表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《最終章毎日更新》【BL】異世界転移なんてしたくないのにくしゃみが止まらないっ!  作者: 城山リツ
Interlude03 ミチル is Love…

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/211

3 幻想桃尻伝

 師範代のお兄さんは、拳大の青い石を、一同が座るテーブルの上にコトリと置いた。

 ジェイも、アニーも、エリオットも。それからミチルでさえも、その石が持つ重大な意味を瞬時に悟る。


「なんだ、これは」


 事情を知らないジンは、怪訝な顔でその石を見ていた。

 すると師範代のお兄さんが静かな声で報告する。


「は。先生が鐘馗(しょうき)会と思われる人影を追って行った後、我々は大会の会場を片付けておりました。すると先生達が戦っていた付近にこれが落ちていたのです。その場の誰にも覚えがありませんでしたので、町長様の許可をいただいて預かって参りました」


「うん? だが儂にも覚えはないぞ、こんなもの」


 ヒョイと石を手に取って、ジンはそれをゆっくり眺めた。青い石は、部屋の緩い照明を受けたためか鈍く光っている。



 

「いや、それ、デスティニー・ストーンだろ!」


「です……何だって?」


 アニーが派手な声を上げて、その手の石を指さしても、ジンは眉をひそめて首を傾げていた。

 ちなみに、その中二全開の名称は、アニーの個人的なセンスである。


「……今のは正式な名前じゃねえ。忘れろ」


 その隣で、エリオットは苦虫を噛み潰したような顔をしており、更に悔しそうに続ける。


「その石は、特殊なベスティアを倒すと現れる正体不明の石だ。その石があるという事は、てめえが特殊なベスティアに遭遇し、更にはミチルの力を借りて倒したってことを物語ってる。どうだ?」


 ジンとミチルに起こった出来事について、澱みなく語ってみせたエリオットに、ミチルは感心してしまった。


「さすがエリオット! 頭いいっ!」


 いつもならミチルが褒めれば調子に乗るような性格だが、今のエリオットは真面目な顔を崩さずに、ジンだけを睨んでいた。

 その様子に、ミチルは思わず肩を竦めて黙る。



 

「ふむ、ベスティアとは黒獣(こくじゅう)のことだったな。確かにその通りだ、驚いたぞ」


「こくじゅう?」


 素直に驚きながら答えたジンの言葉に、エリオットが少し首を傾げるので、ミチルはおずおずと付け足した。


「先生はベスティアのことをそう呼んでたんだ。多分、黒い獣って意味だと思うけど……」


「ふうん、所変われば、ってことか」


 難しい顔のままで考え続けるエリオットの表情は、少し怖い。ミチルはやや不安になった。



 

「何故貴様は、儂とシウレンに起こった出来事をそんなに正確にわかったのだ?」


 ジンの疑問は当然で、ミチルがどう答えようか考えている間に、エリオットはジェイとアニーにも目配せをする。

 そして三人のイケメン達は揃って各々が持つ青い石を、テーブルの上に出した。


「なっ……! それは、同じ石か?」


 更に驚くジンを見据えて、エリオットは尚も憎らしそうに顔を歪めて言う。


「そうだよ。おれ達は全員、特殊なベスティアと戦い、ミチルに武器を再生成してもらってそれを倒してる。この石は、おれ達とミチルを繋ぐ『絆』だ」


「……」


 ジンが言葉を見失っていると、アニーがまた派手な声で項垂れた。


「勘弁してくれよお! 第四の男じゃねえかあ! 俺達が目を離してる隙に新しいライバル出来ちゃってるじゃあん!」


「なんだと? どういう事だ?」


 突っ伏して足をバタバタさせて悔しがるアニーの横で、ジェイがくそ真面目な顔でジンに言う。


「つまり、貴殿と我ら三人──この四人は、今、この場からミチルに対して対等だと言うことだ」


 あれ? そういう結論で良かったんだっけ?

 もっとさあ、チル一族とか、ベスティアとか、世界の危機とか、そういう事の方が大事じゃない?


 ミチルはそんな疑問を浮かべていたけれど、本当の重大さの方で議論するのは怖いので、つい黙ってしまった。

 

「クソ魔ジジイの言ってたことが、本当になりやがった……」


 唯一事態を正確に把握していたように見えたエリオットも、新たな恋敵の出現を悔しがるだけ。

 ミチルはますます、考えるべき話題を言えなくなっていた。

 

 だって、結局、オレって何者なのってことになるんでしょ。そんなの怖いよ。



 

「なるほど。そういう事か……」


 ミチルの隣でジンは少し考えた後、対面する若者三人を見比べて不敵に笑う。


「ふ。儂の敵がこのような若造だとはな、これでは勝負にならん」


 それは遥か高みから見下ろす百戦錬磨の強者スーパー・テクニシャンの余裕の笑みだった!


「なな、何だとぉ!? てめえ、おれがミチルにキス30回で上書きしたのを知らねえな!?」


「おおい、エリオットぉ!」


 負けじと反論する小悪魔プリンスのエロ発言に、ミチルは慌てて釘を刺そうとした。

 だがしかし。


「ふざけんなよ! 俺だってミチルを毎晩抱いて寝てたからなあ!?」


「アニィイ!」


 ホストアサシンも参戦し、ミチルは羞恥で真っ赤になって叫んだ。

 だが更に。


「毎晩抱くのは当然だ」


「それはデフォルトだろ、アニー」


 ジンもエリオットもしれっと言ってのける。そこでアニーは追撃を試みた。


「お、おお、俺なんか、ミチルの腰のきわどーい所まで触ったからなあ!」


「キャアアアア!」


 苦し紛れに物凄い告白をするなあ! 思い出してムズムズするぅ!

 その前に、毎晩同衾がデフォとか言わないでえ!


「ふっ、ぬるいな、小僧ども」


 アニーの負け惜しみを一笑に付して、高みを極めしスーパー・テクニシャンはその美しい指先を見せつけ、トドメの一言を放った。


「シウレンは儂のマッサージで毎晩ヨがっていたぞ」


「え……」


 アニーもエリオットも、揃って石化したように固まった。


「儂の指に翻弄されて、朝まで××まくりだ」


「コラアァア!!」


 オレだけじゃなくて、イケメンにまで伏せ字を披露するなぁ!

 あながち間違いでもないから始末が悪く、ミチルの顔はマグマのように燃え上がる。


「ミチルゥ! おしりは、おしりは守ったよね!? 俺のために守ってくれたんだよね!?」


 アニーは号泣の果てに大混乱!


「ミチル! 我が妻よ! 心配するな、すぐにおれがNTRで清めてやるからな!」


 エリオットもサレ夫気分に酔いしれる!


「もう、やだあ! 助けてえ、ジェイ!」


 こうなったらエロ思考などに左右されない、鉄壁のアホだけが頼りだ。

 だが、彼も。


「むうぅう……! 胸が、胸が焦げるッ!」


 苦悶してブルブル震えるぽんこつナイトに、ミチルは思わずしがみついた。


「せめてジェイはしっかりしてぇ!」




「ミチルゥ! おしりの具合だけでも教えてえ!」


 泣き叫ぶアニーの問いに、ミチルは思わず大声で答えてしまった。




 


「オレのおしりは無傷に決まってんだろぉおお!!」

お読みいただきありがとうございます

感想などいただけたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くしゃみ転移シリーズの総合ポータルサイトを開設しました!
全ての情報の掲載を目指します。イケメンのビジュアルもこちらにございます
是非遊びに来てね♡
https://plus.fm-p.jp/u/kurishiroyama/

html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