EPISODE16 正義のヒーローって
お邪魔したお家には、トランプ、UNO、人狼ゲーム、人生ゲームのような家族で楽しめそうなバラエティのあるカードゲームや、ボードゲームがあった。
気になって手にかけた箱はなんだか懐かしさを彷彿とさせる。
現在、たっくんこと井口卓のお宅にお邪魔させていただいている。
清潔感がある部屋に招待され、部屋にはかなりスペースが有り、ほぼ彼の趣味部屋と化している。
いつ始めていたかもわからないギター、押し入れには腐る程の様々なジャンルのゲーム、一生懸命勉強しているであろう参考書の山、ペンスタンドに入っている見たことのないおしゃれなボールペン、ベッドの上に無造作に置かれている目覚まし時計や、洋服が散乱されている。
これに関してはあまり清潔感がない。汚い。
とにかく、お邪魔していない間にかなり彼の環境も変化している。
うーん、何をして遊ぼうか。たっくんは何でも良い、ももちゃんも、何でも良い。
僕も別にしたい事はない、と言ったら若干嘘に感じるが口は閉じておく。
少しながらの気まずい雰囲気を和ませようとたっくんが開口。
卓「そういえばさ!本屋さんに寄ったときに見たカードゲームコーナー、そこでさ、メッチャクチャ面白そうなゲーム見つけたんだよね。」
ほう、では見せてもらおうじゃないか。少し気になり腕を伸ばして要求してみる。
卓「お、やります?」
僕「うん」
桃「いいわよ、ほんとに面白いの?」
卓「だって店員さんがポップで、でかでかと書いてるくらいだからね?そりゃあ、ご期待に答えてくれる代物じゃないと、ねぇ?」
たしかに、店員さんが面白いって思ってポップに書いてるくらいだから少しくらい、いやかなり面白くないと釣り合わない。
もしかしたら商品掲示法違反で少し高くつくかもしれない。中学生が起訴できるかな?
値段がいくらかは得も知れないが、内容量がちょっと薄いとがっかりするよね、的な感じ。
いつ買ったかはわからないがおそらく最近だろう。それは箱が物語っている。
サラサラとして角張った箱は潰れておらず、角度を変えてみたときの傷もそんなに多くない。
大きい字で『音速飯店』。そう書いてある。
箱を開けて説明書を取り出してゴホンと一つしているのを横目で見て説明を聞く。
卓「カードの早出しで中華を盛るゲーム、まぁ手札にある文字で中華料理を作ってトレイに順番にいれる。例えば、『ラー』のカードと、『メン』のカード。これで一品完成!
んでこのときに『とりけし』っていうカードがあってちょっと詰まったときとか、メニューの途中にこのカード出せんのよ。
このカードを変なタイミングで出しちゃうとゲーム詰んじゃうんだよ。
っとまぁ、面白そうなゲームですよ。」
レクチャーありがとうございました。小さな拍手を二人で贈る。
満面の笑み、とは言えないがとにかく笑顔で説明しているんだからやってて楽しそうだなと感じる。
後、普通に聞いてても楽しそうだった。
桃「質問」
卓「どぞ」
手を上げながらももちゃんが質問する。不満な点とかあったのかな。
桃「料理を作ってトレイに乗せるって、どんな料理を作ってもいいの?」
卓「よくぞ聞いてくれましたよ。」
桃「うん」
卓「どんな料理...どんな料理でも作って良いわけではないんだ。説明不足だったね。」
と、折りたたまれていた紙を広げてゲーム内でのメニューらしきものを見せてきた。いわばお品書きと言ったほうがきれいにまとまる。
卓「これ、この紙に書いてあるメニュー以外は出せないんだ。まぁ、ゲーム性無視すれば創作できそうだよね。」
一生懸命に座っていた。足がヒリヒリする。
正座を少し崩し胡座をかく。説明を聞く。
このゲーム性に引き込まれているのだろうか、感覚がないのか少し体が前のめりになっていることに気づいたのは説明を終わる頃だった。
卓「説明終わりっと、もう質問とかない?なかったら始めようぜ」
僕・桃『ないっす』
ゲームは開始、なかなか悪くない組み合わせ。全員の準備が整ったところで『注文!』と元気良く言うのが良いらしい。元気良く言うのが良いのかはわからないが。
勢いよく、『チャー』とたっくん、負けじと『ハン』と探すがない。ももちゃんに行かれた。
立て続けに『サン』を出したももちゃんに、待ってましたと言わんばかりにカードに手をかけたたっくん。
『ラー』を出した。『タン』、『タン』...あ、あった。
真似をして勢いよく出す。
『サン、ラー、タン』。完成した!満足感で天井を仰いでしまった。
目線を落すと、二人のカードが徐々に減っていっている。手札を見る。多い。
『ミソ』、『ラー』...『メン』、『メン』がない。あ、『とりけし』カードだ。
急いで、おぼつかない手でカードを出す。
◇◇◇
時「ほんで、ウチはどうすればええん」
伊藤「あのさ、その喋り方うざいんだけど、毎回毎回聞いてて腹が立ってくるわ。」
齋藤「アッハハハ!言われてるぞぉ、ヘタレェ!」
そん時肩を小突かれ、ノックするように頭を叩いてきた。
痛くはないけど、なんとのう心臓を叩かれとるような気がしてしゃあない。
望月「おい!なんか返事したらどうなんや?」
齋藤「ハハッ!何だよその言い方。おもろw」
伊藤「やめろよ、耳が痛いわ。どうせこれが終わったらこいつは用済みなんだし。」
望月「まぁ、いくらクソ教師野郎共が俺等を監視してても見てないところだったらジユーだしな。」
なにか喋るにも、「やかましい」、「気色悪い」で済まされるし逆に黙っとると、「なんか言うたれや」と言われる。耳や髪を引っ張られるわ、小突かれるわでもうウチも懲り懲り。
正義の味方は遅れてやってくるらしいけど、正義の味方を信じてとったウチが馬鹿やったんやろか?
末っ子がアンパンマン見ていて思い浮かびました。
必ず最後は正義は悪に勝つ、と言う構図を。
この構図何か活かせないかな。