃「誰が隠したのか、どこに隠したのか、そもそも隠そうとした動機は?」

僕「何事にも()()()()()()は大事だよ。あまり先入観に囚われるのは探偵としてあるまじきことである。ここはホームズへの道のり入門編だよ。」

桃「あぁ!私としたことが...」

卓「言われて気づいたんじゃん。」


小言でボヤいていたが近くだったので何を言っていたのかはっきりと聞こえたようだった。

「あぁ?」とドスを聞かせた低い声。ももちゃんとは思えない声質で迫りくる。

この時に一瞬だけ顔が桃ちゃんフェイスから暗闇から見えるとてつもなく強烈な般若のような顔になっていた、気がする。たっくんは何かとももちゃんを怒らせるようだ。怒りやすいのか、小言が多いのか。


僕「喧嘩をしに来たわけじゃないよストップ、ストップ。」


両手を持ってきてまぁまあ、と二人を離し静止させた。そして咳払いをして続ける。


僕「もう日が落ちかけてきてるよ。歩きながらでも話せるから取り敢えず学校から早く出よう、先生に見つかると厄介だからね。」

桃「そうね、()()()()()()も明日に回しましょう。証言者はいっぱいいるし逃げないからゆーっくりお話できるもの。」


八雲時が標的になり、伊藤吉政が主犯格のいじめは校長先生による制圧と密告によって収束。

彼らには三ヶ月の謹慎処分が下された。

尚、原田麻純の筆箱失踪事件に関しては盗難の動機がわからないのと、誰が隠したのか、どこに隠したのかの問題が渦巻いている。

風の噂のように人伝として聞き入る情報は何より耳に入りやすく、頭にも刻まれやすい。

筆箱失踪事件は他クラス、学年の垣根を超えた全校の耳にも入っていて良心的な人たちは協力的に名乗りを上げて捜索に力を入れているが、どこにも見当たらないとのこと。

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