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《最終章毎日更新》【BL】異世界転移なんてしたくないのにくしゃみが止まらないっ!  作者: 城山リツ
Interlude03 ミチル is Love…

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4 深窓のミチル!?

 ミチルのぷりぷりピーチパイは無事だった!

 そして当然ミチルはチェリーパイである!

 (※可愛らしい隠語でお送りしています)


 当の本人がそう宣言したおかげで、狂乱の貴公子達はようやく落ち着いた。

 

 そんな部屋の有様を見せつけられた不憫な師範代のお兄さん。

 彼は巻き込まれたくない一心で、誰にも気づかれないうちに部屋を去ろうとしていた。


「待て」


「はいぃ! 申し訳ありません!」


 だが寸でのところでジンに呼び止められる。

 反射的に謝ってしまった彼が見たのは、いつも通りの冷淡な師範の顔だった。


「あの少年はどうした、死んだか」


「とんでもありません。気を失ったままなので、診療所で保護しています」


「そうか。彼が目覚めたら報告しろ」


「……かしこまりました」


 平素通りの会話のトーンに、すっかり冷静になれた師範代はそのまま部屋を去っていった。



 

「なんだよ、少年って」


 一応座り直したものの、単語のアレ的な不穏さに、エリオットがすぐさま反応した。次いでアニーとジェイも微かに不安な顔をする。


「ああ、えっとね……どこから説明しようかなあ……」


 ミチルは考えを巡らせながら、自分が武道大会に出ることになった経緯と、大会当日の様子を三人のイケメン達に説明した。出来るだけ、イヤンな内容は省いて。


「ミチル、武道大会に出場したのか……?」


 珍しく一番に口を開いたジェイが、驚きに固まっていた。


「う、うん……なんか、なりゆきでね……」


 ミチル的にはそこはさほど重要ではない。ヘラヘラ笑ってサッとやり過ごそうと思ったのに、横からジンが口を挟む。


「シウレンは儂の修行を見事にやり遂げた。その成果を試すちょうどよい機会だったのだ」


「修行……?」


 ジェイの問いに、ジンは口端を上げて答えようとする。


「うむ。儂が毎日──」


「そぉーれは、置いといてぇえええ!」


 せっかく上手く隠して説明したのに、蒸し返すんじゃねえ! どエロ師範がぁ!

 ミチルは盛大な声でそれを阻止した。


「てめえ、この、ジジン! ミチルにそんな危険なことさせやがって!」


「アニィ……!」


 急に沸騰したように興奮して、ジンに食ってかかるアニーに、ミチルは頭を抱えてしまった。


「ジジン、ではない。儂はジン・グルースだ」


「うるせえ、ジジイ!」


「ジジイでもない! 先生と呼べ!」


 一番年上で引率者を名乗っていたアニーですらこの始末。イケメンの、イケメンによる同族嫌悪は沼より深い。



 

「……貴様ら、シウレンを何だと思っている」


「へ?」


 ジンは眼光鋭く三人のイケメン達を睨む。


「どうせ蝶よ花よとかしずいて、壊れもののように大事に守ってきたのだろう。確かにシウレンの可憐さではそれもいたしかたない事ではある」


 えー……何言いだすの、この人。恥ずいんですけど。

 ミチルはなんだか体がむず痒くなった。


「だが、それはシウレンのためにはならん。貴様らが甘やかしたから、ここに来た時のシウレンはまるで深窓の令嬢のようだったぞ。まあ、それはそれで男の浪漫ではある」


 ねえ、語尾がイチイチ気持ち悪いんだけど!


「こんな可愛らしくも頼りない有様では、一歩外に出たらすぐにどこぞの輩に押し倒される! そんなことになったら儂は気が狂う!」


 何言ってんだ! いつのまにアホエロ師範にクラスチェンジしたの!?

 ミチルはバカ馬鹿しくって、言葉を失っていた。


「た、確かに……! 初めて会った時も、ミチルはおじさんにナンパされていた……!」


 アホエロ師範の言葉が、アニーに刺さってしまった。

 そういえばそんなこともあったなあ。ミチルにはすでに遠い記憶に感じられていた。


「なるほど、勉強になります」


 ジェイもうんうん頷いてる! アホだから先生に言いくるめられた!


「だから、儂が心を鬼にしてシウレンを鍛えたのだ。貴様らを叱り飛ばしたシウレンの気丈さを見ただろう」


 えーっと、確か、あーたもビックリしてませんでした?


「おお……さすが、先生です」


 ジェイはすっかり感心してしまっていた。

 そこまで心酔する必要ないよ。だって、その人、本当はどスケベ師範だからね。



 

「ジェイ! アニー!!」


 二人の初期イケメンが、うっかりジンの口車に乗りそうになった時、エリオットの冷静な怒号が飛んだ。


「控えろ、そいつを信用するのはまだ早い」


「え、エリオット……」


「殿下……」


 アニーもジェイも、エリオットの高貴なオーラに気圧されて黙ってしまった。


「ふむ。王子の肩書は伊達ではないようだ」


「こいつらは下級騎士と、ただの庶民だ。おれは簡単に騙されねえぞ」


 ジンとエリオットの睨み合いが続く。


「いいだろう、貴様は何が聞きたい?」


「ミチルの話に出てきた、あんたの再生された武器を見せろ」


 さらにエリオットが鋭く睨むと、ジンは余裕の動作で右腕から腕輪を取り出した。

 それをテーブルに静かに置く。仄かに青く光っていた。

 その光を、ジェイもアニーも息を呑んで見守った。


「ふうん……」


 エリオットは腕輪を手に取って、様々な角度からそれを見定める。

 部屋には緊張感が張り詰めていた。


「おれ達のと、同じ材質、同じ魔力を感じる……」


 そう言ってから、エリオットは腕輪をテーブルに返した。


「クソ、これじゃあ、オッサンが第四の男になったのは確定かよ」


 エリオットは悔しそうに歯噛みしていた。

 三人のイケメン達は、新たな恋敵の登場を実感するはめになり、大きく溜息を吐いた。

お読みいただきありがとうございます

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是非遊びに来てね♡
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― 新着の感想 ―
初コメ失礼します! 毎回口角がどっか行くくらいニヤニヤさせてもらってます! こんな愛すべきアホがこれからも増えると考えると今からめっちゃワクワクしてますミチルにとっては大変かもですがw これからも応援…
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