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1年A組の事件簿〜筆箱失踪事件編〜  作者: o
4章【収束へ】
17/22

EPISODE17 決定的な瞬間をカメラに

喧嘩は良くないのかもしれない。

でも、正義が愛するものや本気で守りたいものをかけて喧嘩をするのなら、その喧嘩はかっこいいと思うんだ。

あまり好きではない無糖の紅茶を無理矢理にでも飲み込む。

やはり甘味料は大事だと今一度再認識した瞬間だった。

無糖の紅茶は無理矢理にでも飲み干せてもいじめの件は水には流せない。

はぁ、と軽くため息を付いてみる。すぐ隣のももちゃんが聞いてきた。


桃「どうしたのため息なんて、彼女欲しいとか?」


わかってて聞いているのか、それとも「いない」という言葉を聞いてからかうつもりなのか。

目の前の課題を形付けるのにも一苦労、部活と両立している人なんて以ての外。


僕「どうしてそう思うの」

桃「ん、なんとなくかな」


なんとなくで、意表を突かれてはこちらとしても気に留めない。

話題性のない、突発的で単発な会話で少々つまらないと感じる。もう少し...うーん。

なんというか、賞味期限のある会話をしていたい。

ため息が特に意味をなさないということもない、が恋愛に結びついてしまうのはさすが女子といったところか。


僕「なんとなくだと僕も困るよ。」


口許を押さえて声に出して笑った。やはり反応を楽しんでいたのか、カマをかけていたのか。

呆れてしまって声も出ない。何年経つのか、今まで一緒にいてももちゃんとこんな会話はしたことなかった。僕は消費期限よりも賞味期限を優先して選ぶ派であるが、どちらも良い所どりな会話をしていたいのは事実と言うまでもない。


僕「答えてもらわないとほんとに困るよ、内容の真理を教えてよ」

桃「ちょっとからかってみたかったから?」


何故に疑問形。こちらに質問されても...聞き手から話し手に回れって言われてるようなもんだよ。

会話の真理よりも厄介な問題だな。鬼畜の所業まである。


僕「それまたなんで」

桃「大人をからかってみたら一体、どんな反応するのかなって。ほら、かいちゃん昔から大人びてて何にでも冷静じゃん。だから、からかってみたらもしかしたら焦ってるかいちゃんが見れるかもしれないじゃん!」


そんな自信満々に言われましても困り果てるだけなんですが。クスクス笑ってる。

まぁ、ももちゃんも抜けてる部分があるからね、しょうがないね。だからといって動機を許すかという質問が来たら言語道断、NO。

焦ってるかいちゃんが見れるかもしれないじゃん、じゃないのよ。

今こうして何食わぬ顔でももちゃんの話を聞いてるけど右の耳から左の耳状態でかなり焦ってる。

君は充分僕を焦らせている。一番焦る瞬間はズバリたっくんに関してなんだけど。


僕「それで、続きはある?」

桃「続き?そんなのないよ、即興だもん。そうだね、続きは考えとくよ。」

僕「頼んだ」


やはり、賞味期限のない会話。続きを考えといてくれるのは良しとしよう。

日、伸びてきたね。

4月とはかなり日が伸びてきている。いま何月だっけ。あ、そうそう6月。

日が伸びているからもう暑いまである。そろそろ夏用の制服でも卸すか。


桃「続きできた、今何時かな?」

僕「5時だね。」

桃「正確には5時5分。惜っしいね〜」

僕「むかつく」

桃「アハハ、ごめんねあとちょっとでたっくん来るね。」


大体5時だと思って言ったのにこんの性悪女め。私を嵌めやがったな、ケッ!

