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《最終章毎日更新》【BL】異世界転移なんてしたくないのにくしゃみが止まらないっ!  作者: 城山リツ
Interlude03 ミチル is Love…

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1 ミチルって愛だよね

 すっかり言い忘れていたが、ここは黄の国、フラーウム。ジンが道場を構えているのは、都からほど遠い田舎町カーリア。

 役人の目が届かない田舎であれば、荒くれ者がたむろすることもある。だがカーリアは武道が盛んで、ジンを始め多数の熟練者が普通に道を闊歩している。そんな町にケチなチンピラが住み着くはずもないので、カーリアには治安の悪い箇所はない。

 そんな中、暗い路地裏に廃墟のようなビルがあれば、そこは唯一、不穏な輩がいるかもしれない。ジンが、追ってきた人影が入るならここだと決めつけて、躊躇いもせずに踏み込んだのはそういう理由であった。


「説明が長いっ!」


 ミチルは思わず何かにつっこむ。肩の上でバタバタ騒いだのでジンに怒られた。


「騒ぐな、シウレン。敵地だぞ」


「いや、ていうか……」


 ミチルは懐かしい匂いを嗅ぎ分けていた。さっきから心臓が逸っている。



 

「おい、アニー、アイツの肩に乗ってんの……」


 ジンと対峙するおかっぱ頭の男が、仲間の長髪の男の腕を引いた。

 ──今、アニーって言った!?


「ん? え、ウソでしょ、あの可愛いヒップは……」


 言われた長髪の男は、ワナワナと震えながらジンの荷物を指差した。

 ──臆面もなく「可愛いヒップ」とか言っちゃう変態性!!


 て言うか、その声はもう間違いない。あの二人だ。


「ミチルッ!」


 三人目の声がした。こちらに近づいてくる、懐かしい声。

 ミチルは居ても立っても居られず、さらにバタバタしてジンに訴える。



 

「せ、せんせ! 先生! 降ろして降ろして!」


「危険だ、シウレン」


「違う! 多分、その人達、オレの知り合い!」


「なに!?」


 逸る気持ちを抑えられなくて、ジンが訝しんだ隙に、ミチルはその肩から飛び降りる。

 が、運動神経が切れているので、まともな着地は叶わず尻から落ちた。



 

「ふぎゅっ!」


 打ちつけた尻を構わずに、ミチルは振り返る。

 目の前には、超絶過ぎるイケメン達。


「やっぱ、ミチル!」


「エリオット!」


 大きな瞳を丸くしていたのは、小悪魔のように小生意気なギャル男プリンス。


「ミチルぅう!」


「アニー!」


 甘い笑顔を輝かせたのは、国民の彼氏級ホストアサシン。

 それから──



 

「ミチル!」


 大きな腕でミチルを抱きしめたのは、頼れるぽんこつナイト。


「ジェイ……!」


 ぎゅむっと、スリスリ!


「ふにゃあぁ……っ」


 やだあ! 腰と尻が砕ける音がする!


「ああ、良かった! 無事だったのだな、ミチル!」


 ジェイの天然スリスリがミチルを翻弄する!


「ふぁああ……っ!」


 いやあ! もうどうにかなっちゃう!



 

「こ、こいつ、なんというテクニシャン!」


 百戦錬磨のジンをも唸らせるジェイの手つきに、あわやミチルが昇天しかけた時。


「てめえ、このやろう!」


「第1の男だからって、お前はいつもそう!」


 エリオットが後ろからジェイの首根っこを引っ掴み、アニーはその背にしがみついてミチルから引き離す。


「むむ……っ?」


 何故怒られたのかわからないジェイは、二人に体をホールドされて固まった。


「はあん……すごかった……」


 解放されたミチルは、全然立ち上がれる気がしない。



 

「なんということだ、儂のシウレン……」


 ジェイの行動に触発されたのか、なんかその気になったジンの手がミチルに伸びる。


「ちょ、先生!」


「シウレンは渡さぬ……」


「や、ああ!」


 なんならこの場で押し倒して、目の前でわからせようとしてくる毒舌師範の熱い抱擁に、ミチルは全身の力が抜けた。



 

「ふざけんな、白髪クソジジイ!!」


 エリオットの嫉妬に狂った稲妻がジンに向かって走る!


「ふん!」


 その雷撃を片手で払ったジンは、ようやく冷静を取り戻してミチルを離し、代わりにエリオットを鋭い視線で睨んだ。


「な……んだ、こいつ……」


 軽くあしらわれて、少し自信喪失したエリオットだったが、それでも気丈にジンを睨み返した。



 

「あのオッサン、なんて危険な変態なんだ……。ミチルのおしりは大丈夫なのか……?」


「む? どういうことだ、アニー殿」


「……お前は黙っとけ」


 アニーとジェイのやり取りも聞こえない二人は、ジリジリと睨み合いながら間合いをつめていった。



 

「おい、この間男が。おれの妻になんてことしやがった」


「妻……? ふっ、若造が。儂のシウレンが貴様などになびくものか」


「シウレンって何だ! おれのミチルだ!」


「ミチル、か。その名は捨てて、シウレンは儂のものになったのだ」


 はああああ!?

 ジンの爆弾発言に、イケメン三人が声を揃えて奇声を上げた。



 

「捨ててねえし!!」


 そんな一触即発の事態を、ミチルの大声が止めた。


「お前たち、いいかげんにしろぉ! イケメンだからって何でもやっていいワケじゃねえぞぉ!」



 

「ミ、ミチル……?」


 ある意味、ミチルに一番幻想を抱いていたアニーが、驚きに満ちた顔で狼狽えた。


「せっかく皆と会えたのに! 先生のバカッ!」


「シ、シウレン……?」


 次にミチルに妄想を抱いていたジンも、目を見張って驚いた。



 

「ジェイぃい……アニーぃい……エリオットぉお……」


 ミチルは三人のイケメンの姿を順番に確認したあと、べしょっと顔を涙で濡らす。


「うわああああん! みんなが無事で良かったよぉおおお!!」


 ミチルゥウウウウ!!!


 ジェイもアニーもエリオットも、そこに磁石で引かれたかのようにミチルの元に駆け寄った。

 それから四人でダンゴになって喜び合う。


 ミチルー!

 みんなー!

 

 ミチルゥー♡

 みんなぁ!



 

「な、なんだ、これは……」


 四人の異様な触れ合いに、ジンは呆気にとられていた。


「シウレン……いや、ミチル。お前は……愛の化身なのか……?」





 ミチル is Love……!

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