学級委員の会議で少々遅れるたっくんを待っているけど順調に進んでいるかな。


ん、笑い声が聞こえる。会議中なので音を立てないでください的な立て看板があったハズだけど、騒がしいな。なんならやかましいまである。

(うるさ)いなと思い笑い声の方に目を向けると三人組の姿が見える。

もしかしたらと思い、ボーッと虚ろな目で昇降口を見ているももちゃんの肩を一、二回トントンとした。

ハッと我に返ったのか、どうしたのと小さな声で話す。例の集団に指を指す。

苦い苦い無糖の紅茶のボトルをなるべく音を立てないようにそっと置いた。


僕「あれって」

桃「あの伊藤とかいうやつじゃなかった?八雲くんいじめてたやつ。せっかくの顔とか台無しになっちゃうじゃん。」

僕「ほんとそれ」

桃「どこ行くのかな」

僕「多分ね...」


予想はつく、帰り際に八雲くんに耳打ちされたこと。これで片がつく。

彼は、(くだん)の三人組に()()()にご招待されたよ。そう言っていた。

何を言っているのか、親身になって聞いていたからこそ分かる。

彼には言っていないが、今度呼び出されたら校長先生と一緒に取り押さえる、先生と決めている。


僕「トイレじゃないかな。」

桃「え?」

僕「ほら、よくいじめをするときに上から水をかけるじゃん。それじゃない。」

桃「なんでそんな楽しそうに言ってるのよ」

僕「僕も、トイレ行きたいからさ。」

桃「もう、言ってよね?意味分かんないんですけど」

僕「ごめんね、ちょっと外れるね。」


的はずれなこと言っちゃったけどまぁ、バレはしないだろう。

急ぎ目に立ち上がり、紅茶は置いていく。

先生とは事前に打ち合わせはしているため、あらかじめ初定置にスタンバイしてもらっている。

話している最中に廊下を右折した。向こうは...やはり図書館方面だ。


スタンバイしてもらっているトイレに校長先生を呼び起こしに行く。入って3番目のトイレ、花子さんだ。

勝手な妄想だけど花子さんとして彼らを権力的に制裁してほしいとは思うっているが、それだと思っていた以上に強力な存在になる。

そもそもトイレに校長先生を置いておくということがまず異常だ。

先生に基づく承認なのでまぁ良しと考えておく。先生もちょうどトイレに行きたかったとノリが良かった。


僕「もう良いですよ」


ガタッ、少し物音がトイレに響いたが程なくしてドアがゆっくりと音を立てながら開く。

立て付けが悪いのか、それともわざとなのかわからないけどギシギシと蝶番(ちょうつがい)が悲鳴を上げている。


校長「ばぁ!ちょちょちょちょいまち!そんな顔しなくていいじゃん。」

僕「取り敢えず、そのライト消してください。職員室の備品が失くなっているって早乙女先生から聞きましたけどまさか先生の仕業じゃ、」

校長「ない、絶対ない、100%ない、断じてない、神に誓っても良い、先生取ってないよ。信じて!ね?」

僕「わかりました、早く消してほしいです。こんなところで叫びたくないので。」

校長「成浅さんは辛辣だな。」

僕「そうでもないですけど。」

校長「もう行こうか。」

僕「待ちくたびれました。」


ちょっとダル絡みが多い校長先生。こんな校長先生、この世にいるのだろうか。

はい、ここにいます。日本一生徒にダル絡みするユーモアのある校長先生です。本校の顔でありつつも自慢でもあります。


着きました図書館前。教室の前で様子を窺っているが、罵声は聞こえない。

その代わりにさっきと一致する笑い声。


校長「よーし、八雲!待ってろよぉ。今からあいつら(三人組)に物を言わせてやるぞ」

僕「あまり、調子に乗ると駄目ですよ。」

校長「ショボン」


なんですかその「ショボン」って。

司書さんはいないのか笑い声以外の目立った声は聞こえない。

話題が変わったのか八雲くんに(たか)って罵声を浴びせているのを初めて、目の当たりにした。


これはひどい。今すぐにでも、と行きたいところだが、八雲くんとの証言と一致させるために録音機で彼らの発言を録音しておく。

「カス」、「ヘタレ野郎」などの暴言や住居地域にこぞって「関西人なんだから面白いこと言ってみろよ」など。面白いことが言えないと殴る、蹴る、罵声を浴びす、しかも集団。八雲くんはなんの抵抗もなしに流されるがままに身を投げだしている状況だ。これ以上は見過ごすこともできないし、暴力を振るわすこともさせない。

合図を取り、ドアを道場破りのように蹴破る、とでも言いたかったが律儀にスライ戸した。


僕「それ以上の暴力は一切許さない、もちろん”今まで”のもだ。大人しくしろ。」


敢えて”今まで”を主張して強く言ってみた。


校長「停学処分か謹慎処分、どちらが良いかな。」


それは強すぎる脅しだ。僕だったら平和的解決を望むが相手がその気なら、受け止めよう。


伊藤「おいおい、なんの真似だよ。俺らはこいつをやさーしくじっくりとかわいがってやってんだよ。邪魔すんならマジで殺すぞ。」

校長「何だそんなの、喧嘩に道具はいらないぞ。自分の弱さを見せてるだけじゃないか。際立って見えて滑稽に見える。先生だってな平和に解決したいんだ。手を出すなら停学だからな、進路にも響くぞ〜。」


やっぱり教師の脅しが生徒にとって劇薬すぎる。磨きに磨きかかった鋭利なトゲを刺されるようなもの。


望月「あんまり俺ら怒らすなよ。小学のときに高校生ボコったんだぞ?」

校長「三人でか?」

伊藤「マジで、ほんとにムカつく。センコーだからって調子に乗ってんじゃねーぞ」

校長「校長()()だよ。強がんなよ〜、三人でボコされたら負けちゃうよ。」

伊藤「あぁ、マジで殺るわ。サシ張れよ。」

校長「...はいはい、言われなくてもやりますよ。」


喧嘩はあまり得意ではないので傍観者で行かせてもらおう。かなり卑怯かもしれないが致し方ない。

僕は知っている、校長先生の経歴を。

元ヤンで、昔のこの地域のヤンキー全員を統率していたとされている伝説のヤンキーだってこと。

まぁ、僕はそんなことは全く持って興味なし。

ヤンキー業界とか、そういうのはあまり通な訳では無いので伝説なんてただの眉唾物だと思う。

しかし、構えから明らかに素人とは、なにか違う物が見えていた。多分、付け入る隙がないんだと思う。


校長「殺るからには、本気でいかなくちゃな。死んでも知らんぞ。」

伊藤「いいぜ、かかってこいよ。大人だからって容赦しないぜ?大人しく死ね。お前ら下がってろ、こいつは俺が殺る。默まって見てろ。」


死とか、そういう話になるはずじゃなかったのになんだか縁起が悪くってもう...鳥肌立ちそう。

何なら吐き気もする。狭い空間で喧嘩するべきではないとは思いますが。

これ以上喧嘩に巻き込まれないように僕と八雲くんは戦線離脱する。


校長「後は任せとけ〜成浅!もう保健室行ってろぉ。運動してたら怪我しましたってテキトー()いとけ。」

僕「しかし、先生が。」

校長「いいっつんてんだ。任せんしゃい。」

僕「もう暴れてください。ただ程々にですよ、怪我も負わせないでください。(のち)に面倒ですよ。」

校長「無問題(モウマンタイ)!俺をあんまり舐めるなよ。」


中国の方言・広東語で「大丈夫」を意味するそうだ。

元ヤンの腕が鈍っていない限り信用していいのだろうか。

ちょっとヤンキー小説みたいになっちゃいましたけどお許しください。

三人組の最後の活躍の場を作ってあげたくなりました。

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